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【二次創作小説】約束の土地‐Promised Land‐

 プロミスドランド。よく考えれば、約束された地という意味であるが、何がどのように約束された地なのか、分からぬままに、今日もヒナタはホームにインする。

 まだレベルの低いエルフ男のなるとが、
「よう、ヒナタ」
と迎える。
 中の人がヒナタ総受けラヴァーだとかで、付けられたその名前を、なるとが気に入っているかは分からない。
 執事のゑびす丸は留守だ。夢幻博物館の展覧会を成功させるため九つのキノコを集めている。
 もうクエストから戻ってくる頃だろう、ヒナタはゑびす丸を呼び戻す。
 落胆した様子で彼は帰って来た。手にあるキューブにキノコは入っていなかった。ただ、〇印クエストに行かせれば、それで良いというものではないのだ。
 ヒナタは間髪入れずに、他の、まだキノコが手に入っていないクエストへとゑびす丸を出発させる。

―まだ、二日ある。

 イベントの終了まで後僅か、というところ、九種のうち六種のキノコが手元にある。
 あと三種―チューエドシティ城下町と、プリン・ア・ラ・モール‐パイン、そして、ワンダーアトラス第一部で手に入るはずのキノコのみが、揃っていない。

 ゲートベースでも苦労した。ここで諦めるわけには行かない。ルーレット回しで3を出すため、なるとのレベル上げの目論みを捨て、レベルの高い熟練したゑびす丸にのみクエストを割り振ってきたのだから。
 どうやらルーレットで3を出した時に出現率が高いことと、終了後すぐに結果を受け取れば出現しやすい、という二つの経験則をヒナタは六種を集めるうちに見出だしていた。

―まだ、二日「も」ある…。ここで諦めてはいけない。即ち、ゑびす丸を休ませる訳には行かない。

 久々のイベント完遂のためならば鬼畜にもなる。それが、ヒナタであり、中の人だ。

 なるとは、退屈そうな、申し訳なさそうな顔で、机の上にあるよく分からない果実をつまんでいる。
 調和の取れない、無秩序なインテリアに囲まれて、なるとはこうして無限とも言える、心の抜けた時間を過ごしているのだった。
 せめて、クエストへの同時出発が可能なら、自分もゑびす丸同様にとまではいかなくとも、少しは活躍できるのに。早く実装しろよ、運営。心の中で毒付く。
 彼は某ロボットアニメの主人公の相棒や、某冒険活劇アニメの、敵キャラ三人組の二枚目半と同じ声を持つ。故に、プライドは高いのだ。良い男でいたいと思う。

 でも、ヒナタはそんななるとの気持ちを知っているのか、いないのか…何も言わぬまま、あっという間にログアウトし、その姿は掻き消えた。

 その後もなるとは一人、机の上の果実を孤独に貪り続けた。ゑびす丸のクエストが終わっていようがいまいが、ヒナタがインして結果を取得するまで帰っては来ない。
 いつかこのアプリも終わるかもしれない。それも、唐突に。運営様のお考えは、ユーザーには計り知れない遠いものだ。そうであるとしても、なるとは何も変わらない。
 キノコが集まり、イベントを完遂出来るのかどうかということすらも、なるとには左右出来ないことなのだから。

「ヒナタは大船に乗った気でいろよ」
「俺を船に喩えるなら、大洋をゆく豪華客船ってところだな」

 ヒナタの顔を複雑に歪ませるだけだとしても、なるとはそう言いたかった。クエストに挑めば潰されるだけ。もう留守番が俺の存在意義なのだろうか。そんなことはない。ライトくんだって、後衛だけど重要な役どころで、ケーンをしっかりサポートするじゃないか。元気に軽口を叩きながら。

 でも、ギガノスの蒼き鷹みたいな強敵と、大きな運命の流れには、かなわないのは必定…だったりするのかもしれないけど。

 何となく、なるとは今回の展覧会は成功するのではないかと思った。いや、して欲しい。確実に成功するのだ。自分に出来ることは、あまりないけれど。

 幾つ目か分からない果実に手を伸ばして、そして、また戻した。
 運命なんて、俺は信じないぜ。
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