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Darkness ChildrenO


D.C.の第16話です。
more..!

Darkness ChildrenN


「いや、想像はしてたけど…、ありえなくないッスか。ってかマジで此処森?」


ハイドシークの手前まで来ると、赤也も尋常ではないほどの気味の悪さにドン引きしていた。

何せ、一応道の様なものは存在しているものの、100m先が見えるかどうかすら危うい薄気味悪さに、覚悟はしていたものの、やはり恐怖は襲ってくるわけで、赤也の顔は暗く、雰囲気も重かった。


「森。まぁ、森っちゅーよりは樹海やけど」
「ありえん、ホンマ無理。ちょ、白石マジで行くんか…?」


しかし、初めて来る赤也以上にビビッているのが謙也である。

6年も前とはいえ、ここで過ごした数ヶ月間はホントに地獄を見ている気分だったのだ。
そのトラウマがあるからか、今でも入ることに抵抗を感じてしまっていても不思議なことではない。


「大丈夫やて。変なとこは入ってかんし、ずっと一本道や。俺が行ったことあるとこしか行くわけないやろ」
「つか白石さん、さっきから何持ってんですか。血臭が半端ないんッスけど」


赤也はそういって、「花鳥風月」から白石が担いでいる袋をさしていった。

中に何が入っているのかまではわからないものの、鼻を刺激するほどの血臭が白石の周りに漂い、あまりの凄まじさにいい加減無視しきれなくなったのだ。


「ん?何や、知りたいんか?」
「知りたくないって言ったら嘘になりますけど…」
「ぶっちゃけ聞きとーない」
「まぁ、その内わかるて。今回は草取りがメインやしな」


ハハッと、軽く笑った白石に、何処か引っかかるようなものを切原は感じたが、一瞬だったため、自分の見間違いだと思って流すことにした。

忍足に確認しようとも、忍足は自分以上に自分のことで精一杯だ。
彼は今、白石のことを気にしている余裕も無いだろうと確信していたのも無きにしも非ず、忍足に聞くという選択肢は、切原の脳内からは自動的に消えていた。


「ボケッとしとらんと行くで。あんま遅いと霧が濃くなる」
「え、ちょ、それ早く言って下さいよ!!」
「あーもう嫌やぁぁぁッ」
「あんま喧しいと置いてくで、謙也」
「それはもっと嫌や!!」


この歳になって、ホントに大丈夫なのか…

事情を知らない切原は、忍足のあまりのビビり様に呆れ、若干ながらの不安を感じながら、白石のあとを追った。


Darkness ChildrenM



「で、今からハイドシーク行くわけ?」

蜜柑は、呆れたような表情で白石に言った。
いくら幼馴染とはいえど、彼の能天気さに心底呆れていることには変わらないのである。
しかもそれが此処10年以上たっても全く変わっていないのだからよけいである。


「まぁな。やから此処寄ったんや」
「え!?あそこって立入り禁止なんじゃ…!」


白石の思ってもみなかった返答に、切原は驚いた。
ハイドシークには絶対入るなと幸村から脅し付きで言われている上、柳や丸井から樹海にまつわる色々な怪談話を散々聞かされているからだ。

勿論、何で入ったことの無いはずの彼らが、そんなリアルなことまで分かるのかというのは疑問に思っていたが。


「あぁ、オレが一緒におらん時はな。オレはあそこの地形は把握しとるし」
「ま、あの樹海から生きて戻ってこれるのは今じゃ蔵之助くらいだしな」
「そうなんッスか??」


切原は楓の話を聞いて首をかしげた。
ハイドシークは入ったら一生出れないとまで言われる樹海で、自分から入りたがる人間は殆どおらず、いても自殺志願者くらいだと、幸村や柳から聞かされている。
そんなところに白石が入りこんでいっても生きて帰ってこれている、ということに疑問を抱いたからだ。


「まぁね。…謙也君なら分かるかもしれないけど、あの樹海、半径100から150キロ以上…大体ルイナの30倍くらいの面積かな?それくらいにわたる針葉樹の密集地帯でさ。あそこに入ったが最後、すぐ方向感覚も無くなっちゃって、自分が今何処を歩いてるのか、何処から歩いてきたのかさえ分からなくなるのよ。たとえまっすぐにしか歩いてなくてもね。しかも気候上、すごく霧が発生しやすいし、針葉樹林だから冬でも葉が落ちないから日光もあんまり当たらないし、薄気味悪いことこの上ないから、余計惑わされやすいのよ」
「ラジオの電波は勿論、無線もとどかない。人を惑わす迷いの森。迷ったら一環の終わり無き永久のかくれんぼ。…まさに、死への末路よね」


切原はその話の内容に驚いたが、何よりもその話をかるーく流すかのように笑顔で話している蜜柑と楓を恐ろしくも感じていた。
そして自分の隣にいる謙也に至っては、幽体離脱して樹海の話を聞き流してしまおうと必死になっている真っ最中で、ホントに彼が自分より年上なのかということさえも疑ってしまうほどだった。


