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Many Classic Moments17 (攘夷高新)

*まとめ*






 そんなこんなで、先頭が晋助、中間が桂さんもっさん、一番後ろ(殿)が銀さんと新八くんの四手の部隊に分かれて行軍して行く攘夷たちですね。行き先はまだあるからギリギリで心は折れないとは言え、これは辛そうだけどね。だって雨が降ってるってことは足元もぬかるんでるし、元々皆さんの体力も限界まできてるし(晋助と銀さんと桂さんともっさん除く)、所々で強襲してくる残党狩りの幕軍連中も倒さなきゃいけないし、辛い行軍ですよ。特に先陣切ってる鬼兵隊ね。中でもその総督だよね。ふふ。

銀さんと新八くん率いる怪我人最多の後方部隊は、なんだかんだ言ってても敵が襲ってくることは少なかった。けどそれもそのはずで、途中で中手から少し下がってきた桂さんが、


「銀時、そっちの守備はどうだ?新八くんも大丈夫か?」

などと聞いてきましたので、銀さんも頭をぽりぽり掻きながら、

「守備もクソもねーよ。たまに出てくる敵は俺が斬ってる。でも思ったほど奴さんも居ねえな」

答えましたらば、桂さんはふふと少し笑ってね。

「ああ……まあな。先頭でどこかの総督が大暴れらしいぞ。道理で俺たちにまで御鉢が回って来ない訳だ」


優しく晋助の活躍を告げ……って……や、やだもう、晋助ったらやーだー!!!!めっちゃ張り切ってんなお前!!無理言って皆を付き合わせてるからってもう、しかも新八くんの体力も気にかけてたからってもう、すごい張り切りようだよ!敵は全部俺が斬るっていう勢いなのに、誰にも何も言わないのがどこまでも晋助クオリティーだけどね!


鬼兵隊の面々もね、そんな鬼気迫る総督には羨望の眼差しを向けますよ。


モブ6「す、すげー……今夜の総督マジですげー……今の何だよ?速過ぎて剣先とか見えねーよ。もう鬼なんてもんじゃねーわ、マジ神ってるわ(ヒソヒソ)」
モブ7「だなあ。あんだけ昼間も切った張ったしてんのによ、どっこも疲れた感ねーよ。総督ってやっぱすっげえなあ(ヒソヒソ)」
モブ6「かっけえェェェ……俺もあんな風になれたら、故郷に残してる彼女に大見得切れんだけどなあ(ふう)」
モブ7「いやいや、てめえなんかまだまだだよ。でも良かったじゃねーか、鬼兵隊に入れてさ。今度彼女に手紙送る時でもさ、総督と写真撮ってもらえよ」(←アイドルか)
モブ6「えええ無理だよォ、彼女が総督に惚れたらどうすんだよ?絶対ェ惚れるよ、ヤバイって、男の俺だって総督に惚れそうなのによォ(照れ照れ)」(←何その見解)
モブ7「確かに!悪ィ悪ィ、あはは」
モブ6「ったくてめえはもう、ふざけんなよォ」


──って、やっぱりこいつら頭悪ィィィィ!!さすが私の頭の中で作り出された鬼兵隊モブ達だけあるわ!(確かに)

何で晋助にナチュラルに写真頼もうとしてんだこいつら、何でそれを故郷の彼女に送ろうとしてんだよもう、何でさもう、てかそこまで鬼兵隊の皆に慕われてて良かったね晋助ェェェ!!(ぶわっ)(どこ視点の涙)

まあ晋助なんでね、こうやって背後で噂されてる事とかつゆほども気にせず、何も言わずにザックザックと敵を斬るだけだけどね。
てかお前も結構な体力オバケですよね、銀さんに負けず劣らずだよね晋助は。知ってたけどね!(いい笑顔)



 でもそうやって行軍してたら、今し方きた天の利。今ようやく雨も止み、雲に隠れてた月もすうっと顔を覗かせた。

 散々に濡れた草茂みからは雨上がりの匂い。見渡した志士達の面々も疲労がピークに達してる模様。けどももう雨には打たれてないので、徐々に足元も良くなるだろう。何より心が打たれない。冷たい雨に心まで晒されない。

だからここで少し休むかと、いくら晋助だって横手にある林を指差しましたよ。とは言え、ほんの30分程度だけどね。朝までここに居るのは危険すぎる、との総督判断。

しかし今は一刻も早く移動するのが先決だけど、疲労の回復も大事だと、さっきの新八くんを見てたら晋助にも分かったのですよ。色んな志士が居て色んな想いを抱いてる攘夷'sだけど、己の意思を通す事だけをしてりゃいいってもんじゃないとも分かった。晋助もね。
好きな子から学んでいくことも多いよね、何しろ十代だからね。

