雪男と燐






「…信じられない。」

「うっせーな!今から片付けんだよ!」

仕事を終えて部屋に戻ってくると、辺り一面踏み場も無いくらいにごった返していた。人が働いてる間に、この兄は一体何をしていたのか。

「ちょい待ってろ。あと1時間くらい待ってろ。」

「どこで。しかも1時間ってちょっとじゃないだろ。いい加減にしろよ。」

「…先生、素が出ていらっしゃいます。」

「2人なんだからどうでもいいだろ。」

深いため息をつきながら唯一綺麗なはずの自分の机の元へと向かう。

「で、何しようとしてたの?」

「へ!?」

「意味もなく部屋荒らしてたわけじゃないんでしょう?」

「あ、いや、それは、まぁなぁ…」

兄さんはそれはそれは罰が悪そうにそっぽを向いた。全く、いつまでもこどもみたいなんだから。

「奥村くん、僕には言えないことですか…?」

満面の笑みでそう問いかけると、お前怖いんだよとか何とか言いながら観念したように話し出した。

「別に大したことじゃねーけどさ。」

「大したことじゃないけど?」

「…っつか顔近いんだよお前さっきから!」

「いいから。で?何?」
「おおおお前に恋人がいるかもしれない疑惑が浮上してだな。」

「うんうん。それで心配になって後をつけたり、僕の鞄を漁ったりしてたんだろ?」

「そうなんだよ!今回こそ物的証拠を掴めないもんかと…ん?」

本当に、予想以上だなこの兄は。暫く考えこんだ後、今日初めてやっと僕の方を見た。

「…っお前知ってたな!?」

「知ってたけど、それが何か?」

「なんなんだよ!どういうことだよ!」

「暇だったからそういうフラグたてたら、兄さん焦る焦る。面白かったから暫くそんな振りをしてみました。」

呆然としている兄の頭を笑いながらぽんと叩いたり、柔らかいほっぺたつねったり。と、やっと我に帰ったらしく勢い良く振り払われた。

「我が弟ながら鬼畜すぎる…!ぜんっぜんかわいくない!」

「だから可愛い担当は兄さんに任せるよ。」

にっこり笑って一気に距離を縮めると、ぱたんと後ろに優しく押し倒す。状況を理解したらしい兄さんの顔は一瞬にして真っ青になった。

「ちょ、待…来んな!」

「嫌だって言ったら?」

「そんな自分勝手な…んんっ」

毎回散々文句言って暴れる割には、ちょっとこうしたらすぐおとなしくなるくせに。

「…本当は、嫌じゃないんだろ?」

「お前本当に性格悪い!最低だ!」

「はいはい、知ってます。」

「でも好き…だから、お前に好きなヤツがいなくてよかった…」

「はいはい、それも知ってます。」

涙の後が伝う目尻に優しくキスを落とした。本当、これだから兄さんを苛めるのはやめられないんだ。

「雪男…っ」

涙目で求められるように名前を呼ばれて、ぶるりと全身が震えた。
さて今度は僕がどれだけ想っているか、このバカな兄さんに教えてやる番かな。



My life、Your life。

他の人が入る余地なんて、初めからあるはずないんだ











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雪ちゃんの口調むずかす^^ごめんなさい!