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*雪光(小話)

暫く逢っていなかったから、少し不安定になっていたのかもしれない。
以前なら少し逢わなかったところでこんな気持ちになることはなかったのだ。
ただ、少し逢わない間に自分の知らないところで大きな変化が起きていたということ。それを知らされていなかったこと。
知らされないということは、相手にとっては大したことではないということなのだろうが、正直、少し焦りを感じたのだ。

「会ったのは春前ですよ。言っていませんでしたか?」

小首を傾げて、少し考えながら雷光は雪見の質問に答えた。
二人は所謂「恋人同士」というものなのだが、そういった関係の割りにはあっさりしているなと雪見は思っていた。
暫く逢えなくても構わないし、特別な日に気合いを入れてお祝いをするわけでもない。
互いの仕事の関係と五年の付き合いが二人をそうさせてしまったのだろうか。
それでも「恋人同士」という繋がりがなくなることはなかった。結局は互いを信じていたし、離れていても互いを忘れることはなかった。
信じていたはずなのだ。

「そんなこと聞いてねえよ」

そうだ、聞いていない。
恋人が、自分以外の男と知り合っていたなんて。
先日初めて会った黒髪の少年は、雷光が連れてきた。名は「目黒俄雨」と言ったか。
彼は雷光をとても慕っていて、雷光も俄雨を大切に思っているようだった。
その光景を目の当たりにして、感じた感想。二人の関係は「親友」というものなのだろう。
だが、自分はその少年の存在を知らなかったのだ。
「恋人同士」なのに、だ。
身の回りに起きたことすべてを報告しろとは言わない。寧ろそれは自分が一番嫌っていることだから相手に強制もしない。
けれど、あの少年はいつから雷光と知り合い、どれだけの間雷光と行動を共にしてきたのだろう。
自分と雷光は数か月逢っていなかった。あの少年の存在を知らされる前に一度逢ったこともあった。
けれど、彼はあの少年のことは一言だって口にしなかったのだ。
春前、と言った。今は九月。約七ヶ月も前から雷光の隣にいた少年の存在を自分がついこの間知ったのは、「恋人同士」という身としてはなんだか悔しかった。

「言う必要はないと思ったんです」

明らかに苛立っているというのが見て取れるであろう自分を前に、雷光は怯える様子も気を遣う様子も一切なく、さらりと一言言ってのけた。
言われてみればそうだ。離れたところで相手が友達を作っていたとしても、それは相手の事情なのだ。どうして自分がそれに対してとやかく言うことができようか。

「いけませんか?」

「別に、いけないわけじゃねえよ」

「でも、先輩は怒っています」

ふふ、と笑って、雷光は読んでいた雑誌を閉じた。
何故だろう、とても楽しそうに見える。いや、実際楽しんでいるのだろう。
自分が苛々するなんてことは珍しいことではないのに、何が楽しいのか、雷光は面白い玩具でも見つけたかのように笑っているのだ。
何年も一緒にいるはずなのに、相変わらずこいつが楽しいと思うものは理解ができない。

「嫉妬してるんですか?」

本当にこういうところだけは勘が鋭いと思う。
自分で思っていたけれど認めたくなかった「嫉妬」という感情をこいつはいとも簡単に当ててしまった。
遠まわしに「好きだ」と伝えても気づかないくせに。気付いてほしい感情には鈍いのに、気付いてほしくない感情には鋭いのだ。
こいつは本当に嫌なやつだ。
そんなところもひっくるめて好きになってしまった自分に非があるのだろうと自嘲して、雷光をそのまま座っているソファーに押し倒した。
二人分の体重が掛かったソファーはギシリと軋んだ音を立てる。
こんなことも、これだけ一緒にいれば珍しいことではない。急に押し倒されても雷光は怯えることなく、寧ろ挑発的な表情で自分を見上げてくるのだ。

「図星ですか?」

「そうだと言ったら?」

「先輩も可愛いところがあるんだなぁ、なんて思います」

「何が可愛いだ。あのテンパに、数か月お前を独り占めされてたと思うと何か苛つくんだよ」

本当に可愛い人ですね、なんて心底楽しそうに笑いながら、雷光が首に腕を回してきた。
雷光がこんなに近くにいると、本当に調子が狂ってしまう。普段なら言わないようなことが、どうしてか自然と口から零れてくるのだ。
まるでこいつが、何か変な術でもかけてるんじゃないかと思ってしまう。
その術は暫く逢わなければ逢わないほど効果が強いものなのかもしれない。
そこまで考えて、馬鹿馬鹿しい、と心の中で苦笑した。

