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Many Classic Moments16 (攘夷高新)



*まとめ*




 昼間から降っていた雨は、夕刻になっても未だ止まない。戦装束はぐっしょりと雨に濡れ、冷たく体温を奪っていく。足元に転がる仲間の屍が、今斬った敵の屍が、どんどんと道無き道を成していく。

皆が皆疲労し、憔悴し、はたまた懊悩し、それでもまだ剣を振るってた。まだ剣を握ってた。どうしようもない焦燥に突き動かされるがまま、若い侍達は剣を振るってた。


そんな中で鬼兵隊は晋助の活躍ももちろんありましたが、結局はやはりじりじり後退してたのですよ。疲れもあるし負傷もあるしね。皆が皆、晋助みたいに剣を振るえる訳でなし。
自分だけが獅子奮迅の活躍を見せても、戦では勝てねえ。どんだけヒーローがいようとも戦はこれ時の運。利の運。そして人の世の定め。
真田幸村が家康の首を仕留めんがばかりに活躍した大坂夏の陣があったけど、結局は豊臣方が負けた例と一緒です。

まあだから、夕刻になって晋助は最後方に居る筈の銀さんとばったり会いましたさ。もうそこまで鬼兵隊もじりじり退いてんのね。見えない戦況の為にね、鬼みたいに強えと評判の鬼兵隊だってじりじり退がってきてるんです。
晋助は、晋助だけはさ、それを認めねえだろうけどもさ。





「……あ、高杉クンだ」

と、呟きざまにブンッと長刀を振り回し、敵の土手っ腹に風穴開けた銀さんが、崩れ落ちる敵の身体越しに晋助を発見した模様です(凄い画)

そしたら晋助はツカツカ歩いて行って、まずは銀さんの胸ぐらを掴むんだろうねえ。


「……テメェ銀時、何を勝手に撤退なんざしてんだよ」
「いや、だってうちの連中の怪我酷えし。怪我人戦わせらんねーだろ。鬼兵隊の連中はどうなってんのか知らねーけど。どうなってんの、そっちの状況は」

胸ぐら掴まれても、銀さんは平然としております。そしたらそんな銀さんを見た晋助は、


「テメェらとそう変わんねェよ。怪我人が酷え。……死人もな」

と、吐き捨てるように言う。ひどく悔しそうに。耐えられない憤怒を滲ませて。
銀さんもそういう時は決して晋助をいじったりしないから、


「……っそ。まあ、てめえが生きてるからって喜んでる連中も多いんじゃねーの?死んだ奴らはさ」
「……分かった口聞くんじゃねえ。テメェに鬼兵隊の何が分かんだよ」
「はいはい。そうね、俺は部外者でしたね」

怒りや憤懣はあれど、まだまだ減らず口を叩く元気のある晋助をニヤリと見据えて、銀さんは血がついた刀をブンブン振って血を払ってます。

すると何かを思い立ったのか、晋助はきょろっと辺りを見渡し、


「……アイツは?」
「いやアイツって?誰だよ。ちゃんと名前で言えやハゲ」
「うっせェ殺すぞクソ天パが。俺に指図すんなや(ガルルル)」
「いやてめえこそ俺に指図すんな、てかマジ誰。てか何でお前は逐一喧嘩腰なの?そんな喧嘩腰になるってお前……あ」(←閃いた)
「…………新八だよ」


プイッと頬を背けたまま新八くんの行方を尋ねるが、銀さんは鼻でもほじってますね。ああ、って感じで。


「あー新八な。てめえ何で新八のこと気にしてんの。最近すっげ気にしてるよね、お前ね」
「別に気にしてねェ、これっぽっちも気にしてねェ」(←即答)
「いいや気にしてる、すっげえ気にしてる」(←即答)
「気にしてねえよ、何でこの俺があんなガキを気にする必要があんだよ」(←ゴミを見る目)
「いいや気にしてる、もういっそかわいそうだわお前、新八並みになれとは言わねーけどさ、素直になれないってかわいそう」(←ゴミを見る目)
「しつけえんだよ。アイツはどこだよ」