「そう固まんなや。オレがおりゃ迷子になんかならへんし、そんな身構える必要ないで」
「お前は能天気だからな。つっても、言うほど深いとこまでは行かねぇし、一本道しかないから」
「朝は霧が出んからな。まぁ、他にも理由はあんねんけどな。早朝のがええっていうのはそれや。いくら俺でも霧がかったハイドシークをうろつきまわんの嫌やからな」
「まぁ、これ以上は脅さないから安心しなよ」


脅す気でいたのか…。
そう思うとホントに脱力感満載なのだが、一々こんなことで反応していたら身が持たないからか、忍足はすでに反応をするのをやめていた。

いや、彼の場合、聞きたくない話が終わったからリアクションを辞めたに過ぎないのかもしれないが。


「そうや、姐さん。アレくれや」
「あぁ。ちょうど溜まってきたところでね。ついでに今朝でたアラも持ってって。裏においてあるよ」
「大体どれくらいや?」
「2キロくらい。お前もホイホイ使って取れや」
「そら、ハエとりの奴使ったら楽チンやけどな。その辺に売っとる奴は手も突っ込めんのや」
「ハエとりのが安いのに」


白石と楓の意味深な会話に疑問を覚えたが、その内分かることだろうと謙也は判断し、首を突っ込もうとはしなかった。


「おおきに、また来るわ。…謙也、切原、行くで」
「おー、いつでも来い」
「えぇ!ちょ、待ってくださいよ白石さん!」
「お前、人置いてくなや!!」


そう言って何そ知らぬ顔で店を出て行く白石を、切原と謙也は追った。



.

Darkness ChildrenL



「ってか、楓姐さんどこやねん」


話の区切りがついたところで、白石は唐突に蜜柑に問いかけた。
家族のいない白石が姐さんと呼んでいるということは、彼の姉的存在なのか、それともただ年上だからそう呼んでるだけなのか、忍足には分からなかった。
実際は後者なのだが、それは忍足の知る由は無かった。


「楓さん??楓さんなら…」
「何か呼んだ?蜜柑」


カウンターの暖簾の奥から現れたのは、胸の辺りまである桜色のストレートの髪と蜂蜜色の猫目を持った、20代前半くらいの女性だった。
細身で身長も割と高く(170cm)、隣にいる蜜柑とは比べ物にならないほどの美貌の持ち主で、街ですれ違えば10人が10人振り返るほどの美しい女性だった。


「あ、楓さん。蔵が新人連れてきたよ」
「分かったから早く皿を拭きなさい。…で、2人とも新人なの?」


蜜柑を軽くあしらったあと、切原と忍足に視線を向け、見たことの無い顔ぶれだからなのか、白石に問いかけた。


「髪の黒い方はな。もう片方は樹海で迷子になっとった奴や。右が切原赤也、左が忍足謙也や」


ふーん……。
そういって、楓と呼ばれている女性はカウンターから出て、忍足と切原に歩み寄った。
身長は若干2人の方が高いのだが、2人は彼女が元々持っている威圧感に圧倒されそうになっていた。



「忍足ってもう一人いなかった?似非眼鏡の」
「あぁ、氷帝の奴な」
「アイツ、オレの従兄弟なんッスよ」
「へぇー。こっちのが性格も良さそうじゃない。私はこっちのが好み。…あ、自己紹介してなかったわね。私は秦崎楓。この店のマスターよ」


楓にもそういわれ、少し照れくさくなりながらも、忍足は軽く会釈をした。
先ほども言ったが、小さいときから何故か侑士の方がモテていて、自分は恋愛対象外のように言われていたこともあるからか、先ほどの蜜柑もそうだったが、こう率直に言われたことは無かったのだ。

それと同時に、自分の従兄弟が今までどんな行動を取っていたのかも疑問に思えてきたのだが、正直考えたくもないため、考えることを放棄することにした。


「ってか、此処どういうところなんッスか?喫茶店なのは分かるけど…」


切原は、今の今まで疑問に思っていたことを口に出した。
どう見ても普通の喫茶店には思えないし、何よりも、こんなところに喫茶店があるのも妙な話なのだ。


「まぁ、喫茶店っちゃー喫茶店なんだけどね」
「喫茶店ってのは表の顔。本来は情報屋なのさ。日都での政府の動きだとかをわざわざ現地まで調べに行って、それを蔵とか精君とかに垂れ流すのが仕事なわけ」


そう。
喫茶"花鳥風月"と言うのは、あくまでも表の顔。
本来は凄腕の情報屋として、先ほど蜜柑の言ったように、現地までわざわざ出向いて現状を探ったり、裏で動いている組織の情報を売買したりしているのだ。