それから目を閉じた相手に吸い寄せられるように、深い口付けを落とした。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
嫉妬する雪見の話。
雪見は滅多に嫉妬なんてしないと思うんだ!
別に雷光が何しようと雷光の勝手だろとか思って基本放置してそう。
そんで野放しにしてたらいつの間にか雷光が自分の知らないところで俄雨を拾ってしかも思いのほか仲良くなっちゃってたりしてて、若干焦りを感じてしまったみたいな。
自業自得でそういう結果になってしまったから、自分が嫉妬しているということを認めたくなかったりしたらいいじゃないか。でもそれを雷光に指摘されて開き直って「あーもう俺はお前のこと独り占めしたいくらい好きなんだよ!」ってぶっちゃけちゃったりしたら可愛いじゃないか雪見!
そんでこの後学習した雪見は野放しにするのはやめて、ちょっと首輪つけるくらいまで雷光のこと束縛するようになったりしたらいいなーという妄想。俄雨にいつも突っかかるようなこと言うのはその表れだったりしたらいい(笑)
ちなみにこの後は勿論エロだz(殴)
雷光は相手が雪見だったらどんなタイミングで襲われても余裕な感じがしてしまうんだがどうか。
でも暫くしたらその余裕もどこかに行ってしまうくらい雪見に翻弄されまくってしまえばいいさ!ああもう乱れる雷光ってほんとえろいよね!!うあーエロ萌える!!

なんかもうすんません。

*小話(壬光)

「ねえ、キスしてよ」

不意のおねだりに驚いたのか、おねだりの内容に驚いたのか、隣に座ってのんびりとお茶を飲んでいた恋人が噎せた。
それから周りをチラリと見るように目を動かしてから、耳元で小さく囁いてくる。

「ここ、人がたくさんいるんだよ…?」

耳元で囁いているから、彼の顔がよく見える。
恋人、雷光の顔は、先程の壬晴の言葉のせいか少し赤くなっているように見えた。いや、実際恥ずかしくてたまらないのだろう。
それを指摘してやるともっと面白い反応を彼はしてくれるのだが、今はそれどころではない。
とにかく、自分のおねだりを聞いてほしい。

「だから、して欲しいんだよ」

何でもないことのように笑って見せる。
実際、二人が今いるのは人々が行き交う公園。
雪見の部屋で夕飯を作ることになり、壬晴と雷光の二人で買い物に出掛けたのだ。
その帰り、少し休みたいと壬晴が言ったために、二人は暫くこの公園のベンチで休んでいた。
時刻は既に夕刻。下校中の学生や犬の散歩をしている人など、先程からひっきりなしに人が通っているというのに、何故こんなことを言うのだろう、と雷光は内心焦っていた。
しかも壬晴の方からしてくるのではなく「して欲しい」という要求なのだから意図がわからない。

「キス、なら…もっと人がいないところでしてあげるよ。だから今は…」

「ここじゃないと駄目」

真剣な顔で見つめられると、「嫌」とは言えなくなる。言ったところで恐らく聞いてはくれないだろうが。
再度チラリと周りを見れば、笑いながら歩いている学生の集団や自転車で走り抜けていく人、全員でないにしろ、気が付いたようにこちらに目を向けてから通り過ぎていく人は何人かいる。
そんな中でキスなんて…とても自分にはできる勇気がない。

「壬晴君、お願いだから…」

「してくれないと、雷光さんの事嫌いになっちゃうよ?」

雷光の懇願を遮るように言い放たれた壬晴の言葉が、雷光の心にちくりと刺さる。
こうして人の心を掻き乱すのが彼の得意技なのはとっくに理解しているはずなのに、どうしても「嫌い」の一言には慣れなかった。
人前でキスをするか、壬晴に嫌われるか。
嫌われるのだけは、嫌だ。

「……っ」

ぎゅっと目を閉じた雷光の顔が一瞬だけ間近に来る。それはすぐに離れていってしまって、唇に柔らかいものが触れた感触を微かに残していた。
ああ、キスしてくれたのか、と少し遅れて理解した。

「…っこれでいいだろう?」

真っ赤になりながら言うなり、雷光は慌てて周りを見回す。
目尻に涙が浮かんでいるのは羞恥の為か。
少しからかいすぎてしまったかと壬晴は苦笑して、離れていってしまった雷光の顔を引き寄せた。驚いたように目を見開く雷光をよそに、雷光の目尻に浮かんでいる涙を舐め取ってやる。

