泉と水谷







綺麗なもの、汚いもの。

この世にどちらかしか存在しないとしたら、俺は汚いもの。とてもとても、汚いもの。

「…い、ずみ?」

澄み切った綺麗な目に見つめられる度に、自分の存在がひどく歪んだものであると思わされた。
だから、どうせやらなければならないなら、全部目茶苦茶にしてやろうと思った。

「もう終わり。サヨナラだ。」

「何で、急にそんなこと言うの?」

「騙されたのに気付かないなんて馬鹿じゃねーの。」

近付いたのは、金のためだった。俺はずっとそうやって生きて来た。今回もそうだった。

「サヨナラ…なの?全部全部嘘だったの?」

「そうだ。全部嘘だ。」

「じゃあ、今の言葉も、嘘なんでしょ?」

そう言って水谷は、出会った時と同じ笑顔をして俺の前に立っていた。
何を言っているのかと思う。こんな俺に縋って、どんなメリットがあるって言うんだ。

「お前、俺なんかとこれからも一緒にいたいと思うのか?思えるのか?」

いつもは弱気なくせに、水谷の意志は揺るがない。一緒にいた時もそうだった。ここぞと言う時は自分を貫き通した。そんな一本筋の通った生き方が、俺には眩しかった。

「愛、してたよ。だから、本当にサヨナラだ。」

「…泉、っ嘘、ばっかり。また明日も…会いに来てくれるんでしょ?」

その綺麗な涙を拭うには、俺の手は少し汚れすぎてしまったから。

「…当たり前だろ。」

小さくそう呟いてから、必死に俺の名前を呼ぶ声に気付かないふりをして静かに闇夜に消えた。


綺麗なもの、汚いもの。
もう諦めていた。当たり前だと思っていた。

君に出会って初めて、いつか変われたならいいと思った。

君は世界で唯一、俺を揺るがす存在。

どうか、幸せになって下さい。
そして最期に少しでも俺を思い出して下さい。
そうしたら俺は、産まれて来た意味を見いだせるような気がします。







I hope your future

貴方に、素敵な未来が訪れんことを。