その伝令が新八くんと銀さんの居る後方にまで伝わってきたのは、十分後ほどでしょうか。聞いた途端に、あーようやく休めるっとばかり、木の幹に背中を押し付けて座る銀さんです。


「やっべマジ疲れたわ。あーしんど、あー板チョコ食いてえ、新八持ってねえ?」
「持ってないですよ、でも……あ、飴なら持ってました。イチゴ味ですけど。どうぞ、銀さん(ゴソゴソ)」(袂探ってた)
「マジでか。あんがとな、新八」

新八くんに飴を貰って舐めてるうちに、さすがの銀さんにだって眠気が襲ってきますよ。こくこく船を漕いでる銀さんを隣りで見てる新八くんも、ほんのり優しいお顔で笑って。


「眠たいんですか、銀さん」
「んー……少し」
「寝てもいいですよ。ほんの少しだけですけど。僕は起きてますから」


新八くんはね、銀さんがいつもの倍神経を使ってるのを隣りで見てて分かってるからね。だって後方は怪我人も抱えてるし、新八くんだって疲れきってるし、殿とは言えどもマトモに動けんのなんて銀さんだけでしょ。だから銀さんは全方位に気を配り、目をやり、いつも以上に神経すり減らしてたの。いつだって奇襲やらの大暴れを十八番としてる若い銀さんだから、そんな敵との神経衰弱に疲れないわけない。特に新八くんには丸分かりなんです、何たって銀新ですし。

だから新八くんの肩に少しもたれて、

「バカお前、眠くねーぞ俺は。全ッ然平気だからね、マジ眠くねーし。新八とは違うし」

などと言いながらも(うるせえ)、隣りにある新八くんの体温には安心してぐーって寝こける銀さんですよ。ぐーすか寝てる白夜叉さんカワイイ。

そしたらね、二人が寄りかかかる木の元へサクサクと草を踏み分けて近付く足音がある。銀さんにつられてうつらうつらしてた新八くんがふと顔を上げると、

月明かりが照らすその黒い戦羽織、左腰に下げられた長刀、淡く紫がかって見える黒髪、翡翠を沈めたような不思議な光彩を放つ二つの眼、そして決意と覚悟の証のようにぎゅっと結ばれた白い額当て、

その額当てから伸びた白紐を風にひらりと遊ばせ、


「……オイ、平気かお前ら」


──って、晋助がもう来ちゃったよ!?どんだけお前、どんだけ新八くんが恋しいんだよ!どんだけ心配してたの!キャアアア愛!写真、写真撮らなきゃ!こんな晋助は連写しなきゃ!(パシャパシャパシャパシャ)(お前もか)

もー晋助ったらね。鬼兵隊とは休憩場所も違うだろうに、わざわざ後方まで様子を見に来てるという。そしたら晋助を見た新八くんはピシッと姿勢を正し、

「あっ、高杉さん。お疲れ様です!こっちは大丈夫です、銀さんも付いてますし。鬼兵隊はどうですか?」
「ああ……なに、鬼兵隊はいつもと変わんねェよ。いつも通りに敵斬ってる(フッ)」(←主にお前がな)
「わあ……凄いっスね、さすがですね。鬼兵隊の皆さんってすごい!総督の高杉さんも!(キラキラ)」
「……フン。当たり前だろうが」

新八くんに褒められた晋助は凄えドヤってますね。ドヤり過ぎですよね、だって内心はめっちゃ嬉しいんだよ。言わないだけでね。


でも新八くんの肩に寄りかかって眠る銀さんを見て、

「銀時はどうした。さすがのバカでも疲れてんのか」

なぁんて皮肉げに笑う晋助だったが、

「ええ……銀さんも疲れてるんですよ。だってほぼ一人で僕たちを護ったりしてるんですよ。疲れない訳ない……」

心配げな新八くんが銀さんのふわふわの天パを片手でよしよしってしたりしてるから、銀さんも寝てるけどもう本能で新八くんに頭をぐりぐり擦り付けたりしてるから、本能で新八くんの体温を独占してるから、しかも新八くんはそんな銀さんを決して突き放さないし(銀新のいつもの光景)、晋助だってそれには俄然嫉妬心が駆られましたよね。何でこいつら自然とこういう感じになってんだよ(イラァ)と思ったよね。疲れてたけども、苛立ったわ。