ギロリと晋助にメンチ切られ、銀さんはまた平然とね。木の茂みを指差し、

「新八ならほら、あっちで負傷した奴らの介抱してるよ。てか今の状況ならマジでもう限界だからな。鬼兵隊もへばってんなら無理すんなよ。もう引き上げようぜ」


暗に総員撤退を促す。そこで初めて晋助も渋々頷き……かけたけども、

「……なら、この先にある城まで落ちる。そこまで歩いて五、六時間か。もちろん全員連れてく」


とね。まだ自分らの味方になってくれそうな領主の居る城塞を思い出して、顔を上げたのですよ。でも銀さんはやっぱり晋助に物申すよね。


「はあ?無理だよ。怪我人連れて今から五、六時間も歩けねえって。俺らずぶ濡れなんだぞ、分かってんのか」
「分かってらァ。だが行く。今からすぐ出立だ(真顔)」
「いや分かってねーし!これっぽっちも分かってねーだろてめえェェェ!!俺とかヅラとか辰馬なら余裕で行けっけど、他の連中は無理だっつーの!」

晋助はやっぱり傲慢かつ高慢ちき野郎なので、まあそこがカリスマオーラ発祥の源でもあるんだけど、やっぱりモブ志士の皆さんには無理を強いるところもあっただろうな。そんで、それを止めるのが銀さんや桂さんだっただろう。時には銀さんと晋助が二人して暴れてるから、それを取りまとめるのが桂さん。そして時にはそこに桂さんも参戦し、やはり暴れているという。そんな村塾(つまり全員大暴れじゃねーか)

んでもこうやってギャンギャンと身にならない言い争いをしてましたら、他ならぬ新八くんが二人の元にやって来たのですよ。


「どうしたんですか、銀……って、高杉さん!大丈夫でしたか、あれから」

『あれから』なんて含んだ言い方をした新八くんを、何やら胡乱な目で見やる銀さん。そして次に晋助を見る銀さん。何やら高新二人の間で交わされたアイコンタクトを見逃さない銀さんです。
その観察眼怖えェェェ大好き銀さん!(最後)って話ですよ。

まあ晋助はそんな銀さんの態度には気付かず、ふっと目を伏せ、


「フン。テメェ如きに心配されるほど落ちぶれちゃいねえ」

などと高慢に新八くんに返すけどね。そしたら新八くんもホッと息を吐き、

「よかったー……僕、あれから高杉さんのことが心配で心配で」


と。銀さんにとっちゃ『!?』ってなる、まさに寝耳に水発言を繰り出しております。全くの無意識でね。


「え?何で高杉が心配なのお前。ダメだよ高杉とか、近寄ったらこいつの童貞うつるから。あ、てかお前も童貞だったわ」

そしたら銀さんったらね、新八くんをずずいっと晋助から遠ざけてます(銀さん)
そんな銀さんにプンプンしながら、新八くんは銀さんと晋助を心配そうに交互に見つめる。


「ね、暗くなってきましたね。雨もひどいし……もう引き上げるんですか?」

不安げな新八くんを見て、でも晋助はにべなく告げる。

「ああ。この先にある城までは落ちる。俺たちに武器や弾薬を補給してる領主の城だ。そこまで行きゃあ……まあ、軒先くれェは貸してくれんだろうよ。そこで立て直す。どうせ辰馬が上手ェこと相手を乗せるからなァ」


何気にやっぱり晋助も攘夷の皆を信頼してますよね。桂さん銀さんだけでなく、もっさんの人心掌握の能力の高さもちゃんと信頼してる。

でもやっぱり銀さんは反対なのね。


「はあ?!こんな雨の中歩けってか?お前さ、他の連中の負担考えてみろ。とりあえず森の中で野営した方が良くね?朝になったら……」
「ふざけんな。朝まで待ってられるか。また敵が襲ってきたらどうする」