彼らに任せれば、手に入らない情報はないと言うほどの腕前で、手に入れてくる情報はすべて正確のため、白石たちは彼らに情報収集を任せているのだ。


「まぁ、財前や柳だけじゃ補いきれん部分の情報収集をしてもろてん」
「へぇ…。でも、俺らが来ることと何の関係があるんッスか?」
「まぁ…恒例行事、って言えばいいのか?新人がルイナの生活に慣れたら此処に顔見せに来ることになってんだよ」
「謙也君は異例だけどね。私らもルイナで育ったし、話したことも見たことも無い人間がルイナの中にいるってのも、ちょっと悲しいからさ」


蜜柑の話を聞いて、この人たちもルイナの一員なんだと、忍足は感じた。
実際の戦いから一線ひいてはいるが、彼らも政府の連中と戦っているということは変わりないのだ。



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まさかの3話連続更新。
ちょっと夢だったD.C.の大量更新www
ダラダラ長くてすみませんιι
案外蜜柑と楓のキャラは好きです♪
侑士の扱いが可哀想すぎるのはスルーの方向でお願いします。
忍足侑士ファンの方すみませんιι


Darkness ChildrenK



「此処や」
「ここ、何ッスか…」


アレから南東に進むこと約20分。
3人がたどり着いたのは、"喫茶「花鳥風月」"という看板がついている一軒家だった。
都会のその辺にあるような喫茶店をちょっとボロくした感じの家で、見るからにティーンエイジャーが入るようなところではなかった。


「ん?喫茶店やけど」
「それくらい分かるわッ!俺ら連れてこなあかん場所って此処かい!!」
「さっきからそう言うてるやん」


白石のマイペースさに若干引きながらも、切原はもう一度その家を眺めた。

喫茶店というより、酒場のような雰囲気をかもし出しているこの店は、明らかに自分達のような子供の来るような場所ではないし、酒中心なのではないかという風貌も残している。

ここに自分達を連れてきて何になるのだろうか…。
それだけが疑問だった。


「何や、お前今日ずいぶんおとなしいやん」
「頭が回らないんスよ。慣れない時間に起されたんで…」


そりゃそうだ。と、忍足は思った。
普段7時すぎに起きる人間がいきなり朝4時に叩き起こされたのだ。
眠いわ頭は働かないわで散々な状況なのだ。


「ブツクサ言うとらんと入るで」
「ちょ、待ちぃや!!」


忍足の制止もむなしく、白石は喫茶店の扉を景気よく開けた。

カランカラン―…
「いらっしゃいませー……って蔵かよ」


中に入ると、皿を拭いていた店員が明るい声でにこやかに挨拶をするものの、白石の姿を見た瞬間、声のトーンが一気に下がり、呆れたような表情で言った。


「なんや、今日は蜜柑かいな」
「那桜は財前と仕事に行ったでしょ。琉椰はもうすぐ帰ってくる」


蜜柑と呼ばれた彼女は、赤みの強い癖のある短い茶髪に、この世では珍しいブラッドオレンジの瞳をしており、可愛いというより美人というような顔つきをしていた。


「ブラッドオレンジ…」
「オレ初めて見たわ…」


彼女の持つ瞳の色が珍しいのか、忍足と切原は完全に魅入ってしまっていた。
それは、彼女の瞳が髪の色とうまく溶け合い、全く違和感のない、純粋な色合いだったからだ。



「あぁ、この瞳??この世じゃ私しか持ってない超レアな色だしね」
「コイツは櫻井蜜柑。一応オレとタメや」
「よろしく。2人とも新人?」


カウンターに頬杖をついて蜜柑は言った。
やはり見たこと無い顔ぶれのため、2人のことが気になっていたのだろう。


「まぁ、オレは一応…」
「金髪の方は4年前に樹海で迷っとった奴やからな。連れてくんのに4年待ったんや」
「ふーん……。名前は??」


あえて触れてこないのか、ただ単に興味が無いだけなのか、忍足のことについては何も言わなかった。
実際は前者で、忍足のことは顔と境遇だけなら知っているのだ。


「切原赤也、一応…16歳」
「一応って何や。オレは忍足謙也。18や」


2人が自己紹介をすると、蜜柑は少し首をかしげた。


「……忍足ってもう一人いなかった?変態っぽいの」


この言葉を聴いた忍足は大きく溜息をつき、白石は軽く笑った。
まさか、彼がこんな風に言われているとは思ってもみなかったのだろう。
実際にそうだからか、何もいえないのが現実である。


「おるで。アイツの従兄弟や」
「……は??あの変態似非眼鏡がどうやったらこんなに爽やかな奴になるわけ!?こっちのが絶対カッコいいって!」


そういわれている張本人である忍足は、少し驚いていた。
よく似てないということはよく言われていたが、侑士の方がモテると言われていたため、自分の方がカッコいいと言われたのは初めてに等しかった。

しかも、従兄弟が変態なことに関しては忍足も認めている事実なため、何もいえないのだが……



□■□■□■□■□■
連続更新。やっほいww

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