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思い出は空に舞う




リクオと氷麗と黒羽丸








「若ー!一体どこにいらっしゃったんですか!?」

「ん。」

その姿を確認した途端、氷麗は目をいっぱいに見開いて目的の人物の元へと駆け寄って行った。若と呼ばれた青年、リクオは袖から腕を出し、そのまま桜の木の上を差す。

「ん。じゃないですよ!牛頭馬頭が大暴れして大変だったんですから!リクオ様から一言言ってもらおうと…!」

氷麗が涙目にそう訴えるのを横目に、リクオは近くの縁側にどかりと腰を下ろした。それを見た氷麗が少しだけ頬を膨らませて近付いて来る。

「あいつら俺をみたら余計機嫌悪くなるだろ。」

「で、でもぉ!」

「だいたい俺を探す前に自分で何とかしろよ。」

「若がいて下さればそんな必要ありません!だいたい本当にあそこにいたんですか?私一番に探しました!」

「いたよ。なぁ、黒羽丸。」

ばさばさと音がして黒い羽が宙を舞う。その一言で、近くをパトロールしていたであろう烏天狗の長男が羽を広げ勢い良く地上に降り立った。

「はい、若頭はずっとここにいらっしゃいました。探し回る皆の姿を見て、にやにやと笑っていらっしゃったのを確認しています。それから」

「もういいもう。」

「酷いです…!私が探してるの見て面白がってたんですね!黒羽丸も教えてくれたら良かったのに!」

「申し訳ありません。若頭に口止めされていたので、伝えることが出来ませんでした。しかし親父には全て伝えてありますのでご安心下さい。」

「…お前なぁ。」

もう下がっていいぞ。リクオが黒羽丸に告げると、彼は会釈をして再び夜のパトロールへと戻って行った。

「私だけ…」

要は自分がリクオを見つけられなかったことが、氷麗の機嫌を損ねている原因らしかった。
下を向いて、いじける氷麗の頭をそっと撫でるとリクオは優しく笑う。

「相変わらず隠れんぼが下手くそだな、氷麗は。」

目が合った瞬間、あまりの近さに驚いたのか氷麗は勢い良く顔を伏せた。

「…若はズルいです。なんかズルい…!」

氷麗が、咲いている桜のようにほんのりと頬を染める。妖艶に笑ったかと思うと、次の瞬間リクオはまたひょいひょいと木の上に登って座っていた。





(若頭。)(おう、なんだ?)(仮にも本家の庭でイチャイチャするのは如何なものかと思います。)(…。)






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