そして強行を決断してる晋助とまた言い争う。


「そん時ゃそん時だっつーの。俺なりヅラなりが立ち回って敵なんざ倒すからいーよ。マジてめえは血も涙もねェなオイ、高杉」
「あん?何をヌルいこと言ってやがんだテメェは……テメェそれでも白夜叉か?(ギリリ)」
「はあ?それでも俺は白夜叉サンです、てめえはむしろ鬼兵隊の総督ですか?ねえねえそうなの?え、決死隊の隊長じゃなくて?てめえだけ逝ってこいやボケ(ガルルル)」
「テメェ……何なら幕軍やら天人より先にテメェを殺ってやる、銀時」(←ほんと喧嘩っ早い)
「上等だよ。この白夜叉の首、獲れるもんなら取ってみろよ。ああ?」(←ほんといつでも挑発しすぎ)

「やめてください二人とも!今はそんなことしてる場合じゃないでしょ!」


そんな二人の諍いを止めたのは新八くんですよ。目の前の喧嘩に夢中になる野郎どもを身体張って止める。銀さんと晋助の腕を両手で掴む、もう全力で止める。

って女神か!眼鏡の女神なのか君はァ!(そうです)


「時間がないですよ、決めなきゃ……もう僕らここに止まるのはどのみち無理です。ここは平原すぎます、見晴らしが良すぎる……」

新八くんはそう言うけど、そうやって敵方の強襲を心配してる新八くんこそ、とっくに体力の限界がきてるのです。雨にも濡れてるし、敵から逃れながら味方の介抱するってとんでもなく神経すり減らす行為ですよ。先陣で切った張ったしまくってる晋助や銀さんが、決して知らない疲労なのです。
二人を止めた新八くんの手は細かく震えてた。雨に濡れすぎてて寒いのですよ。そして目の前で散った多くの仲間の死が、眼前にこびりついている事もある。とにかく新八くんの体力と精神力はもう限界でした。


だからそんな新八くんのことは銀さんが一番よく知ってるので、


「……だな。悪かったな新八、お前の言う通りだわ。場所は移そうぜ、どっか近くの森に寄る。そんで皆で暖取ろう。ずぶ濡れだしよ」

新八くんの頭を優しく撫でながら言った。新八くんもその手にコクリと頷きかけ……

「いや、城に行く。テメェらの部隊に足引っ張られる訳にはいかねえんだよ。寄り道でもして寝込みを襲われてみろ。また誰かが死んだらどうする」


──ていたのに、晋助はやはり冷たく一刀両断にした。バッサリ斬り捨てた。銀さんの意見に真っ向対立した。やっぱりそれにはいきり立つ銀さんでしたがね。


「はああ?!ふざんな!皆が皆、てめえとか俺みてーな奴らばっかだと思ってんじゃねーぞ!新八だって限界なんだよ!」

でも晋助の胸ぐら掴みかけた銀さんの手を止めたのは、誰でもない新八くんだった。

「銀さんっ!いいんです僕は、行きます!行けますから!」


そして震える右手首を自分の左手で抑えて、

「大丈夫……まだ歩けます」


キッパリと銀さんと晋助の目を見て言った。今はガキでも女子供でも童貞でもメガネでもなんでもなく、今だけはどんな区分もなく、まぎれもない“侍”の目で告げた。


そんな新八くんに少し気圧され、銀さんも晋助も一瞬黙る。黙るけど、やっぱり銀さんは新八くんの限界を常々感じてるからね。


「新八……ならお前は俺が背負う。てめえ一人くらいならいけるから。お前軽いし」
「え?いやいいですよ、僕行けますよ」
「だってお前、気ィ抜くと今にもブッ倒れそう」


過保護か!って言う。銀さんは新八くんを愛してんのか!っていう(ずっと前から愛してます)
でもマジで銀さんは気にしてないだろ、ここで新八くんを五、六時間背負って歩くことくらい何でもないだろう。全く苦じゃない。銀さんは昔っからこういう銀さんなんですね。

