コメントを頂き、調子に乗りまして書いてみましたドライブ小ネタです。
読み流してやってください。
三橋坊ちゃんがついに仮免をとりました。
執事の阿部と栄口は彼らのお茶の時間にその話をしています。
「とうとうやったね。廉坊ちゃまもそうとう努力なさったからね」
「ああ。まさかあいつが取れるとは思わなかったけれどな」
「阿部!?なんだよ、坊ちゃまの前では『あきらめてはいけません、あなたなら必ず取れます』とあんなにいっていたじゃないか」
「そういうのが執事の義務だろう?」
「阿部はひどいヤツだよ…」
「しかし、取れたのは喜ばしいことだ」
「さらっと紅茶とか飲んでるし」
「ん?」
「べつに」
「まあ、これであいつをいちいち車で送り迎えしなくてもよくなったわけだ」
「そんなこといって。本当はさびしくて仕方がないくせに」
「なにを根拠にそんなことをいえるんだ?」
「だって、阿部の寝言を聞いてたらそう思うよ」
「寝言?」
「やっぱり覚えてないんだ…そうだろうと思ってたけどさ。阿部は明け方とか寝言が酷いんだよ。かなりはっきりした言葉でしゃべるし、いうことといったら坊ちゃまのことばかり」
「嘘だろう!?」
「こんなところで嘘ついても仕方ないじゃないか。しかし、『廉、廉、』っていいながら枕を抱きしめるのはやめろよな」
「………ウソだ」
「いや、オレは別にいいけど、身分違いだって、うん、応援してるよ」
「勝手に話をまとめるな!」
「でも、廉坊ちゃまが免許を取りたいといいだしたのも、阿部の運転している姿にあこがれてだろう?もう相思相愛、ラブラブ〜ってやつ?」
「おまえ、そういうことをいうヤツだったのか」
「だって、素直じゃないのをみてるとなんかつつきたくなるんだよね〜」
「隠れSめ。さすが天使と悪魔をもつ男」
「…なんだよそれ」
チリンチリン
「ん?」
「あ、噂をすれば。廉様がお呼びだよ」
「ふ、ふん」
チリリン チリリン
「ほら、早くいかないと」
「ちっ」
******
「お待たせしてしまって申し訳ございません。どうなさいました?」
「あ、べくん、ごめっ…せかしたわけじゃないんだけど。お、お茶、だった?」
「いえ。なにをしていようと坊ちゃまのところに駆けつけるのが執事の務めですから」
「ごめんなさっ、でも、オレ、あべくんに、早く会いたくて…」
「廉様!」
「はいっ!?」
「その『阿部君』はおやめくださいと何度も申したはずですが?」
「うっ…あ…」
「私のことは隆也とお呼びください」
「タカヤ、くん」
「くんはいりません」
「タッ…カヤ」
「私は、タッカーヤではございません!」
「タッ、タカヤ!」
「よろしいでしょう」
「うぐ」
「それで、ご用は?」
「あの、オレと、一緒に、ドライブ…ドライブしよう」
「廉様と?」
(こくこくこく!)
「…しかし、まだ正式に免許を取得なさったわけではないでしょう」
「ここ、みて!」
「これは、教習所の学科教本?ええと、ここですか?『仮免許を受けた人は次のいずれかの人を運転者席の横に乗せて、その指導を受けながら運転しなければなりません』。なになに、一番は教官、二番目は…」
「『その車を運転することのできる第一種免許を3年以上受けている人』…つまり、車の免許を三年以上もっている阿部君だ」
「隆也です」
「オレの助手席に座って練習を手伝ってください。ね?お願い!」
「お、お願いですか…?」
(こくこくこく!)
「いや、でも、やはり安全を考えると、おとなしく教官とだけ走っていたほうが…」
「お願い、隆也」
(…くっ)
「たか、や」
(ちぃ!)「…わかりました、一回だけですよ?」
「うお!」
「ではいまから安全なコースを選びだしましょう、坊ちゃま、このあたりの地図を探しにゆきましょう」
「うん!」
こうして二人のスリリングなドライブデートが始まったのでした。後半へ続く。