沖田と神楽





あれ、なんか今日いつもと違う。分かるんだけど、分かんないような。
なんだこれ、もどかしい。

「…ジロジロ見んなヨ。」

あれ?機嫌悪い?
でも会ったばっかりだし、まだ何にも言ってないし。

「何アル!早くなんか喋れヨ!」

なんか知らないけど怒られて、しかもぷいとそっぽを向かれてしまった。いつもはうるさいとか黙れとか言ってるくせに、今日は一体何なんだ。

おまけにまともに顔、合わせようとしないし。
こっち向けよって、テレパシーを送ってみる。まさか伝わりませんよね。

「だからやめろっテ!」

あれ。すげぇ。せっかく一瞬目があったのに、あ、また下向いた。

何がそんなに気に入らないのかよく分からないので、暫く追っかけっこしてみる。

顎をくいと掴んで顔を上げる。殴られる。
下から覗き込んでみる。蹴られる。
諦めたふりして横からチラ見。傘が飛んで来る。

あぁ、そっか。なるほどなるほど。
可愛いとこあるじゃないか。

「いいんじゃない。」

「何アル…?」

「だから、それ。」

「鈍チンなくせに、余計なこと気づく男ネ…」

うわ、真っ赤真っ赤。照れ隠しに憎まれ口叩くのはコイツの癖みたいなもんだ。もっと早く気付けていればこんなに殴られずに済んだものを。

「チャイナ、おい。」

だから、おでこにキスを一つ。殴られた分チャラにしてやるんだ。本当は口にしたいところだけど、多分パンチの一発くらい飛んで来そうだからやめとく。

それにしても、俺の前でこんなこと気にしてくれるなんて、嬉しすぎるじゃないか。
だけどさ、切りすぎた前髪だって、全然気にならないくらい可愛いよ。





甘い言葉は贈れないけど








分かってくれればそれでいいや。