どうも血を吸う動作は、赤ん坊が乳を吸うそれに似ている。
「犠牲者」の喉元に牙を立てながら、そう思う。
抱いている相手の温く柔らかい体から、みるみる内に力が抜けて行く。つい、久しぶりに喉を潤そうと、激しくしてしまったか。
しかし命に別状なかろう。初めは相手を死に至らしめることもなかったわけではない。しかし回を重ねる毎に「うまくやれる」ようになった。明日になればすっかり忘れていることだろう。
少し寂しいような気もするが、忘れていてくれるほうが気が楽だ。
―寂しい、か……
自分はそんなに情に深く、取り分け母親の愛情を欲していたのだろうか。
そんなつもりはない。いや、なかった。
けれど、相手が―取り分け美しいと思った女性が、欲しくて堪らず、今だに同じことを繰り返しているのだ。
柔肌を、一心不乱に吸い、啜り上げて、時に最後の一滴までを求める。
欲しいから、傷つけてしまう。
気絶した相手の体を大事に抱え上げて、紳士的に最後の始末をしつつ、やはり満たされないと心のどこかで思った。
失礼だが、この人は違う。
そう考えて納得のいかない感情のままに、人と人の間を彷徨い続けているのだ。
もう何年も。
「千年の孤独」を癒すために。
口元を軽く拭いながら、自分に対して苦笑した。
また明日も、そして明後日も、きっと我慢ができなくなるたびに求めては奪う。
赤子のように。