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当文芸部では年7回、部内誌を発行して作品を見せ合い、合評をしています。また、課題図書を設けて議論を交わす読書会や、他大学さんとの交流行事、合宿や学祭などのイベントもあります。 どうぞゆっくり文芸部の日常の断片をご覧下さい。
こんにちは。13です。
当文芸部では、部内から作品を募り、その中から部員たちの投票で選んだ作品を関学新聞に掲載させていただいております。
そこで、掲載終了した作品及び掲載候補を公開することにしました。
今回の作品は、2011年9月の関学新聞の掲載候補となった短編作品です。
『pollution』 作・屋千宇
地球が、夢精する。
*
「その瑪瑙は持ち上げると異様に軽い。磨き上げて半透明にしてみると、内部は空洞で、液体状のものが入っているのが分かる。」
*
先生はもう何時からか分からないが、ずっと四面体を黒板に書き続けている。途切れ途切れに発せられる独白のような言葉達を拾い集め、私に理解できる形に構築すると、つまり、こういうことになるらしい。単純で最も美しい、凝縮の結果である四面体。完全なそれは月光を浴びると黄金に光る。先生は昼間に出来る限りの四面体を書き、夜な夜なそれが照らし出される様を目を凝らして見つめる。未だ黄金に光ったことはなく、だからこそ先生は今も四面体を黒板に書いているのだ。いっせんきゅうひゃくななじゅうよんまんせんいち、とぼそり、と聞こえたような気がした。
生徒は私と隣の彼の二人のみだ。となりの席に座っている彼はポケットの最奥の部分に穴を開け、そこから自分の肉体へと絶えず接触している。つまり自涜行為に耽っている。最初の頃に運悪く、彼が手をひと際高く持ち上げた時に私は訝しんで彼の方を見てしまったことがあった。赤黒く覗くそれが本当に気持ち悪くて、うわあ、と露骨に嫌そうな声を漏らすと、錯誤の結果が偉そうに言うな、お前ら女なんて人間じゃないんだ、と返された。
あんなやつ、男ぎらい同好会が所有する、城の鉄の檻に男として入れられて、下等で卑しむべき動物としての見本にでもなってしまえば良いのに。心の中だけでそっと言い返す。どこかで読んだ小説に、そんな話があったのだ。その男嫌い同好会は男が嫌いな女ばかりで成り立っている。その会員になるには男と一生交わらないことをサインする必要がある。どこかのゴシック建築の城を支配していて、そこにはありとあらゆる動物と共に、理解を深め、より憎悪を深めるための対象として男を並べる。
私は今こうして思い出している。そして徐々に圧迫感を感じ始めている。私にとって、いや、私たちにとって自由に考えるということ、その場所からはみ出して自分を主張することはすなわち冒涜だ。教室の後ろに鎮座する、ありとあらゆる装飾を施された自分の墓を見る。ジキスモンドへのオマージュとして造られたそれは、真っ白に塗られている。
私は席を立ち上がる。彼らは全く意に介さず与えられた自分の役割をひたすらに果たし続けている。しかし私がドアに手をかけた瞬間、彼が突然けたたましい叫び声をあげた。ぎええええええ。振り返ると先生は泡を吹いて倒れている。そのまま私はドアを一気に引く。
*
「その瑪瑙の中の水は内部からの異常な圧力によって液体の形を保っているので、もしその瑪瑙に少しでも亀裂が入ると、それはたちまち蒸発してしまわねばならない運命なのだ。」
*
どろりと吐き出された慾、すなわちヘドロは海の底のほうにどろりと溜まり、余裕のない荒い息は二酸化炭素を大量に生み出す。流れ落ちる汗は酸性雨。すべては結局、想像にすぎないのだけれど。
こんにちは。13です。
当文芸部では、部内から作品を募り、その中から部員たちの投票で選んだ作品を関学新聞に掲載させていただいております。
そこで、掲載終了した作品及び掲載候補を公開することにしました。
今回の作品は、2011年10月の関学新聞の掲載候補となった短編作品です。
『こんな小説に誰がした?』 作・鈴木小川
正直言って、私は、小説家に向いていない。
最近は、つくづく、そう思う。
元々、語彙力が豊富でないし、体力や根気も皆無、ましてや、作家の命である非凡なアイデア生成力も無かった。
「先生。今回も、よろしくお願いしますよ」
天使のような笑顔を浮かべた編集長に促された私は、渋々、新作の序章に取り掛かった。
今回は、高校生の恋愛小説だ。大まかな内容としては、今まで付き合っていたカップルが、学校の廃校に伴い、離ればなれになるというものを考えていた。
「どうですか?」
「う〜ん」
編集長は腕を組んで、大いに悩んでいた。いつもなら、たった数分で、「よしっ! これで行こう!」と、言ってくれるのだが……。
「鈴木君は、もっとさぁ、弾けられないの?」
「は、弾ける?」
「例えば、トンネルを抜ければ逆さまの世界だったとか、針が全て抜け落ちたハリネズミが悟りを開くとか、そんな感じの弾けた小説が、書けないの?」
この人は、全く私のことを分かっていない。
大学時代に、自分の作品を面白半分に文芸賞に出したら、大賞を獲った。それで、私は、一流作家の仲間入りを果たした。
しかし、その後は、斬新なアイデアが一つも浮かばず、苦しんだ。
そんなことを編集長に打ち明けたら、休養した方が良いと、天使の笑顔で言ってくれるだろう。だが、それとは裏腹に、専属契約を打ち切り、私を無一文で野に放り出す悪魔のような所業をしてくるのだ。そんな残酷な目に遭う作家たちを、何人も見てきた。
だから、私は、彼にこのことを打ち明けなかった。
それでも、少しは、分かってもらいたい。
「無理なの? そんなんじゃ、この作品も五千部止まりですよ」
そして、お前をクビにする。
そんな悪魔の囁きが、聞こえたような気がした。これは、マズい。
「そ、そんなことは無いです。一週間あれば、弾けた小説のアイデアを、思いつけますよ」
「本当かい? そりゃあ、こちらとしては、大いに助かりますよ」
そんな安請け合いをしてから、六日後。まだ、私は、アイデアが浮かんでこなかった。
明日の十二時に、奴が来るまでに思いつかないと、駄目だ。
かなり焦っていたので、アイデア探しに、街へ繰り出した。
しかし、街を歩いても、目に付くのは、桜満開の若いカップル達に、チャラチャラした学生連中、しおれた老人達ばかりだ。これでは、マンネリ化した小説しか書けない。
何か起こして下さい、神様。
そう祈った瞬間、私の頭上に隕石が落ちてきた。
「これが、今回の僕の作品。どう思う?」
「どう思うって……。何か、ベタな感じで、嫌だよ。テンプレ的なブラック・ユーモアで終わっているしさぁ」
「いやいや。ここから、まだ続くんだよ」
「なら、お前が編集長に言わせているような弾けた展開にしろよ」
あいつはそう言うと、部室を出て行った。
よしよし。まだ、気付かれていない。
下宿の同じ部屋で、僕の隣のあいつの長く語るような寝言が、そのまま、僕の小説になっていることに。
こんばんは。13です。
こんにちは。部長の13です。
こんにちは。13です。
学祭も目前に迫って参りました。さっそく印刷作業も始まりました。空き時間はどんどん部室に来て印刷していきましょう!
1〜3回生の部員は学祭期間中のシフト提出もよろしくお願いします。
1回生の看板作業もラストスパートです。がんばれ。
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