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あなたの笑顔を護りたい



焔と綾





手を伸ばした先には、それはそれは綺麗に微笑むあやの姿があった。
月が照らす彼の姿は妖艶で美しく、本当に同性なのかと時々疑いたくなる。
その細い腕を掴んでしまいそうになって、慌てて意識を引き戻した。

「僕の学校の制服、焔くん本当に似合ってたね。」

「そ、そんなことないよ!」

「照れないでよ。クラスの女子だって騒いでたよ。」

「…あやだってファンクラブとかあるみたいで驚いたよ。」

窓辺に佇んでいるあやの隣に座り込む。珍しく静かだなと思ったら、部屋から寝言が聞こえてきた。陣はもう眠っているみたいだ。

「焔くんかっこいいから。」

「それは自分でしょう?…あや?」

急に黙り込んでしまった顔を覗き込む。
違った違ったと笑いながら、あやは俺の横に座った。

「焔くん、色々大変だと思うけど肩に力入りすぎてるんじゃないかな。」

「そんなことないよ。あやは、俺たちが…いや、俺が護るから。」

「焔くんのこと信じてるから、どんなことになっても僕は平気だよ。」

「…あや」

「きっと何が起きても大丈夫。焔くんに陣くん、2人揃えば何でも出来るよ。」

あやの言葉は不思議で、いつだって俺を安心させてくれた。ああ、そうか。護られてるのはずっとずっと前から俺の方だったのかもしれないな。

「それでいつか、僕の届かないところまで行ってしまうんだろうね。」

そう言った時の物憂げな表情さえ美しいと思った。でも。

「帰る場所があるから、僕らは飛べるんだ。」

言いながら手を握れば、あやはとても嬉しそうに笑った。








あなたの笑顔を護りたい



無くなってしまったら、俺はきっともう走れないよ。






振り回されて、遊ばれて



リボーンと綱吉





「これ、追加だぞ。」

「…うげぇ」

リボーンの手から離れた大量の資料は、俺のデスクにどさりと置かれた。せっかく後少しで終わるはずだったのに、本当にもう頭が痛い。

「これ位でへこたれるなんてボス失格だな、ダメツナ。」

優雅にコーヒーを啜りながらリボーンが口角を上げてニヤリと笑った。おまけに心底楽しそうに手伝ってやろうか?なんて言ってくる。相変わらず憎たらしいことこの上ない。

「俺だってもう立派なボスなんだからな!1人でできるよ。」

聞いているのかいないのか。リボーンは帽子をくるくると回している。

「何だよ、結局手伝う気ゼロなのかよ!」

諦めて書類に向かおうとすると、熱い視線を感じてドキリと胸が高鳴った。

俺より少しだけ低い背、可愛いと言うよりは整った顔立ち。そんなヤツにじっと見つめられると、何だかそわそわして落ち着かない。

「もー、何しに来たんだよ…!」

気になるから早くどっか行ってくれないかな。
溜め息をついていると、何故かつかつかとこっちに歩み寄ってくるリボーン。何かと思って顔を上げる。

すると突然顎を掴まれ、近付いてくる唇。何をする気だコイツ。しかし反論しようと口を開けば、ぬるりと何かが侵入してくるではないか。そう、気付けばあっという間に舌を絡めとられていた。

「…っ、んっ!」

何でこんな上手いんだよガキのくせに。口内をたっぷり犯された後、大袈裟なリップ音をたてて唇が離れた。

「…な、な、何すんだよ!?」

「一生懸命な生徒にご褒美あげに来たんだぞ。じゃ、せいぜい頑張れよ。」

それからひらりと手を振って、リボーンは何事も無かったかのように扉の向こうへ消えて行った。えぇ、ちょっと待ってよ自由すぎません?

残された俺は真っ赤になるしかない。そういうキスは何度かしたけど、まだ全然慣れないし恥ずかしいし、いやでも、もっとしてほしいなんて…

「って何考えてんの俺!」

頭をわしゃわしゃとかきむしる。違う、忘れるんだ俺。今やるべきこと。今やるべきことは何だ。
意気込んで書類に目を向ける。すると間にメモが挟まってるのに気付いて、そっとそれを抜いて目を通した。

『終わったらまたご褒美やるから、俺の部屋に来い。』

恥ずかしすぎて今なら死ねるかもしれない。俺は誰もいないはずの室内を思わず見渡してしまった。外人の考えることって本当に分かんない!
っていうか。

「こんなんじゃ逆に頑張れねー!」

こうやって俺がアイツのことで頭がいっぱいになるのが嬉しいに違いないんだ。あの性悪家庭教師め。
ここでどれだけ悪態をついてみても、結局何にも言えないんであろう自分に、俺はまた深い溜め息をついた。





振り回されて、遊ばれて


俺、いつになったらボスの威厳が出るのかな…。


世界が君を否定しても


新羅とセルティ






『…おい新羅!』

「なんだいセルティ?」

『打ちにくいから離れてくれないか?』

そう言われて、ニコッと笑いながら新羅はさらにセルティを抱き締める腕に力を込めた。

『おい新羅!私はお前ともっと話がしたいんだ。』

「うん、じゃあ話そうよ。」

『…だから、この体制じゃ打ち辛いんだ。』

言いながら、訴えかけてくるようにもぞもぞと動いているセルティ。
新羅は少しだけ腕の力を緩めると、ゆっくりとセルティを見つめる。

「言葉にしなくても分かることだって、この世には沢山あると思わないかい?」

また急に引き寄せられて、うわ!セルティはそう心中で叫んだ。

「せっかく2人きりなんだ。心で話そうよセルティ。僕が今どんなこと考えてるか、君には分かるんじゃないかな?」

鼓動の音、感じる吐息、温かい体温。
それだけで新羅のことなら直ぐに分かってしまうことが、何となくくすぐったい。

もういいや、今日は負けだ。

私も、好きだよ。

言葉にできない気持ちまでもっともっと伝わればいいと、セルティはぎゅうと新羅の背中に腕を回した。









世界が君を否定しても

いつも君の隣にいるよ。



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