・ぐりむそ武将の寄せ集めです
□上杉景勝
『選択肢は『はい』か『イエス』です』
「言うこと聞かないとちゅーするのじゃ!」
ん?ガラシャの言った言葉の珍妙さに内心首を傾げた行長とは対照的に、言われた張本人である景勝は珍しく、あからさまなまでに狼狽していた。
「(そら昼間っからちゅー(接吻)なんて言われたら…)」
家風なのか、景勝自身にも恋愛免疫の少ない為か、接吻や逢引と言った直接的な言葉を聞くと動揺してしまって困ると大袈裟に嘆いていたのは、景勝の若き側近であった。
「(頑張りや旦那…)」
「朝、おはようのちゅーをするくらい、どうということはないはずじゃ!」
景勝に憐憫と同情の眼差しを投げ掛け、そっと退室しようとした行長の耳に、衝撃的というか、正直耳を疑いたくなるような言葉が入った。
「なっ、なんやってぇ!?」
大袈裟な反応をするならば、何も口に入れていないというのに、吹き出していただろう。今、年頃の婦女子の口から出てはいけへん言葉が出たのは幻聴や。そう思い込んで景勝を見た行長は珍しく絶句した。
「(た、立ったまま気絶しとる……)」
ここに綾御前や上杉の家臣がいなくてほんまに良かったわ、そう思って、行長は今度こそ部屋を出たのだった。
□山中鹿介
ただ、身体が勝手に動いた。ただ、泣いて欲しくない。それだけだったんだ。
「鹿介っ!」
悲鳴にも似た彼女の声、鉄が肉に刺さる音、そして倒れる私の身体、その全ての音が、嫌に大きく聞こえた。
―穿たれた場所が、熱い。
「鹿介、鹿介、鹿介ぇっ!」
繰り返さなくても、聞こえているのに。近くから聞こえる声は、普段ならずとも疎ましく感じる程でありながら、普段の能天気さを形すら見せない悲嘆にくれたそれだった。
「ガラシャ」
真上から聞こえる宿敵の声。怨敵が間近にいるのに、私の身体は何故動かない。奴を…元就を斬れば、尼子家再興も夢ではなくなるのに、何故。
「すまない、とは言わない。だけど、退いてくれないかな?」
ああ、やはりか。そなたが、私を塞いでいるのか。そなたは私の邪魔をする天才だな、邪魔をせず、早く退け。
「嫌じゃ!」
「わらわが退いたら、元就は鹿介を討つのであろう?そんなの…嫌じゃ!!」
また、我が儘を…、早く退いてくれ。私は、もう永、くは…ないのだ。
「…はあ、仕方ないね」
「何が…、…うっ!」
腹部に掛かる重みが、私を更に苦しめる。本当に、そなたは何がしたいのだ。
「さて、君を守ってくれる、勇猛可憐な姫君はここにはいない。この意味、分かるね?」
相も変わらず、冗長な言い回しをする男め。当然、分かっているに決まっている。
「……やく…しろ」
口から絞り出された声は、風前の灯火よりも弱々しかった。
「…百万一心、」
空から降る無数の矢が、私の首を、心臓を、手足を、全身を容赦なく貫く。全身が焼けるような苦しみの中、私は最期まで私に迷惑しか掛けなかった少女の笑顔を浮かべて眼を閉じた。
『バッドエンド症候群』
□香宗我部親泰
異常に瞳が据わった親泰を、ガラシャはとても恐ろしく感じた。そうでなくても暗がりで人気の少ない日陰で、しかも逃げられないように彼の手が彼女の手首を掴んでいるのだ。怖くない訳がない。
「ち、親泰……」
早く解放して欲しくて見上げる瞳は潤みを帯びていて、親泰は露骨に舌を打った。
「泣いて縋れば、許されるとお思いで?…赦す訳がないだろう」
殺意にも似た威圧感を放ちながら紡がれた言葉は、ガラシャにとって死刑宣告にも等しかった。彼女は親泰のことが好きで好きで、誰よりも好きなのに、捨てられてしまうのか。
「親泰、わらわは……んぅっ!?」
涙を流しながら、それでも弁明の言葉を言おうとしたガラシャの口は、親泰のそれによって塞がれてしまった。
「言い訳や嘘を言うだけなら、もう何も喋らないで頂けますか」
貪るように乱暴で性急な口付けに、ガラシャは気持ちの総て奪い去られるような、そんな錯覚を覚えた。
「姫、私は怒っているんです。もう私のものだというのに、他の男に色目を使うあなたに」
そんなことは誤解だと、ガラシャは言いたかった。しかし、ここで何か言おうものなら、親泰はもっと酷いことをガラシャにする。これは推測ではなく、確信だった。
「何回でも、何百回でも言って差し上げます。…あなたはもう、私のものだ」
ガラシャの心も身体も総て自分の所有物であると、そう言いたげな親泰の言葉に恐ろしさと同時に愉悦を感じてしまったら、もう戻れない。そう分かっているのに、彼女は嬉しく感じてしまうのだ。
「他の男を見たら、その男を殺す。…それが例え、兄上でも」
恐ろしいまでにガラシャのことしか見えていない親泰は、やはり恐ろしいまでにガラシャ以外に関心を示さなくなっていた。
〜Fin〜
【後書きにする程でもない反省文タイム。】
景勝:(多分)妹のように可愛がっている(であろう)ふぉろわーさんの課題完了祝い
監視員の仕事中に同じ言葉を聞いたので(そのまま流用?いやいやまさかwww)
鹿介:当時やっていた企画
書く直前に『僕が歌うと…』を読んでぼろ泣きしたから、涙が出る程優しい話しを書き…たかった、んだけどなあ(遠い目)
ついったでアップした日が誕生日と重なって、超土下座したくなりました。
親泰:書いた前日に買ったラノベの内容に禿げた結果です。
内容が内容なのでR-12って言いたいけど、このサイトに小学生は来ないわな