泉と阿部+田島
@保育園
「遅くなりましたー!」
仕事終わりにダッシュでここへ来るのが最近の俺の日常だ。毎度時間ギリギリに、ネクタイを緩めながら保育園に駆け込む。
「あぁ、お疲れ様です。」
「いつもすいません、本当。」
息をきらしながら、先生に挨拶をする。彼は最近入って来たらしい、悠一郎のクラス担当の先生だ。最初に見た時、男の先生なんて珍しいなと思ったからよく覚えている。
「別に平気っすよ。」
先生はニコッと笑って、奥から悠一郎を連れて来てくれた。
「コースケ!おせーし!」
「悪い悪い。」
「ま、あべせんせーといっぱいあそべるからいいけど!」
悠一郎の頭をぽんぽんと撫でる。こうして迎えが遅れても機嫌が悪くなることが減ったところを見ると、心底先生に懐いてるようなので安心した。
「コースケのろまだからしたかないしなー!」
人が心配してやってんのに、当の本人はそんなこと言ってへらへら笑ってやがる。っていうか過去1番バッターを務めていた俺様に向かってのろまとはなんだ。聞き捨てならん。殴ってやろうかと思ったけど、阿部先生が変なこと言うから思わず動きが止まった。
「こらお前親にそんな言い方無いだろ。」
瞬間、悠一郎が大笑いしだす。ありえねーとか指差してくるあたり、本当に失礼だなコイツ。
「…コイツ俺の子じゃないっすよ?」
「え!?」
「兄夫婦の子で、今忙しいから送り迎えだけ俺がしてるんです。」
「…あ、そうなんですか。」
阿部先生は失礼しました、と頭を下げた。まぁ、勘違いするのも仕方ないと思う。
それにしても。
「あべせんせー、なんかうれしそう!」
「はぁ!?そんなことないだろ!」
俺も思ったことを、悠一郎がいち早く指摘した。口では失礼しましたとか言っといてあんまり嬉しそうに笑うから、正直一瞬可愛いとか思ってしまったじゃねーか。
「あー!いつもおまえのとうちゃんかっこいいなとかいってたの、コースケのことだったの!?おれほんとのとうちゃんのことかとおもってたのにー!」
焦っているのか、真っ赤になった阿部先生は慌てて悠一郎の口を塞いだ。
「ち、違いますから!まぁあの子供の言うことですしね…!」
「はぁ。」
「おれこどもじゃねーし!きょうからコースケはライバルだ!あべせんせーとけっこんすんのはおれだからな!」
叫びながら先生に抱き着いている悠一郎と目線を合わせるためにその場にしゃがみ込む。
「そういうことなら受けてたつぜ。」
「そうこなくちゃな!」
悠一郎がにこっと笑った。いい年こいてませてやがる。やんわり微笑みながら、頭をくしゃりと撫でてやった。
「…受けて、たつんですか?」
阿部先生が驚いたような声を出したのが聞こえたから、そのまま視線を先生に向ける。
「ご迷惑でなければ、ですが。」
なんだか色々ショートしたようで、固まってしまった先生。面白くて暫く見つめていたら、仕事中である事を思い出したのか、あたふたと変な動きで中に戻って行った。本当、可愛いんだから。
ドラマチックガーデン
あと何回迎えに来たら、素直になってくれるかな?