地図が読めず方向感覚もない夢主。
覚えた道なら大丈夫だけど知らない土地で一人旅は死亡フラグ。
ゲームでも動物園でも店内でも迷う。
そんな夢主とおお振りの桐青和サン。
「…どこだここ」
まずい。現在9:50で絶賛迷子中。集合時間は10:00なのに。
「まずいまずいとりあえず携帯の地図アプリじゃ無理だ俺が読み取れない地元民に道聞こう」
駅から20分そこらって距離だと油断した。かれこれ35分程歩いているのにそれらしい場所に辿り着かない。
「すいません!県立球技場ってどこですか!」
今俺なっさけない顔してる。自覚はある。
「この道をずっと行って左側にあるけど…5kmくらいあるよ?」
まさかの目的地から遠ざかってた!地図アプリでは3km程度だったのに。一瞬絶望して慌てて頭を下げて礼を言い言われた道を突っ走る。
走れ脚!どうせ補欠だ棒になったって構わない!しょっぱい心の汗を感じながら突っ走り、県立球技場の名前を見て滑り込む。
「セーフ!」
「アウトだよ」
ぱこ、とメガホンで頭を叩かれた。なんでメガホンあんの。
荒い息のまま顔を上げると、和が苦笑してた。
「やっぱり迷ったか」
「そう思ってたんなら一緒に行くという優しさを見せても良かったんじゃないすかねぇ和己サン!」
「ほら、獅子は千尋の谷に突き落とすって言うし」
「お前は俺の親か…!」
ゼーハー息を切らす俺と和やか笑顔満載の和己。力関係がよくわかる。
「それにほら、お前が道迷った時いつも勝つし」
「なんのまじないだ!つか俺が道に迷わんでも桐青が勝つわ!」
はは、と笑ってポカリを差し出した和に礼を言って一気飲み。
「腹壊すぞ」
「…カイロ持ってる」
もうすぐ夏なのに。俺の腹は多少の精神疲労は耐えるくせに冷たい飲み物には一切耐性がない。
「部員の士気上げるのにちょうどいいよなぁ」
という和己の呟きは聞こえなかった。
end