スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

ruck rack CHIKKU

部活の飲み会に行くためにゆうじクン家を出た


ゆうじクンは
二年生なので
少し早めに出た

アタシはドレスに
着替えて
家に帰る母といっしょに出た


一次会は
飲むというより
食事会のようで
卒業生ひとりひとりに
お手製のアルバムと
花束を渡していた

ふと
ゆうじクンを見ると
何やら厨房の方で
店員さんといっしょに
料理を出している


あとから聞くと
周りの子たちが
動いてなかったから
全部指示を出していたらしい


その分
周りの後輩が我慢している中
料理を食べていた、とか
(ホント調子いいんだから)


二次会は
いつも部活で飲む居酒屋だった


部活の飲み会は
これで最後

ゆうじクンを
盗み見みるのも最後


飲み会の間
アタシは
何回もゆうじクンを見た

向こうも
視線を送っていて
何回も目が合った


だけどわざと
気づかないふりをした


今までで
一番
ゆうじクンが
見てくれてる
気がした



後輩の女の子と
恋愛の話を
していると
「(ゆうじクン)とどうなんですか」
と聞かれ
素直に仲がいいことを
話した


「(ゆうじクン)とまゆみさんのカップルは部活の中でも一番理想的ですょ。ふたりとも自然体で羨ましい」


と言われた


お酒が入っているから
なのか
頭がポーッとした


単純に
嬉しかった


飲み会の最後の方では
いつものように
ゆうじクンに
頭を揺さぶられた


一気に酔いが回った


アタシ以外の
女の子にも
デコピンしてるのは
なんだかちょっと
淋しかったけど
敢えて何にも
言わなかった



二次会が終わって
店を出ると
ゆうじクンが
「まゆを家まで送ったらまたこっち帰ってくる」
と言って駅まで
連れて行ってくれた


しかし
電車がもう無く
ゆうじクンは
自転車で吉祥寺に
来ていたので
アタシ、ひとりで帰れるよ
と言うと
ゆうじクンが
ホームで見送ってくれた


ゆうじクン家に
帰ってから
シャワーを浴びて
眠った


次に目が覚めたときは
ゆうじクンが
帰ってきていて
キッチンで
何かをしていた


次に目が覚めたときは
ゆうじクンが
ヘッドホンを
つけながら
ゲームをしていた


起こさないように
配慮してくれたのだろう


次に起きたときは
ゆうじクンが
座椅子で眠っていた

朝の8時だった


ゆうじクンを
ベッドに寝かすと
朝ご飯を作った


だけど
ゆうじクンは
いっこうに
起きなかった


結局
ゆうじクンは
昼過ぎまで
起きなかった


ご飯はラップをかけて
置いといて
アタシは荷物を
まとめたりしていた


ゆうじクンは
のっそり
起きてきた


ゆうじクンは
寝起きが悪い

ホントに悪い

たまに
無理に起こすと
反撃に会う


こういうとき
北風と太陽を
思い出す


無理矢理
北風で
こじ開けようとすれば
旅人はコートを余計
閉じてしまうのだ


だけど
太陽のように
ぽかぽかと
優しく降り注いでも
ゆうじクンは
起きようとしない


まぁどちらかといえば
太陽の方が成功しやすい

そりゃいつも
イライラしてる人よりは
優しくニコニコしてる人の側にいたいのが
人間だろう


とりあえず
ゆうじクンは
のっそり起きてきて
「もっと早くに起きれば良かった」
と、ひとりごちていた



続く

レイアウト

泊まっていた5日間
ご飯係りだった


おまけに
洗い物、洗濯も
アタシの係りだった


なんだか
花嫁修行してるみたいで
楽しかったけど
失敗したり
ゆうじクンに
注意を受けると
少し落ち込んだ


それでも
「起きたら朝ご飯があるなんて嬉しいょ」
と言ってくれる
ゆうじクンの
柔らかい言葉を
受けるたびに
頑張ろうってやる気になった


ゆうじクンと
付き合い始めて
一年半


まだまだ味は
美味しくないけど
やっと
その場にあるもので
メニューを
考えられるようになった


ゆうじクンは
ゆうじクンで
相変わらず
美味しいときと
美味しく無いときで
反応が違うので
そのたびに
内心一喜一憂した


それでも
毎回残さず食べて
くれるもんだから
作り甲斐がある


ゆうじクンの風邪が
完全に治ってきた頃


ゆうじクンオススメの
パン屋に向かった


安くて素朴で
ゆうじクンが
好きになるパン屋は
外れがない


