純くんの部屋で、葵さんの手紙を見た
見たらいけないものだってことくらい分かってた
携帯をのぞき見するくらい、それよりももっといけないことをしてしまった

でも、実際のところ、答えは「黒」だった
びっくりしてしまって、吐き気がして、
でも言えない。
私が見たものは、見てはいけないものだったんだから。

それでも我慢することなんか、できなかったよ
千葉さんが家に押しかけてきてることや、契約社員の話、
新しい店舗の話とか、
純くんが頭の中でぐちゃぐちゃになってるのも分かっていたけれど
今ってゆータイミングが、どれだけ純くんを追い詰めてしまうのかも分かっていたけれど、
抱えきれなかった


純くんが話してくれたことに嘘がないんだとしたら、
その本音はなんて辛くて苦しくて、
気付いてあげられなかった自分が情けなくもなる
ご両親を本当に大事にしていることも、
自分に自信がないことも、
妬みや羨ましさで醜くなってしまった感情も、
それが嫌いになる理由にはならなかったけれど

でも、信じられるかどうかといえば、
答えは出てしまった
もう、心の底から信じることはできない
二度も嘘をつかれていた
変えられない事実


年齢や環境は、自分でも変えることができないから
追いつけないこと、不安にさせてしまうこと、
保険を考えさせてしまうこと、
そのすべての非は私にある
だから、どうしようもないの。
一緒にいたいって思える人であっても、
どんなに運命を感じる相手であっても、
私じゃあの人を支えていくことはできない。

結婚と恋愛は違うものだから、
経済的なことや金銭面を考えなくちゃいけないのは分かってる
その上で、私と純くんじゃ一緒にいることができないのも知ってる
なんで、出会ってしまったのかな
もっと違う形で会えていたら、こんなに苦しくはならなかった?

覚悟ができていたから涙が出ないのかもしれない
もっと現実味を帯びてきたら、ちゃんと泣けるかなあ
強がりではなくて、本当に一滴も、涙が出てこない
この状況の方が怖くて、泣けるように失恋曲ばっか聴いてるんだけどなあw


本当に辛いのは、苦しいのは、私じゃない
他力本願かもしれないけれど、
誰かに助けを求めたくなる気持ちは分かるから
私が掬いあげることができたらどんなにいいだろうね
でも、その自信がないのも事実なんだよ
経済的な意味でも、将来的な意味でも、
隣にいることができたらいいと思うのは本心だけど、
無理なことがあるのも分かってる


「気付いてくれてありがとう」

怖くて怖くてたまらなかった
すべてが嘘だったのかもしれない、
だから確かめるのが怖かった
でも、訊いて、本音を吐き出してもらって、
ほんのちょっとでいいの
心につっかかってたものを降ろすことができたなら、
どんなに幸せだろうと思う


ひとりで抱えているのが、どんなに苦しかったか、
私には想像することができない
自分がプラスの方向に進める人種だからなんだと今ならわかる
マイナス同士の人間が一緒にいても、救われることはない
そのために私が純くんと会ったのだとしたら?


もう、信じることはできないけれど、
話を聴くことはできる。
カウンセリングみたいだなw
それでも少しでも純くんが楽になれたら、
本音を話せる人間であれたなら、
それで充分だと思う。