いやそりゃ思うよ、こんな銀新を見た一般の奴らは皆最初は疑問に思うでしょ?そんで最初は引くんだよ、銀新のある意味の節操のなさにね、皆してね(そんな)

そんで苛立った総督はと言いますと、いきなり屈んで、新八くんにチューする。木の幹にドンって手ェ着いて、手どころかもう拳着いてから、おもむろにキスする総督。

「あ、高杉さ……んんっ」

新八くんはびっくりして一瞬晋助を引き剥がそうとするけど、晋助の力が強くてなされるがままです。そして唇を離して、

「や、やめろってばアンタはいつも……銀さんがいるのにもう」

なんて抵抗しますが、マジ口だけな!だって目を逸らしてるし頬は赤いし、晋助にまだ幹ドンされてますしね。

「うっせェよ、何だこいつは。何でテメェの肩を自然と借りてんだよ、銀時は。テメェも何でさせるがままになってやがる」
「いやだって銀さんと僕だし……」
「理由になってねェ」
「や、待っ……だから銀さんが寝てますから、あの」
「うるせえ」

両腕の囲いの中に新八くんを閉じ込めたまま、晋助は何回も新八くんにキスする。新八くんは横目で銀さんを気にしつつ、目元がほんのり朱に染まった色っぽいようなお顔で晋助にキスされております。銀さんが起きやしないかとハラハラしてるんだけど、やっぱり晋助を突き放すこともできないのです。だから結局は晋助が落ち着くまで、晋助の好きなようにさせています。

何回も何回もキスしてたら晋助もその内に落ち着いたらしく、ふうと息を吐いて新八くんの横にどっかと腰を下ろす。そんで新八くんの肩をぐいと抱き寄せて、寝てる銀さんから少しでも離しておく(DTの抵抗)

「もう……ほんとに高杉さんったら」

新八くんは傍らに腰を落ち着けた晋助を見て、ふふっと微かに笑う。でも雨が上がったとは言え、新八くんの着てる着物じゃ夜の林の中では寒そう。現に風が吹き抜けた途端、ぶるっと震える新八くん。
雨に濡れた着物は少しずつ乾いてきてるとは言え、動いていない今はどうしても体温を奪っていくしね。

「寒いか?」
「あ、少しだけです。大丈夫です。もう雨も止んだし……」

晋助に尋ねられ、新八くんはすぐ首を振った。だけど晋助はおもむろに自分の黒い羽織を脱ぎ、新八くんの肩に掛ける。

「着てろ」
「えっ」

びっくりしたのは新八くんです。そりゃあ晋助の羽織だから上質な織物で作られていて、見た目より軽いし内側にもいい布地使われてて暖かいし、決して見た目だけではない機能性にも優れているのだろうけども。いや見た目も大事だけどね、晋助のことだから。むしろ見た目がいちばん大事だけどね(ん?)
何たって晋助は戦でも格好付けたいからさ、帷子とか防具の類いも付けてないんだろうし(晋助はどこまでも晋助)

自分の肩に掛けられた晋助の羽織を見て、新八くんはそりゃあ慌てる。


「でも高杉さんが、これ高杉さんのものなのに、」
「俺ァいい」
「でも」
「いいっつってんだろうが」
「はい……」


けどどう返そうとしても晋助は頑として受け付けてくれなかった。だから新八くんも晋助の羽織を肩に引っ掛けたまま、しばらく頬を染めて晋助の肩に寄り添ってました。胸がきゅんと狭くなるような、不思議なんだけど温かな気持ちで晋助の横顔を見てた。


「(高杉さん……昼間は言い合って喧嘩別れまでしたのに、僕に優しくしてくれる。何で……?)」

晋助のことだから言葉は足りてないし、本当に不器用。けどぶっきらぼうなんだけど、すごく分かりづらいんだけど、今自分をこうして気に掛けてくれた事は分かる。すごく。だって肩に掛けられた羽織が、それを証明してる。

そう考えただけで、新八くんの胸はきゅうぅと締め付けられる。どきどきして、切なくなる。だから晋助の羽織をぎゅっと手繰り寄せて、新八くんはしばし黙ってたのです。

さっきまでは寒くて震えていたくらいだったのに、今はもう身体中が熱くてたまらない。この熱がどこから来るかも分からないのに。この想いが何なのかさえ、分からないのに。


なのに。




「(僕……高杉さんのこと、)」


この胸を焦がす想いが、何なのか。誰にも抱いた事のないこの気持ちを、どうして晋助だけに持ったのか。

雨上がりの月が優しく照らす夜の底で、今ようやく掴み始めた新八くんなのです。





*続く*
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