「…っ壬晴君!」

突然の壬晴の行動に、思わず雷光は声を荒げてしまう。その声に何事かと通行人が数人、こちらを振り向いては通り過ぎる。
そんな周囲の反応に気づいた雷光は、更に赤くなって壬晴から少し離れた。
更に間に遮るように買い物袋を置かれてしまい、警戒されてしまっているのが見て取れた。

「そんなに恥ずかしかった?」

俯いてしまった彼に問いかける
当たり前、と呟いたのが聞こえた。
その答えに、壬晴は何か引っかかってしまう。
そうだ、雪見の部屋にいた時から、ずっと何かが引っかかっている感じがする。
その引っかかった何かが、自分が雷光に「キスをしてほしい」とねだった原因でもある。

何が違うんだろう。

「雪見さんには人前でもベタベタするのに?」

引っかかっていたもの。
それは雪見と自分に対する彼の態度の違い。

壬晴の言葉に、雷光が俯いていた顔を上げた。その顔は少し驚いているようで、まさに今、壬晴に言われて気付いたと言わんばかりの表情だ。
それから少し考えて口を開く。

「……そんなに、私はベタベタしていたかい?」

「してた。ケーキ、あーんしてあげたりとか」

「してた…っけ…?」

本気で考え込んでいる彼の様子を見ると、ああ、無意識でやってしまっているんだなと理解した。
雪見もそんな雷光の行為を自然に受け止めていたから、恐らくこの二人にとってはごく普通の行為だったのだろう。
五年もの歳月が二人をそこまでさせるのかと考えると、自分達はまだ出会って数か月しか経っていない。差は明白だった。
仕方ないと割り切ってはいても、やはりその時間の差は悔しい。

「もしかして、それでやきもち妬いてあんなことを…?」

今、壬晴の意図がわかった。そう言いたげな表情で雷光が問いかける。
この人は本当に鈍いな、と思う。
自然と呆れたような、よくわからない笑みが零れてしまう。それと同時にため息を漏らすと、遮るように置かれていた買い物袋を自分の背後に置き直して、無理矢理雷光の腕を引っ張った。

「壬晴く…んっ!?」

引っ張られた反動で体が前に倒れると同時、前にいた壬晴の唇と自分のそれが再度触れ合う。
今自分達がいる場所がどこなのか改めて考えた雷光は慌てて離れようとするが、いつの間にやら後頭部に回されていた壬晴の手によって逃げられるどころか、更に口付けは強く、深くなっていく。

「んん…っふ、ぁ…っ」

奥に逃げていた舌を捕まえて絡ませる。通行人が数人、驚いたようにこちらを見ては慌てて通り過ぎていくのが横目で見えたが気にしない。
彼は自分のものなのだと、誰でもいいからとにかく見せつけてやりたくて仕方なかった。
暫く舌を絡ませ合ってから離れれば、雷光は今にも泣きそうな表情で真っ赤になって呼吸を整えていた。毎度ながら、この時の彼はとても色っぽいと思う。

「雷光さん、顔真っ赤」

「壬晴君が…こんなところでそんなこと、するから……」

「ふふ…ごめんね」

小さく笑いながら謝れば、まだ赤い顔のまま軽く睨まれてしまった。怖さなんて微塵も感じられず、寧ろ可愛いと思ってしまう。
人が見ていたことを知らせれば本当にこのまま泣き出してしまいそうな気がするから、敢えて黙っておくことにした。

「でも…俺にやきもち妬かせる雷光さんがいけないんだからね」

壬晴の言葉に何か言いかけた雷光の唇をまた塞いで、すぐに離す。
買い物袋を持って立ち上がってから「さあ、帰ろう」と雷光に手を差し伸べれば、不意打ちのキスのせいか俯いたまま、彼は差し出された手を取った。









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それから暫くの間、雷光はその場所に行けなくなった上に雪見にも近づかないようになってしまったりすればいいさ!
雪見は急に雷光が甘えてこなくなったから、自分が知らない間に雷光に何かしてしまったんじゃないかと変に心配してたらいい(笑)
この間日記で語ったネタを文にしてみた。
壬光って初めて書いたけど雷光らしさを残すのが難しい…!!どうしても壬光は雷光が壬晴に翻弄されまくってあたふたしちゃうのばかり想像してしまうからなぁ…何もない時は普通に雷光なんだけどな!あのお兄さんお兄さんしてる雷光。
お兄さんお兄さんしててもどこか抜けてるのが雷光だと思います。
その抜けちゃってる部分で壬晴をハラハラさせてしまうようなことをしてしまうのだといいと思います(笑)
まあ主に雪見と変な漫才やっちゃったりな!何か雪見に甘えちゃったりな!でも二人にとってそれは5年間一緒にいた中で身についてしまったものだから、壬晴に「もう雪見さんにベタベタしちゃダメ」って言われてもまたすると思います。学習能力がないとかじゃなくて何かもう習慣になっててどうしようもなかったりすればいいよ!(*´∀`)
そんでその度「雷光さんがいけないんだからね」ってお仕置きされてしまえばいいぜ!

