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洗濯ものは

夜に干したから乾いてないの。勝手に取り込まないで…柔軟剤の匂いをとるために長干ししてるんですー。

夢をみる空

夢日記でもつけたほうがいいのかしらん。
今日も変な夢だった。嫌いなひとがでたし、やめた職場がでてきた。
嫌いなひとは殴ってやる!って夢のなかでも思ってたから、強くなったんだなあ。
行方不明の女性は何の暗示?

ママンは私の日記を盗み見してるんだろうか、と考えるくらい、不機嫌。
理由を考えると、思い至る点がわらわらと。うーん、自分ですら自分がいやだわ。

えーい、空をとべ!

【創作】メトロ



「ほら見てごらん、曲がった」

親子連れの父親が娘に囁くのを耳にした。つられて、車両の後部に目をやると、左側にずれた客席が見えた。
トンネルの中のカーブにさしかかっているらしい。
進行方向に目を向ければ、右側にずれている。私のいる車両はちょうどクロワッサンの、中央に位置していた。


「きょろきょろすんでない。おのぼりさんってわかっちまうで。ちゃあんとお行儀よく、じぃっとしてれ」


婆ちゃんが言うから、私は両のこぶしを膝に置いてじっとしていた。正面に映る私の左側には婆ちゃんがいる。その姿はタヌキみたいだ。


「山さ追われても皮剥がれても、こないな地下深くを走る乗り物に乗れるなんて思わんかったわ」


タヌキがぴこぴこ、鼻を動かしながら言うから、私の右隣に座ったウサギが言う。


「火事になっちゃえ」


真っ赤でまん丸な目をぱちくりさせた、そのあまりにも可愛らしさに、キツネがきしし、と笑いながら通りすぎた。


「全部燃えちゃえ」


ウサギはぼそぼそ可愛いことを言う。 いつの間にかタヌキがつり革に捕まってぷらぷら揺れている。

私はポケットを探って、あめ玉を一個、ウサギにあげた。ウサギは長い耳をあめ玉に寄せて、美味しそうな音がする、と言った。
ぷらぷら揺れているタヌキがうらやましげに見ていたので、タヌキにもあめ玉を差し出したら、戻ってきたキツネがひょいと、掴んで立ち去った。
あ、と思っているうちにつり革にぶら下がったタヌキが大きく振れる。金属音がして、カタン、と速度が落ちる。


「ほら、真っ直ぐだ」


親子連れの父親が娘の頭を撫でながら囁くのを耳にした。正面に映る私の両隣は空席で、網棚の上に置き忘れた新聞があるだけだ。

降車駅が近づき、私は席を立つ。ポケットにあめ玉はなかったけどキャラメルを見つけたので、親子連れにあげようかと顔を上げた。
けれども私の車両は空っぽで、どこにも親子連れの姿はなかった。


(そうか、メトロだから)


死んだ婆ちゃんはよく地下鉄には気をつけろと言っていた。
地下は空間が歪みやすい。


ホームに降り、ドアが閉まるのを見送る。ぴるるるる、と発車音が響き、車両は先の見えないトンネルに吸い込まれた。

【創作】旅人証のはなし/彼女と彼の友人の2

【旅人証を受け取ってきました。】


電源を切りっぱなしだった携帯を久しぶりに開く。着信お知らせが何件か、家を無視すると彼女からの着信が紛れていることに気づく。
彼女にはメールを送ったっきりだ。旅人証について、はなしたことはない。ただ受け取りに行くときに連絡しておきたいと思ったのだ。心配をかけるだけかもしれない不審なメールを彼女だけでなく彼にも送った。
幼なじみの彼女には知らせる理由があった。母親は帰ってこない娘を心配したら警察ではなく彼女に泣きつくだろう。旅人証について全てを語ることはできないが知らせておきたかった。
その同じメールを彼にも送ったのはどうしてだか。彼とはネットを介した友人であり、おそらくわたしを男だと思っている。ずいぶん前に勘違いされたまま、不便もないので放置しておいたのだ。メール友だちというのでもない、ただメールを交わす友人であるだけの彼とは妙に気が合い、予定帳代わりのブログのアドレスも何とはなしに教えていた。
彼女へのメールにCc.で彼のアドレスをつけたのは思うところがなかった…わけでもない。

新しいメールアドレスを知らせるついでに旅人証の報告をする。彼と彼女、同時にすぐさま返信がきた。
珍しいこともあるものだ、と開くと内容はほぼ一緒だった。

【創作】旅人証のはなし/彼女と彼の友人の1

【旅人証を受け取りに行ってきます。】


メールを一通、友人ふたりに送ってから出発した。母親にはちょっと出掛けてくると言い残しておく。ちょっと、がどれだけになるのか分からない。
鉄道を乗り換えバスを乗り継ぎ、小さな駅舎で夜を明かし、始発に乗り込みうたた寝した。
一日経っても返信がないのでアドレスは変更した。メールアドレスは自分にとっての旅人証みたいなものだ。変える度にひとつ、好きなところに行っていい。
ということにしている。

旅人証。
その存在を知ったのは最近ではない。噂は聞いたことがあった。ふらふら目的もなく旅をするものたちが立ち寄る食堂がどこの土地にもある。安くて旨い定食が食える、色気も素っ気もない店だが、旅人が自然に集い自らが知るはなしを語りあう。
旅人証のはなしは三夜に一度はだれかが語った。実物を見たことがあるものは少なく、持っているものはいなかった。
旅人証が何であるのか、語るものによって異なった。旅人としてのステイタスであるとか、鉄道のフリーパス、旅館に特別料金で泊まれるだとか、旅人証を持つものの特別の集会があるだとか。
しかし旅人証がどんなもので、証書なのか勲章なのか、はたまた口伝であるのかは皆知らず、旅人証の発行店があるというはなしだけは共通して知られていた。
旅人証発行店の住所は公になっているがその店に旅人証があるとは限らない。旅人証のほとんどは人の手から手へと伝わるものらしい。
旅人証の存在を知ってから旅に出る度に譲ってくれる人を探した。連絡があったのはつい最近だ。

譲ってくれるというその人は、久しぶりの帰国だとゆかりの地を移動していて、掴まえるのに十日程かかった。