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甘い言葉は贈れないけど




沖田と神楽





あれ、なんか今日いつもと違う。分かるんだけど、分かんないような。
なんだこれ、もどかしい。

「…ジロジロ見んなヨ。」

あれ?機嫌悪い?
でも会ったばっかりだし、まだ何にも言ってないし。

「何アル!早くなんか喋れヨ!」

なんか知らないけど怒られて、しかもぷいとそっぽを向かれてしまった。いつもはうるさいとか黙れとか言ってるくせに、今日は一体何なんだ。

おまけにまともに顔、合わせようとしないし。
こっち向けよって、テレパシーを送ってみる。まさか伝わりませんよね。

「だからやめろっテ!」

あれ。すげぇ。せっかく一瞬目があったのに、あ、また下向いた。

何がそんなに気に入らないのかよく分からないので、暫く追っかけっこしてみる。

顎をくいと掴んで顔を上げる。殴られる。
下から覗き込んでみる。蹴られる。
諦めたふりして横からチラ見。傘が飛んで来る。

あぁ、そっか。なるほどなるほど。
可愛いとこあるじゃないか。

「いいんじゃない。」

「何アル…?」

「だから、それ。」

「鈍チンなくせに、余計なこと気づく男ネ…」

うわ、真っ赤真っ赤。照れ隠しに憎まれ口叩くのはコイツの癖みたいなもんだ。もっと早く気付けていればこんなに殴られずに済んだものを。

「チャイナ、おい。」

だから、おでこにキスを一つ。殴られた分チャラにしてやるんだ。本当は口にしたいところだけど、多分パンチの一発くらい飛んで来そうだからやめとく。

それにしても、俺の前でこんなこと気にしてくれるなんて、嬉しすぎるじゃないか。
だけどさ、切りすぎた前髪だって、全然気にならないくらい可愛いよ。





甘い言葉は贈れないけど








分かってくれればそれでいいや。




その声で、名前を呼んで。




沖田と神楽





「定春って本当に可愛いアル!」

「あぁそうかィ。」

ふぅんとかへぇとか気の無い返事をしていたのが気に入らなかったのか、チャイナは聞いてんのかよと俺の背中をどつきながらさらに喋りまくる。

「しかも定春はお前と違ってとってもいい子ネ。」

「…悪かったなァ。」

にこにこ笑いながら他のヤツの名前を呼ぶのなんて聞きたくもない。それが例えペットであったって、気分が沈むもんは沈むんだから仕方ないんだ。

「…そんなに名前連呼すんなよ。」

「あぁ?だって定春苗字無いネ。」

「ならつけりゃいいだろ。」

「んじゃ銀ちゃん家に住んでるから…坂田定春カ?」

するとチャイナは私も苗字が欲しいと言ってうんうんと唸り出した。

「…でも語呂が悪いアル。」

坂田家の居候だから坂田定春。大変気にくわないがその理屈でいくと。

「…坂田神楽?」

「違うアル。」

「じゃあ何なんでさァ?」

半分投げやりになってそう尋ねる。
返事が返って来ないのを不思議に思って見てみれば、チャイナの唇がゆっくりと動いた。

「…沖田、沖田神楽。」

まぁ許してやるかと言いながら、チャイナは俺の前をさっさと歩いて行った。
残された俺は暫く呆然と立ち尽くす。

「アイツほんと…ほんとなんなんでさァ…!」

真っ赤になった顔をぶんぶんと振りながら、その可愛いらしい後ろ姿を追いかける。

いつか苗字が一緒になった時のために、とりあえず下の名前で呼ばせようと心に決めた。










その声で、名前を呼んで。





病は気から




沖田と神楽と土方と銀時





「…あのー、うちになんか用ですかぁ?」

玄関の前で鼻をほじりながらそう言う銀髪の男を前に土方は溜息をついた。

「お前に用は無ェ。」

「じゃあ何なわけー?あ、言っとくけど新聞なら要らないよ。」

「別に勧誘しに来た訳でも無ェよ!」

声を荒げれば奥から見覚えのある顔が出て来て土方は眉をぴくりと動かした。

「土方さん、近所迷惑ですぜィ。」

「うるっせぇ!迷惑かけてんのはどっちだ!仕事サボって何やってんだお前は!」

玄関を跨ぎずかずかと部屋に侵入する。今だ座って茶を啜る後輩の姿を見ると怒りを通り越して悲しくなった。

「俺は悪くないんでさァ。コイツが風邪ひくから。」

沖田が指を指した先には具合が悪そうにソファに寝転がる神楽の姿があった。

「別に看病なんか無用ネ!」

強がるそぶりは見せるものの頬は赤く染まり、咳込む度に苦しそうに顔を歪ませている。

「万屋に任せときゃいいだろ?」

「沖田くんがどうしてもって言うなら俺は別に構わないけどね。」

背後からやる気の無い声が聞こえてきて土方はまたも溜息をついた。どうせ看病を誰かに押し付けたかっただけだろうと言う言葉は神楽の手前、すんでのところで飲み込んだ。

「まぁ旦那もそう言ってることですし。」

沖田が神楽の頬に手を当てる。神楽は口では毒を吐きながらも、気持ち良さそうに沖田の手に自分のそれを重ねた。
あぁあぁラブラブなこって。

「それに銀チャンは夕べから寝ずに看病してくれたアル。だから休んでほしいネ。」

言われて後ろを振り向けば、当の本人は壁に寄り掛かったまま眠っている。よっぽど疲れているのだろう。まさかこんなに熱心に看病をしているとは、さっきの文句は心の中に留めておいて良かったと土方は思った。

「おい、こんなところで寝るなよ。」

「あー?」

手を引き隣の部屋へ連れていく。触れたところがやけに熱くて、布団に寝かしつけてから額に手を当ててみた。

「…お前、熱あるじゃねぇかよ。」

「あーやっぱ?道理で具合悪いと思った。」

笑いながら言う銀時の横に本日三度目の溜息をつきながら土方が座った。

「土方くん、仕事は?」

「もういい。俺もサボりだ。」

「へ?」

「あいつの気持ちが分かった。好きなヤツが苦しんでるの知っててほっとけねぇ。」

腕を組ながら無愛想にそう言う土方を見て、銀時は嬉しそうに笑った。

「土方くんて時々大胆だよね。」

「うるせ。」

「神楽が気にするからあいつには言わないでもらうと助かるかなー。」

「じゃあさっさと治せ。」

そう言って、土方は銀時の熱い唇にキスを落とす。

「お前の熱ならいくらでももらってやるよ。」





沖田も同じことをして、二人仲良く風邪をもらうのはもう少し先の話。






(土方さん、病人相手にエロいこと考えるからでさァ。)(お前にだけは言われたくないわァァ!!!)

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