とりあえず自分の中の壬光はこんな感じだなんだ。一番雷光が別人になってしまうカプだな壬光!

*俄光(小話)

「ただいま帰りました」

陽が間もなく沈む頃、俄雨は帰るべき部屋の扉を開けた。
橙色の陽の光が差し込むリビングが玄関から見える。
ついこの間まではこの時間でもまだここまで陽は傾いていなかったはずなのに、この時期になると陽が沈むのは本当に早いと思う。
脱いだ靴を揃えてから、ふと、違和感に気づく。同時、妙に静かな室内に俄雨は首を傾げた。
この部屋にはもう一人、同居している自分の憧れの人がいる。
いつもなら自分が帰ってくれば「お帰り」と温かい笑顔で迎えてくれるその人が今日はなかなか来ない。
今日は表の仕事も隠の仕事もないし、久しぶりに家でのんびりするよと言っていたから、確かに彼はこの部屋にいるはずなのだが。

「雷光さん?」

名前を呼びながらリビングに入って、俄雨は慌てて両手で自分の口を塞いだ。
リビングの小さなテーブルに突っ伏すようにして、心地良さそうにうたた寝をしている雷光がいたからだ。
読んでいる最中に眠ってしまったのか、雑誌が顔の下敷きになっている。
自分が部屋に入ってきても気付かない程熟睡している彼は、よほど疲れていたのだろうか。

「そういえば、ここ最近任務続きだったなあ……」

任務の為に遠出をしたこともあった。休む間など、殆どなかったはず。
それを考えると、ここまで無防備に彼が熟睡してしまうのも仕方のないことだろう。俄雨は微笑を浮かべてから、慌てて隣の部屋から毛布を一枚持ってきた。さすがに、この時期は部屋の中にいてもかなり冷える。
眠る雷光の背中に毛布を掛けてやって、これでひとまず大切な人が風邪を拗らせる可能性は低くなっただろうと安堵する。
普段ならここまですれば確実に目覚めるだろう雷光だが、それでも規則正しい寝息が聞こえてくるのみ。
顔を覗き込んでみれば、完全に安心しきった表情で眠り込んでいる。
もしここで敵が襲ってきたりしたら、彼は目を覚ますのだろうか。
そんなことを考えながら、俄雨は雷光の髪に手を伸ばしていた。
さらりと指の間から零れ落ちていく桃色の髪から、微かに感じるシャンプーの香り。このまま顔を近づけていたら、自分が何をしでかすかわからなくなってしまいそうだ。
そう頭ではわかっているのに、体はどうして言うことをきかないのだろう。

今なら、何をしても彼にはわからない

そんな考えが頭をよぎって、それが自分にとって善か悪かを判断する前に体が動いてしまった。
顔を近づける。一瞬だけ、自分の唇と彼の唇が触れた。

「――っ…!!」

そこまでしてようやく自分が何を考えていたのか自覚して、俄雨は慌てて雷光から飛び退いた。
先程自分がした行為に気づくことなく雷光は変わらず寝息を立てているが、それを少し離れたところで見つめる自分の心臓がどくどくと強く、早く鼓動してるのがわかる。

「ぼ、僕は何をやってるんだ…雷光さんの寝込みを襲うなんて最低なこと…!」

先程の考えがよくないことだと今だったらよくわかるのに、何であんなことをしてしまったのだろう。
一人葛藤していると、今まで微塵も動かなかった雷光がもぞもぞと動き始めた。小さく唸ってから、ゆっくりと目を開ける。

「……俄雨…?」

「ら、雷光さん…!?」

さっきのキスで起こしてしまったのだろうか。
とても申し訳ないことをしたと思いながら、目覚めた雷光にどう反応したらいいかわからず俄雨はただ慌てふためいてしまう。
心臓がさっきから全然大人しくならない。顔もきっと、いや絶対真っ赤に違いない。
この静かな部屋だ、鼓動が聞こえてしまいそうで俄雨は自分の左胸をぎゅっと抑える。顔も俯いて見られないようにする。
そんな俄雨の様子を見て、体を起こした雷光は小さく小首を傾げた。「どうしたんだい?」と言い掛けたと同時、雷光の肩に掛っていた毛布がばさりと落ちた。
落ちた毛布を拾い上げて、雷光は再度小首を傾げてから何かを思いついたように口を開いた。

