ようやく芸能パロ完成!!
書き始めた時はエクシリア発売したばっかだったのに、今ではエクシリア2まで発売されてなんかもう…。
もしこれにルドガーを出すなら劇団奥村所属の遅咲き俳優かな。
最後はもちろんジュードとミラ!凄くベタな展開になっちゃいました(^_^;)
【6】
人ごみの間を縫うようにして一人の少年が走っていた。
呼吸を乱しながらも人や物に当たらないように走るその姿は見事なもので、今の彼はそれだけ早く走ることに全力を注いでいるのであった。
(やばいやばいやばい!)
息も絶え絶えに走る彼の名前はジュード。
今年で十七歳になる彼は現在役者を目指している。
そして今日はまさにその夢の第一歩となるオーディションの日であった。
(せっかく最終オーディションまで残ったのに…)
今回彼は長年続く映画『テイルズシリーズ』の最新作『テイルズ オブ エクシリア』の最終オーディションまで残り、会場である藤島芸能事務所へ向かっている最中であった。
本来ならもっと時間に余裕を持ってゆっくり向かうはずだったのだが、今日に限って目覚まし時計の故障で寝坊、信号機には全て引っ掛かるという不運にみまわれ、予定していた時刻から大幅に遅れてしまったのであった。
(あ、あのバス!)
横断歩道を渡りきった先にあるバス停に一台のバスが近づいてきている。
それは藤島芸能事務所経由のバスで、時間的に考えてあのバスに乗ることができればギリギリ間に合うはずだ。
幸い横断歩道は青信号、バス停に並んでいる人もそれなりにいるので何とか間に合うだろうと思い一気に横断歩道を渡りきろうとしたのだが、それは叶わなかった。
何故なら横断歩道の真ん中に重たそうな荷物を抱えた老人がゆっくり歩いていたのであった。
(おばあちゃん、大丈夫かな?信号も点滅始めちゃったし)
もちろんそのまま放っておいたところで赤の他人であるジュードには関係のないことだが、自他共に認めるお人好しの彼はこのまま放っておくことができず手を貸してしまったのだった。
「おばあちゃん大丈夫?僕が荷物持つから一緒に渡ろう」
「おや、ありがとうねぇ」
老人から荷物を受け取り、ゆっくりとした足取りで無事に渡りきると老人はジュードにお礼を言い横道に入って行く。
それを笑顔で見送るとジュードはすぐ様バス停に目を向けた。
そこにはバスの影も形も無くなっているのだった。
「はぁぁぁまたやっちゃった…」
ジュードは盛大なため息をつくと、小さく呟いた。
このお人好しな性格の為、今まで何回も損な役回りをしてきてそのたび次は気を付けようと思うのだが結局また同じことを繰り返してしまうのであった。
(次のバスはまだ来ないし、走って行っても間に合わないしどうしよう)
絶望にうちひしがれ項垂れるジュードだったがそんな彼に声を掛ける人物がいた。
「おい、君!そこの落ち込んでいる少年!!」
「えっ?あ、はい!」
落ち込んでいる少年という言葉に反応して顔を上げると、そこにはヘルメットを片手に黒いライダースーツを身に纏ったとても美しい女性が立っていた。
(綺麗な人だぁ)
ジュードはその美しい容姿に思わず見とれてしまう。
そして女性はそんなジュードの様子も気にせず近づいて来るのであった。
「先程の君の行いを見ていたが今どき感心な若者だな。しかしその君が抜けていてはダメだろう」
そう言いながら、女性は青い水晶が付いたネックレスを差し出してきた。
「あっ!それ!!」
「あのご老人の荷物を受けとる際に落としたようだったぞ」
それは昔から大事なことがあると必ず持っているジュードの御守りであった。
今日は朝から急いでいたので慌ててポケットに突っ込んできたのだが、どうやら荷物を受けとる際に屈んだので落ちたようであった。
「ありがとうございます!これ大事なものだったので」
「いや、気にすることはない。それより君は急いでいたようだったがこんなにのんびりしていて良いのか?」
