僕は待合室の椅子の上でぼんやりと宙を見ていた。

聞こえるシャワーの水音に、ぐちゃぐちゃになった頭の中を掻き回されながら。
昔は隠れ場所だったカーテンの奥も今は畳に占領されてしまったから、僕には隠れる場所がない。

大きな鏡に僕が映る。
なにか叫びたそうな顔をしているけれど、その僕は何も言わない。

僕はその鏡を殴りたくなった。だがこれは備品だからそんなことをしたら大問題だ。
どっちに向かって歩けばいいのかよく分からない。こんな汚い僕がどうすれば他人の波に混じることができるのか、検討もつかない。

ただ怖いと言えば否定されることに、また僕は頭を抱えるんだ。

はやくこちらへおいで

そういうような声が、よく聞こえる気がする。
だけど僕の足はここから動けないようになっているからその声には従えない。

声が言う言葉と反対の言葉を僕が喋る。
僕が言ったことを声は後から責め立て続ける。

ああ、また怒らせてしまった。
僕は一体なにを言って、どう行動して、どう振る舞えばいいんだろうか。