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これを恋と呼ぶのならV


ジノとアーニャ



「…ジノ、邪魔だからどいて。」

家の前に立ちはだかる巨大な犬みたいな人を思い切り蹴飛ばす。

「アーニャ、ご飯食べさせてくれよ!」

「…また?」

玄関の鍵を開けながら涙目で擦り寄って来るジノを睨んでから一つ溜息をついた。

「アーニャの作るご飯は美味しいからな!」

そう言ってにっこり笑うとずかずか何の遠慮もせず玄関を通過して行くジノ。それが人に物を頼む態度かと思わないことも無いけれどもういい加減慣れっこだ。

「私も一人暮らしをしてみたいものだなぁ。」

「ジノには無理。多分寂しくて死んじゃう。」

カレーをがつがつと豪快に頬張るジノ。これが本当に貴族のお坊ちゃまなのかと時折疑ってしまう。

「あぁ美味しかった!ごちそうさま!」

「…で?今日は何があったの。」

「アーニャ、聞いてくれるかい!?」

「…聞くも何もいつも勝手に喋ってるだけ。」

ジノが家に来る理由は大低スザクのこと。嬉しそうに話す日もあれば今日みたいに悲しそうに彼を思って涙を流す日もある。
私はあまり表情が無いらしい。だからきっと、貴方へのこの気持ちも、一生誰にも悟られない。




これを恋と呼ぶのなら



胸の奥に蓋をして、そっと貴方を見つめてる。




これを恋と呼ぶのならU



ジノとスザク



スザクがいつもルルーシュ先輩を見てるのは知っていた。

「今日は久しぶりにルルーシュと二人で帰りたいから邪魔しないでね。」

だからそう言われてもさほど驚かなかったのも本当。

「なら私はアーニャと帰るよ。」

スザクはにっこり笑ってありがとうと言った。ルルーシュ先輩が見ているのに気付いていて、わざと過剰に抱き着いたりくっついたりしている、私なんかに。

「ルルーシュ先輩に告うのかい?」

「え!?ななな何を!?」

「…いや、何でもないよ。」

スザクが告えば二人は晴れて両思い。ハッピーエンドが待っている。端から見れば二人が互いを思いあっているのなんて一目瞭然だった。

「ルルーシュは、好きな人とかいるのかなぁ。」

ぽつり、と無意識なのか何なのか、スザクがふいに呟いた。

「多分いると思うな。」

「え?」

スザクの顔が曇るのが分かっても、一言、多分両思いだよと言ってあげられない自分がいた。





これを恋と呼ぶのなら



私は、なんてずるい生き物なんだろう。




これを恋と呼ぶのなら


スザクとルルーシュ




スザクを視界の端に捉えた瞬間自然と頬が緩む自分がいる。
いつもいつも犬みたいにスザクにくっついているジノまでが見えた時はひくひくと顔が強張るのもよくわかる。

ジノは自分に素直なだけで決して悪いヤツでは無いし、ましてスザクの大事な同僚にどうこう言うことなんて絶対にできない。
時折そんなジノが羨ましくて仕方がなくなる。自分はあんなに素直に甘えたり出来る性分では無いから。

「あれ?ルルーシュじゃない!いるなら声かけてよ!」

「…あ、あぁ。すまん。」

スザクがにっこり笑ってそう言うので、自然と俺も笑顔になった。
いつもスザクが気付くまで自分からは声をかけない。だって、遠くから見つめるのが好きなんだ。近くにいたら恥ずかしくてマジマジと顔を見ることなんて出来ないから。

「ちょっとジノ、帰るから離して!」

「えー!私も一緒に帰りたい!」

「今日はダメって言っただろ。じゃあね!」


スザクはジノをあやして俺の方を向いてそれからお待たせ、と笑った。
そのふんわりとした笑顔が何時だって自分だけに向けられればいいのにと願う度に自分はひどくつまらない人間だと実感させられる。

「ごめんねルルーシュ。」

「何がだ?」

「もしかしてジノも一緒に帰りたかった?」

スザクが心配そうに俺を見た。そんなにつまらなさそうな顔をしていたんだろうか。

「いや、お前が謝るようなことは何も」

「うん、ごめん。でも、僕がルルーシュと二人で帰りたかったんだ。」

最近いつもジノが付き纏っていて、だから俺はゆっくりとスザクと話す機会が無かった。面白くなくて、同時にとても寂しかった。

「だから僕の我が儘で、ごめんね。」

スザクの口からそんなことを言って貰えるだなんてそんなこと全然思ってなかった俺は困惑と嬉しさが入り乱れて何とも言えない表情になってしまった。何とか繕おうとしても適切な言葉が何も浮かばない。普段は口先だけは器用なはずなのに、こんな時だけ使えないのだから考えものだ。