どうやらジュードが走っているところから見ていたらしく女性は不思議そうに質問をする。
「いや、もう…いいんです」
「何かあったのか?」
諦めたような言い方をするジュードに女性は更に聞いてくる。
言ったところでどうにかなる訳ではないが、何となく女性に自分が急いでいた理由を話していた。
「なるほど、要するに時間までにその場所に辿り着けば良いのだな」
「はい、でも今からじゃもう間に合わないです」
「少年、諦めるのはまだ早いぞ!」
「え?」
そう言うと女性は路側帯に停めてある自分のバイクに近づくとシートの下からもう一つのヘルメットを取り出しジュードに投げて寄越した。
「さあ、後ろに乗れ!私がそこまで送ってやろう!」
「ええぇ!?」
突然の申し出にジュードは慌ててしまう。
「そ、そんな悪いです。見ず知らずの人にそこまでお世話になるなんて」
「君は面白いことを言う。では君が先程やったことはなんだったのかな?」
「あっ」
先程やったこと、つまりあの老人の手助けをしたことを言っているのだろう。
そう言われては自分は何も言い返せない。
しかし、未だにまごまごしているジュードに女性は更に言葉を続ける。
「私はただ選択肢を増やしただけ、本当に決めるのは君自身だ。君は本当に諦めてしまっていいのか?」
「僕は…」
そこまで言われ暫し考えるような素振りをすると、ジュードは真っ直ぐに女性を見つめて言った。
「行きます!」
「良い返事だ」
女性がバイクに跨がるとジュードも慌ててヘルメットを被り急いで後ろに座った。
女性の体に抱きつくのは少し抵抗があったが逆に手を取られ、しっかり掴んでいろと言われては緊張しながらも女性の腰に手を回した。
「行き先は藤島芸能事務所で、えっと道は…」
「わかっている。舌を噛むといけないからな、口を閉じてしっかり掴まっていろ!」
「え?」
そして女性はエンジンをかけ勢いよくアクセルを吹かす。
次の瞬間、ジュードは今までに感じたことのない重力を体に受けることになるのだった。
・・・・・・
「さあ少年、着いたぞ」
「…うっ…は、はい」
法廷速度を無視したバイクは予定時刻よりも早く目的地に到着した。
生まれて初めて乗ったバイクは今まで体験したどんな乗り物よりも激しく、ジュードはフラフラになりながら何とかバイクから下りる。
「大丈夫か?これからオーディションを受けるのだろう」
「はい……だいじょうぶ、です」
心無しか顔色の悪いジュードを心配し女性が声を掛ける。
未だにバイクの衝撃が抜けきらないのもそうだが、会場についたことでオーディションへの緊張も限界まで高まっていたのであった。
「そうだ、頭を貸せ」
そう言うとジュードの頭に女性の掌が乗せられ優しく頭を撫でられる。
「落ち着いて、君ならきっと大丈夫だ」
頭を撫でられながら凛とした声でそう告げられる。
ジュードは段々と気分が落ち着いていき、本当に何とかなりそうな気がしてくるのだった。
しばらくすると女性の手が離れジュードは顔を上げる。
「もう大丈夫そうだな。これは私が昔よくやってもらった元気が出るおまじないだ」
女性は満足そうな顔をすると再びバイクのエンジンをかける。
「それでは少年、健闘を祈る!」
「あ、あの!」
そのまま去ろうとする女性にジュードは思わず声をかける。
「あのっ!僕ジュードって言います。あなたは?」
突然の自己紹介に女性は目を丸くする。
我に返ったジュードは自分でも何を言っているんだと思い顔を赤くさせる。
しかし女性はフッと笑うと
「私はミラだ。君とはまた近いうちに会える気がするよ」
それだけ言い残し、再びバイクを走らせると来た時と同じようにあっという間にいなくなってしまうのだった。
(なんだか不思議な人だったな…)
ジュードは女性、ミラを見送ると踵を返し、夢への第一歩を踏み出すのだった。
それから数日後、見事オーディションに合格したジュードが再びミラと出会うのはまた別の話。
end