あれもこれも
としてるうちに
山ほどプレートに
パンが乗って
「たくさん買っちゃったね」
と笑いあった


卒業式典は
なくなったものの
卒業証書授与式は
あって
ギリギリ袴を着ることができた


学校まで
自転車で
ゆうじクンが
送ってくれた

式典が終わった頃
待ち合わせをして
ゼミの友達に
ふたりの写真を
撮ってもらった


帰りはアタシの母と
三人で
ゆうじクン家に帰った


一息ついたころ
ゆうじクンが
冷蔵庫から
タルトケーキを
取り出した


「ホワイトデー、風邪で作れなかったしオレからの卒業祝いだよ」


アタシは
びっくりし過ぎて
固まった


母は
ゆうじクンが
ケーキを作れることに
驚いていた

ふたりで
ケーキを切り分けていると
「まるで共同作業ね」
と言って
写真を撮ってくれた
(何言ってんだか)


三人で
ケーキを食べた

やっぱりゆうじクンは
料理がうまかった


続く

耽美

14日から19日まで
ゆうじクン家に泊まっていた


14日は
会社の試験を受けてからゆうじクン家に
行くはずだった


だけど地震の関係で
中止になり
お昼頃から
ゆうじクン家に行った

玄関で
マスク姿のゆうじクンが
出迎えてくれた


どうやら
風邪をひいているようだった


ゆうじクンに
代わって
買い物をしてきた


食材、乳液、レターセット


ゆうじクンの
看病をしつつ
卒業ライブで
メンバーに渡す予定の
手紙を書いた

あと
会社にホウレンソウの
メールを送って
ネットで調べ物をした


ゆうじクンは
見る見る回復して
出歩けるほどになった


青山の銀行に
会社の給料のための
口座を作りに行った

まだ咳は残って辛いのに
印鑑を忘れた
アタシに怒ることなく
いっしょになって
印鑑を探してくれた


無事印鑑を見つけ
口座を作ることは
出来たものの
やはり疲れたようで
その日はすぐに帰った


続く

カーネーション

卒業ライブが
中止になって
最後の部活飲みが
中止になって
卒業式典が中止になった


いろいろ
ものすごく
悔しかったけど
普通に生活出来ている分
アタシは幸せなんだと思った


気を利かせてくれた
後輩たちが
卒業証書授与式の後
送別会を開いてくれた


二次会を含めて
中止になった
部活飲みを
復活させてくれた
形になった


花束と寄せ書きを
渡してくれたのは
一番仲の良かった
後輩の女の子だった

正直
この子が渡して
くれるのだろうと
クリスマスライブから
ずっと予想していたので
驚きはしなかったが
泣き出した彼女に
つられる形で
アタシも泣いてしまった


本当に本当に本当に
アタシは
いい人に出会えた


この子には
誕生日も
サプライズして
もらったし
人生の宝だと思う



送別会から
二次会の間に
元のバンドの子と話した

解散の時のことを
謝った

ホントはもっと
早くに謝りたかった


案の定
その子の彼氏さんに
「もっと早くに言って欲しかったょ」
と言われた


厳しい言葉だったけど
当然だと思った


そして
彼氏さんにも
謝った


二次会は
序盤から
飛ばしすぎて
いつものことだが
途中の記憶がないww


だけど
一年生の子たちと
楽しく話せて
良かった


一番仲の良い後輩の子と
クリスマスライブのときにJazzバンドを
組んだ一年生の女の子から
プレゼントをもらった


どっちも
嬉しかったけど
泣きそうになるのを
堪えるのが必死で
どちらもそのときは
まともに中を見られなかった


飲み会は
普段通りだった


全然最後の感じはしなかった


ゆうじクンが
最後までいる
ということで
吉祥寺の駅まで
送ってもらって
武蔵境まで
ひとりで帰った


家に入って
結ってもらった
髪を解くべく
ピンを外していると
急に孤独が背中を
這い上がるみたいに
襲ってきた


身震いしながら
シャワーを浴びていると
涙が止まらなくなった



部活


終わったんだ


アタシ
大学卒業したんだ


もう大学行っても
学生ぢゃないんだ


寂しくて
寂しくて
涙が止まらなかった


シャワーから上がって
寝る準備を済ませると
ゆうじクンが
帰ってきたときのために
「おかえり」の書き置きをした



早く帰ってきて



飲み会を
楽しんでる
ゆうじクンのことを
想いながらも
自分勝手なワガママだけが頭をいっぱいにさせた


そのまま
眠ってしまった
前の記事へ 次の記事へ