善逸と禰豆子
またね、と君は簡単に言う。
次なんてあるか分からないのに、何の保証もないのに。君は、またね、とふんわり笑って命懸けの任務に向かうんだ。
「わたしはあなたのこと、なにもおぼえてないかもしれないよ?」
「それでもいいの!全然良い!君はうつくしいから、それだけで僕は幸せなんだよ、禰豆子ちゃあああん!」
いつもふざけてて、本音を言わないから、本当にわたしのことを好きなのかと疑ってばかりの日々だけど。
「わたし、鬼だよ…?」
「だから?禰豆子ちゃんは世界一可愛いよ。」
勘違いしそうになる程優しい笑顔で言ってのけるから、時々ほんとにわたしはお姫様なんじゃないかと思えてくる。
鬼なのに、鬼だけど。
この人はわたしを愛してくれている。
お兄ちゃんしかいないと思ってた。それでいいと思ってた。なのに。
もう辛い思いはしたくないから、大切な人を作らなければ良いと思ってたのに、それなのに。
「禰豆子ちゃあああん!!!これ、任務の途中で見つけたんだ!受け取ってくれる…!?」
こくん、と頷いて手のひらに包み込む、綺麗な花束。これを、わたしの為に。
こんなわたしを人間として扱ってくれるたった1人の貴方を失いたくない。護りたい。叶うなら、ずっと傍にいたい。
ありがとうの意味を込めて笑えば、君は照れた様に微笑んだ。あぁ、大好きだ。
いつか枯れると分かっていても。
今だけは、幸せなフリをしていたい。