だけど新八くんはキッパリとそれを断った。


「本当に大丈夫です。ありがとうございます、銀さん。他にもっと怪我してる人が居るんで、背負うならそういう方が先ですよ」

そんでニカッと笑った。それがまるで銀さん二号みてーな屈託無い顔で笑ったもんだから(ここも師弟)、ああお前ってそういう奴だわ、ってね。銀さんも思ったよ。



「(何を護るかがいつもちゃんと見えてる、お前には)」


銀さんも嬉しくなったよ。とてもね。


「(護りたいものをいつもちゃんとてめえは護る。だから俺はお前に惚れてんだよ)」


すごく素直に思ったんだよ。お前が好きだよって。いやそれ、心の中でだけどね(銀さんの性か)




そしたら晋助も新八くんの気概にはコクリと頷き、

「ああ、分かった。なら鬼兵隊が先行する。てめえらには殿を任せる」


殿(しんがり)を任せるってね。口ではどんだけ辛辣に言おうが、とても信頼してるのだと思うよ、銀さんと新八くんのペアをさ。
銀さんにはすごく腹立つことも多いし、悔しい思いもたくさんあるけども、新八くんを任せられんのは銀さんしか居ないとも思ってるの。新八くんを任せるなら銀さんに任せたいの。晋助の男心も複雑だけどね。


そして新八くんにチラと目をやり、

「テメェは……昼間みてェに銀時から迂闊に離れんじゃねえぞ。ただでさえ今のテメェには体力がねえ。銀時のような体力バカと常に一緒に行動しろ」

と傲慢に。
けど傲慢に言ってても暗に新八くんを心配しております、総督ったら。馬鹿にしてるように見せかけて、本当は心から心配してるのです。でも自分は総督という立場があるから、新八くんとも一緒には居られないの。本当はすぐ側に居たいのにね。

すぐ側で護って、そのすぐ側で刀を振るっていたいのに。本当は誰より側にいたい。


だから高飛車発言に銀さんが怒る前に、晋助は今度は銀さんに目を向けて、


「銀時……分かってんだろうな」

静かに釘刺した。
『テメェがこいつを護れ』と目で語った。銀さんは晋助の無言の言葉をちゃんと汲みますからね、

「ああ、はいはい。そんなんお前に言われねーでも」


ニッと口元に笑みを浮かべて言うの。
『ちゃんと護るし、何なら新八には俺の背中も任せてくわ』みたいな。銀さんはそんな気概ですよ、常にね。

侍としての新八くんを信頼してるし。




まあ新八くんはそんな野郎同士の無言のやり取りを読み取れる訳もなく、


「?……大丈夫ですよ高杉さん、僕は銀さんから離れませんから。銀さんの背中は僕が護りますから」

晋助の発言の意味を若干勘違いしてね、高らかに発言ですよ、てか若いっていいねえ(心から)。ほんとマジでそう思うわ。だって今の新八くんの目ときたら。

さっきまで限界点ギリギリで、まるで小動物のように震えておりましたのに、今の新八くんの目はキラキラとして、『僕が銀さんの背中護るぞ!』っていう意識に既に燃えてる若侍なんですよ。それしか見えてないくらいの。

だから晋助も銀さんも、そんな勇ましい新八くんにはふと優しい笑みをこぼしてね。


「……よし。ならいい。なるべく戦闘にならねェように動け。特に銀時だ」
「わーったよ。ちゃんとコソコソ行くよ、先行してくそっちも暴れ過ぎんなよ」
「ああ。まあ……出来る限りだがな(ニヤリ)」
「ううわ。何かすっげえ悪い笑みだわそれ、新八が見ちゃダメなレベルだわ」


なんだかんだで仲良しかお前ら!って言うね(本当にな)





*続く*
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