沖田と神楽と土方と銀時





「…あのー、うちになんか用ですかぁ?」

玄関の前で鼻をほじりながらそう言う銀髪の男を前に土方は溜息をついた。

「お前に用は無ェ。」

「じゃあ何なわけー?あ、言っとくけど新聞なら要らないよ。」

「別に勧誘しに来た訳でも無ェよ!」

声を荒げれば奥から見覚えのある顔が出て来て土方は眉をぴくりと動かした。

「土方さん、近所迷惑ですぜィ。」

「うるっせぇ!迷惑かけてんのはどっちだ!仕事サボって何やってんだお前は!」

玄関を跨ぎずかずかと部屋に侵入する。今だ座って茶を啜る後輩の姿を見ると怒りを通り越して悲しくなった。

「俺は悪くないんでさァ。コイツが風邪ひくから。」

沖田が指を指した先には具合が悪そうにソファに寝転がる神楽の姿があった。

「別に看病なんか無用ネ!」

強がるそぶりは見せるものの頬は赤く染まり、咳込む度に苦しそうに顔を歪ませている。

「万屋に任せときゃいいだろ?」

「沖田くんがどうしてもって言うなら俺は別に構わないけどね。」

背後からやる気の無い声が聞こえてきて土方はまたも溜息をついた。どうせ看病を誰かに押し付けたかっただけだろうと言う言葉は神楽の手前、すんでのところで飲み込んだ。

「まぁ旦那もそう言ってることですし。」

沖田が神楽の頬に手を当てる。神楽は口では毒を吐きながらも、気持ち良さそうに沖田の手に自分のそれを重ねた。
あぁあぁラブラブなこって。

「それに銀チャンは夕べから寝ずに看病してくれたアル。だから休んでほしいネ。」

言われて後ろを振り向けば、当の本人は壁に寄り掛かったまま眠っている。よっぽど疲れているのだろう。まさかこんなに熱心に看病をしているとは、さっきの文句は心の中に留めておいて良かったと土方は思った。

「おい、こんなところで寝るなよ。」

「あー?」

手を引き隣の部屋へ連れていく。触れたところがやけに熱くて、布団に寝かしつけてから額に手を当ててみた。

「…お前、熱あるじゃねぇかよ。」

「あーやっぱ?道理で具合悪いと思った。」

笑いながら言う銀時の横に本日三度目の溜息をつきながら土方が座った。

「土方くん、仕事は?」

「もういい。俺もサボりだ。」

「へ?」

「あいつの気持ちが分かった。好きなヤツが苦しんでるの知っててほっとけねぇ。」

腕を組ながら無愛想にそう言う土方を見て、銀時は嬉しそうに笑った。

「土方くんて時々大胆だよね。」

「うるせ。」

「神楽が気にするからあいつには言わないでもらうと助かるかなー。」

「じゃあさっさと治せ。」

そう言って、土方は銀時の熱い唇にキスを落とす。

「お前の熱ならいくらでももらってやるよ。」





沖田も同じことをして、二人仲良く風邪をもらうのはもう少し先の話。






(土方さん、病人相手にエロいこと考えるからでさァ。)(お前にだけは言われたくないわァァ!!!)