「あ、あの、あの俺も、寂しくて、だから嬉しかったんだ。」

恐る恐る顔を上げる。俺を見てスザクが優しく笑った。久しぶりに俺だけに向けられる満面の笑み。夕陽の紅に映えて、とてもとても綺麗だった。






これを恋と呼ぶのなら




例え叶わずとも、多分ずっと、君を。




僕だけの、



ルルーシュとスザク




「どうして、泣いてるの?」


その子はおれの瞳からぽろぽろと溢れる涙を優しく拭って言った。


「王子様が迎えに来てくれないんだ。」


ずっとずっと待ってるのに、来てくれないんだ。従姉妹の相手をするのも剣道の練習をさせられるのにはもううんざりだった。
だから、いつか絵本で読んだ王子様に恋い焦がれて、ずっとずっと待っているのに。


「…帰りたくないのか?」

声は出さずに首だけこくんと前に倒した。


「それは逃げじゃないのか?」

「…逃げ?」

「お前がそんなんじゃ、王子なんて一生来ないよ。」

「どうして?」

「それに見合うくらい立派になれってことだよ。そしたらいつか絶対会えるよ。お前の王子様に、さ。」


紫色の瞳を優しく向けて、俺の頭をそっと撫でた。
家を継ぐのが嫌だった。決められたレールを走るのが嫌だった。
そうか、違うんだ。
やらされるのと、自分の意志でやるのとは違うんだ。

「王子様に選んでもらえるように、もっと頑張るよ。」


にっこり笑顔で別れた次の日、父親の外交の場で出会ったブリタニアの皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。彼は紫色の瞳を終始真っ直ぐに僕に向けていた。
それから彼と結婚するに相応しくなるために、一生懸命頑張った僕は努力の甲斐あってかライバルたちの中からめでたくフィアンセに選ばれた訳だ。
そう、待ち焦がれるのはもうやめた。幸せはいつだって自分の手で掴み取るんだから。


「俺は、最初からお前に決めてたよ。日本の美しい姫に、一目惚れしたんだ。」

ルルーシュはそう言ってくれるけれど、僕は今の僕が大好きだから。

「僕は君に出会わなきゃ変わってなかった。ありがとう、ルルーシュ。」

ありがとう、僕だけの王子様。

君しか見えない




ルルーシュとスザク






スザクって本当に可愛いと思う。ちょっと筋肉質なところとか、あのふわふわのくせっ毛とか、にっこり笑った時なんかもう何とも言いようが無い。
そんな俺の気持ちはもう限界ギリギリ。告う。今日こそは告うんだ。

「ルルーシュ、ぼーっとして何考えてるの?」

「そんなのお前のことに決まってるだろ?」

スザクの頬に手を添え最上の笑顔で微笑んだ。これはいい台詞だったんじゃないか。

「僕のこと?え、もしかして顔になんかついてる?」

流石スザク。簡単には行かないな。
今度はスザクをぐいと引き寄せるとぎゅうと抱きしめた。

「ルルーシュ何ー?僕今漫画読んでんだから離してよー。」

「そんなのいつでも読めるだろ?せっかく家来てるんだから俺ともっと楽しいことしないか…?」

さっきよりきつく抱きしめながら耳元でそっと囁く。これならどうだ。

「楽しいことってこれ?あぁ、相撲か!オッケー!」

次の瞬間俺は思いきり部屋の隅に投げ飛ばされていた。流石スザク。簡単には行かないな。っていうか全身が痛い。

「うわごめんルルーシュ!君が異様に力が無くて体力も無くて、受け身なんてとても取れるわけないってこと忘れてたよ!」

「頼むからそれ以上言わないでくれ心が折れそうだ。」

…やるなスザク。だがこれくらい許容範囲だぜ!自分のキャラが掴めなくなってきたななんてそんなことを一人思いながらそれでも何とかアピールしようと、俺はスザクの首筋に真っ赤な印をつけた。

「何ー?何すんのー?」

「マーキング。」

「はぁ?」

「お前は俺のものって印。」

「僕は僕であって誰のものでもないけど?」

「お前って本当に…凄いよな。」

「じゃあルルーシュにもつけた方がいいの?」

次の瞬間、スザクが俺の首筋に真っ赤なそれをつけた。

「ルルーシュもルルーシュであって誰のものでもないけどね!」

いや、俺の心はもう完全にお前だけのものです。




君しか見えない


今までも、これからも。





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