スザクとルルーシュ







朝起きて、まだ、夢を見ているのかと思った。

「どうして君がここにいるの…?」

ルルーシュだ。C.Cと旅立ったはずのルルーシュがここにいる。にわかには信じ難い。

「あぁ、ナナリーに頼んで入れてもらった。」

「え、そんなしれっと?」

彼の話では、夕べ思い立って急に帰ってくる事にしたらしい。これ、もし偽物だったりなんかしたらどうするんだろ。少しだけセキュリティが心配になった。だって僕の事って控えめに言っても国の重要機密事項だと思うんだけど。

「疑ってるのか?」

「いや、その、ただ信じられないだけで」

「…お前が、俺を間違える訳ないだろう?」

悔しいけどその通りで、ぐうの音も出なかった。
ナナリーが、僕が、君を間違えるなんてこと、絶対に無い。

「…急にどうしたの?」

もう、会えないと思っていた。覚悟していた。
だけど、その言葉は口に出すことはしなかった。

「今日は何月何日だ?」

「今日は7月10日だけど…、それがどうかした?」

「お前は、自分の誕生日も覚えてないのか?」

お前と言われて一瞬誰の事か分からなかった。もう長い事ゼロとして生きているから、ルルーシュにそう言われて、久しぶりに自分が枢木スザクだった時代を思い出した。

「…僕はもう、死んだから。」

自嘲気味に笑えば、ルルーシュは大袈裟にため息をつく。

「そう言うだろうなとは思ってた。俺が勝手に祝いたいだけだ。」

「ルルーシュ」

「スザク、生まれてきてくれてありがとう。例え枢木スザクがこの世にいないとしても、俺は毎年、永遠にこの言葉を捧げ続けるよ。」

言い様、ルルーシュは僕の手を取り妖艶に笑った。
どうしていつも君は、僕のほしい言葉をくれるんだろう。
懐かしいルルーシュの温もりに、自然と涙が溢れてくる。

「…僕が生まれてきた事に、意味はあったのかな。」

「あった。少なくとも俺には。」

「君に、は?」

「お前に出会えて、俺は幸せだった。初めて、人を好きだと思った。」

たまらなくなって、握っていた手を思わず引き寄せた。
ルルーシュは珍しく抵抗もせず、すっぽりと僕の腕の中に納まっている。

昔は離れろ!だの、バカ力!だの、よく怒られたけど。

「ルルーシュ、愛してるよ。」

「…知ってる。」

そう、君に出会って初めて、僕の時計は動き出した。
だから、僕の時計を止めるのも、君であってほしいと、そう願っていた。

「最後に僕を選んでくれてありがとう。僕は、幸せだ。」

君の為に、僕はこれからもゼロであり続ける。生ある限り、ナナリーの傍にいる。
抱きしめていた腕の力を緩め、ルルーシュの顔を見つめる。
どちらからともなく唇を重ね、何度も何度もお互いの存在を確かめるかの様にキスを交わした。

「…約束があるから、俺はもう行かないと。ただ、これだけは忘れないでほしい。」

もう、会えないのかもしれないと思った。でもやっぱり、その言葉を口に出す事はしなかった。

「お前は、俺の全てだ。」

どうやって返事をしたかは覚えていない。
ただただ涙が溢れて止まらなかった。
君と生きていけたら。君の隣に入れたら。君を支えられたら。
そんな事を何度思ったか分からない。だけど、僕はきっと、これからもここで生きていくのだろう。




もう一度生まれたから

君に止められたはずの時間を、君の為に、これからも刻んでいく。








※※
スザクさんHAPPY BIRTHDAY!!!!