「あれー? 君、会ったことあるよね?」

ドウッとなぜか迫力をだしながら、ジッと隆也父が元希をみつめてくる。
理由はわからないが、ドキリとするものを感じる元希。
元希は心の中で一時に、いろいろな記憶を思い出した。

いた。

確かに。

シニアの試合んときとか、よく外野からデカい声でゲキを飛ばしてた人。

気の優しいシニアの監督が、結構、気をつかってたオジサン。


正直、苦手だった。


試合が終わった後は、よく隆也をつかまえてダメだししてたけど、それってあんにオレにたいしてのダメだしでもあった。

オレはいつも、隆也と親父さんから5,6メートル離れたところからそれを聞かされていた。

隆也はオレからだされていた無理難題を全部飲んでいた。だから、親父さんの意見がいくら正しくても、本当は自分もそうしたかったと思っていても、それを実行しなかった理由を言わなければいけないとき、アイツは、オレが聞いているのもわかっていて、試合中、オレがじゃけんにアイツの意見を聞き流したことは無理をしても隠した。

隆也はオレと親父さんの板挟みになって、なんだが歯切れの悪い説明をする。

ますます親父さんが隆也のこと問い詰めて、結局、隆也が逆ギレして終わることがあった。

ぶっちゃけ、隆也がかわいそうだった。

といって、オレはアイツに優しくなれたわけじゃない。

(うわ−、すげぇトラウマ)

鼓動が無駄に早くなってくるのを感じる。

嫌な記憶だからいままで忘れていたんだ。
思い出したくなくて、考えないようにしていたものが突然、蘇ってくる。