皆さま、今晩和('∀'●)いきなり降ってきた雨に濡れ鼠にされた私です。ご機嫌よう!
いやあ…、予期せぬ雨は風情があっても許しがたいです。←
さて、また日が開いちゃいましたが、お題の消化です。
今回のテーマは、『ケシ』と『夜更け』。
カプは三光で、ダークシリアスです。ちょい病み気味の光秀さんがおりますので、ダメな方はバックプリーズです(・ω・;)アブナイヨ!
ではでは(^-^)
大丈夫な方は追記より、どうぞ!
芥子、それは魔の華。
すべてを忘れさせてくれる、魔法の華…。
『ケシ』―――忘却。
「…もういい」
「ま、待ってくださいっ、三成っ…!!」
去っていく後ろ姿を見つめ、私は唇を噛んで力なく俯いた。
――また、…まただ。
付き合いだす前からあったことではあるのだけれど、こう頻繁だと気が滅入る…。
どうしてもあの方が良いと選んだお人であるだけに、たかだか意見の食い違い程度のことでこんなに穏やかでいられなくなることが、ひどく悔しかった。
はぁ…、と小さく息を吐くと、文机のそばに置いてある小箱に手を伸ばす。
中には、細々としたものに混じって、密かに置かれた数包の薬を入れた赤い紙袋。
芥子の薫りが香るこの薬は、傷み病んだ私の心をふわっと軽くしてくれる魔薬だ。
紙袋から一包出して、水で体内に流し込む。
芥子のくらくらする薫りと胃の痛みが遠い所へ行くと、じわじわと訪れる軽い浮遊感と、心地よい脱力感。
「――ぁ…」
ぱたっと畳に身体を預け、静かに深くなっていく呼吸をゆっくりと受け入れると、見えてくるのは、ただひたすら優しい、幻像。
『愛している、光秀』
『俺の傍にいてくれ、光秀』
『光秀、俺と一緒に生きてはくれないか』
「三成殿…」
ふわっと浮かべた笑みの目尻を涙が伝う。
幻だと識っていても、彼のくれる優しい言葉は、私をこんなにも脆くしてくれる。けど、本物の彼には其れを望めない。
リンリンと鈴虫の鳴く庭に手を伸ばす。
いっそ、ああやってリンリンと鳴くだけの、庭の鈴虫にでもなれたなら、少しは気も楽になっただろうに。
煙のように浮かんでは消える幻に優しい言葉を次々と掛けられながら、目を閉じる。
今の私に、秋の夜長は、ひたすら苦しいものでしかない。
愛しい人を怒らせてしまって、触れられぬ幻に抱かれる、私には――。
だから、今だけ、
すべてを忘れたいと思ってもいいですか?
気だるく伸ばした手に触れた赤い紙袋を引き寄せ、胸元に抱いて、ゆっくり目を開いた。
この薬を紙ごと火にくべると、危険だけれど、すべてを忘れさせてくれるという。
「………」
ゆっくり立ち上がり燭台の傍に立つと、紙袋の中から出した小さな薬包を燃え盛る火の中にくべた。
途端に立ち上ぼる、濃い芥子の匂いと、紙片の焼ける焦げた臭い。
身体を抱き上げられ、柔らかい布団か何かに寝かされる感覚と共に床に崩れ落ちる。
深い酩酊と重い快楽。
綿の泥沼に沈み込んでいくように濃い…、
「……ねむい…」
強烈な眠気に瞼を閉じる。
瞼の奥で爆ぜる、いろ、イロ、色…。
色に溶けてゆくように眠りに落ちていく。
すべてを忘れて。すべてを真っ白にして…。
fin.