リボーンと綱吉
「これ、追加だぞ。」
「…うげぇ」
リボーンの手から離れた大量の資料は、俺のデスクにどさりと置かれた。せっかく後少しで終わるはずだったのに、本当にもう頭が痛い。
「これ位でへこたれるなんてボス失格だな、ダメツナ。」
優雅にコーヒーを啜りながらリボーンが口角を上げてニヤリと笑った。おまけに心底楽しそうに手伝ってやろうか?なんて言ってくる。相変わらず憎たらしいことこの上ない。
「俺だってもう立派なボスなんだからな!1人でできるよ。」
聞いているのかいないのか。リボーンは帽子をくるくると回している。
「何だよ、結局手伝う気ゼロなのかよ!」
諦めて書類に向かおうとすると、熱い視線を感じてドキリと胸が高鳴った。
俺より少しだけ低い背、可愛いと言うよりは整った顔立ち。そんなヤツにじっと見つめられると、何だかそわそわして落ち着かない。
「もー、何しに来たんだよ…!」
気になるから早くどっか行ってくれないかな。
溜め息をついていると、何故かつかつかとこっちに歩み寄ってくるリボーン。何かと思って顔を上げる。
すると突然顎を掴まれ、近付いてくる唇。何をする気だコイツ。しかし反論しようと口を開けば、ぬるりと何かが侵入してくるではないか。そう、気付けばあっという間に舌を絡めとられていた。
「…っ、んっ!」
何でこんな上手いんだよガキのくせに。口内をたっぷり犯された後、大袈裟なリップ音をたてて唇が離れた。
「…な、な、何すんだよ!?」
「一生懸命な生徒にご褒美あげに来たんだぞ。じゃ、せいぜい頑張れよ。」
それからひらりと手を振って、リボーンは何事も無かったかのように扉の向こうへ消えて行った。えぇ、ちょっと待ってよ自由すぎません?
残された俺は真っ赤になるしかない。そういうキスは何度かしたけど、まだ全然慣れないし恥ずかしいし、いやでも、もっとしてほしいなんて…
「って何考えてんの俺!」
頭をわしゃわしゃとかきむしる。違う、忘れるんだ俺。今やるべきこと。今やるべきことは何だ。
意気込んで書類に目を向ける。すると間にメモが挟まってるのに気付いて、そっとそれを抜いて目を通した。
『終わったらまたご褒美やるから、俺の部屋に来い。』
恥ずかしすぎて今なら死ねるかもしれない。俺は誰もいないはずの室内を思わず見渡してしまった。外人の考えることって本当に分かんない!
っていうか。
「こんなんじゃ逆に頑張れねー!」
こうやって俺がアイツのことで頭がいっぱいになるのが嬉しいに違いないんだ。あの性悪家庭教師め。
ここでどれだけ悪態をついてみても、結局何にも言えないんであろう自分に、俺はまた深い溜め息をついた。
振り回されて、遊ばれて
俺、いつになったらボスの威厳が出るのかな…。