あれ、昨晩、書くとか言ってたですか、私…。寝落ちしました…。
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「そう、ですね…」
元希は隆也の母の勧めに考えだした。
時計を見る。
夜の8時を少し過ぎたところ。
「帰り道が、ちょっとよくわかんないんですけど…」
「ああ、そうよね。駅前まで行くバスが、うちからすぐ側にあるんだけど。乗っちゃえば駅まで数分かな。榛名君の駅ってどこだったっけ?」
元希が駅名を言うと、隆也の母は安心した顔になる。
「すぐ隣の駅ね。じゃあ、近いわ」
「そうっすね…」
確かに、シニアの頃、同じチームにいたくらいだから、澄んでる場所だってそう遠いわけでもない。けれども、隆也抜きで自分だけ阿部家の食卓に着くのも、やや辛い。
ちらと、自分に背を向けて眠り始めた隆也の姿が脳裏に浮かぶ。
「…やっぱり、オレ、帰ります。隆也によろしく伝えてください」
「そう? わかったわ」
母は少し残念そうにしたが、強いることはなく笑顔になった。
「久しぶりに榛名君が見れて嬉しかったわ。これからも活躍してね」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ、ちょっと、榛名君のところにお礼の電話だけかけてもいい?」
「ええ。あ! じゃあ、オレの携帯使ってください。すぐつながりますから」
元希はそう言ってスマホを取り出すと、自分の親につなげた。
軽く事情を話し、隆也の母に渡す。
隆也母が、元希の母親と話しだすと、懐かしさがあったのか、妙に会話が盛り上がり、少々時間がかかった。
元希は手持ち無沙汰になり、なんとなく近くにいる隆也の弟、シュンと目を合わせる。
といって、パッと話題も浮かばず、お互い言葉に詰まっていると、突然、玄関のチャイムが響いた。
「あ、お父さんかも」
シュンがそう言って玄関に向かう。
なんとなく元希も顔だけ玄関にだすと、勢いよくドアが開いて大きな声が響いた。
「おーい、帰ったぞ! 今日は大事な試合だからな。どうだ、シュン、お前も一緒に観るだろ?」
ドンと存在感のある男が愉快そうな顔で中に入ってきた。
そして、ふと、息子越しに別の男子がいるのを見て、目をくりっとさせた。
「おう。お客さん?」
元希はその一連の父親の動きを見ながら強く思う。
隆也は、父親似なのだ、と。