「…これ、俄雨がかけてくれたのかい?」

「え、あ、はい…!風邪をひかれるといけないと思って…」

「全然気付かなかった…相当深く眠ってしまっていたようだね。ありがとう」

いつも通りの穏やかな笑みを浮かべて、雷光は毛布を先程と同じように肩に羽織った。それからまた、眠そうに大きく欠伸をしてテーブルに体を傾ける。

「また眠るんですか?」

「ん…夕飯が出来たら、起こして…」

最後まで言い切る前に、また規則正しい寝息が聞こえてくる。
自分を前にして、なんてこの人は無防備なんだろうと毎度思ってしまう。さっきのように愛しいあまり気持ちが暴走して、何をしてしまうか本当にわからないのに。
いつの間にか大人しくなっていた左胸から手を離して、俄雨はもう一度雷光に近づく。雷光の表情が先ほどのようにうまく確認できなくて、そこで初めて部屋が暗くなり始めていることに気づいた。

「いけない、早く夕飯作らないと…!」

慌てて立ち上がると同時、雷光の肩から毛布が少し落ちてしまっているのに気がついた。
起こさないように静かに掛け直してやると、少し身じろいでからまた寝息を立てる。

「…好きです、雷光さん」

静かな部屋に、彼を起こさないように、小さな声が響いた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

携帯のメモ帳に書きかけで保存してあったので続き書いてうp。
俄光はこんな関係が好きだ!!

雪光

誰かといる時間は、どうしてこうも早く過ぎ去ってしまうのだろう。

もう時計の針は夜の11時を回っている。
今まで何度も「帰らなくて大丈夫なのかよ」と言われたが、その度に「大丈夫ですよ。この本続き、気になりますし」と、返していた。
本は雪見の物。一度読み始めたら確かに続きが気になってしまって読み続けていたのだが、実はそれももうとっくの昔に読み終えてしまっている。
それでもまだ読み終わらないフリをして、雷光は彼の部屋に居座っていた。

「雷光」

パソコンに向き合った状態のままの雪見に呼ばれる。
もう何度読み返しただろうか、本のページから顔を上げて、雷光はそれに返した。

「何ですか、先輩」

「もう11時だぞ。大丈夫か?」

「大丈夫か?」と訊かれる度、少し胸がちくりとする。
何だか「帰れ」と急かされているような気がして。
その度に笑って、大丈夫、と返してしまうのは、離れたくないからなのに。

「私がいると邪魔ですか?」

彼の背中に問いかける。こちらを向いてくれない方が好都合かもしれない。
きっと、今自分はとても悲しげな表情をしているだろうから。
必死に笑顔を取り繕っても、彼は察しがいいからすぐに気づくだろう。

「んー、いや、そういうわけじゃねえけどよ……」

妙に返事を渋る彼の反応から、やはりそうなのか、と雷光は小さく息を漏らした。
雷光はつい最近一人暮らしを始めたばかりだった。今まで雪見や首領である服部の世話になっていたのだが、いつまでも誰かの世話になるのは悪いと感じた自分が望んだことだった。
だが正直、今まで誰かがずっと傍にいた分、急に一人になった時の不安はなかなか大きいものだった。
だからどうしても人恋しくて、雷光は毎日のように雪見の部屋に遊びに来る。

「これでは、一人暮らしを始めた意味ないですよね」

わかっては、いるんですけど。
そう呟いて雷光は膝に置いていた本をソファーに置いて立ち上がった。
帰ったらまた一人だけれど、離れたくないけれど、あまり迷惑はかけたくない。
雷光は持ってきた私物をまとめると、雪見の背中に声をかけた。

「先輩、帰ります。お邪魔しました」

「あ、帰るのか?」

「ええ」

掛けられた声に顔を向けることなく玄関へ向かうと、雪見が慌てて玄関まで追いかけてきた。

「見送りなんて結構ですよ」

また来ますね、とにっこり笑いかけて外へ出ようとすると、雪見の手が自分の腕を掴んできて、そのまま中へ引っ張り戻されてしまった。
突然の彼の行動に驚きを隠せないまま彼を見れば、雪見はまるでそれが当り前だというかのようにいつも通りの表情で、自分の靴を履いている。

「送ってくって。ほら、なんだ、こんな時間だろ。お前みたいなのが一人で出歩くのは心配だからな」

「……心配?」

「いや、だってお前、まだガキなんだから。こんな時間に出歩かせたくねえから早く帰れよって言ってんだぞ」

ああ、そうか。

彼は決して、自分を煙たがっていたわけではないのか。
まだ幼い自分を心配して、忠告してくれていたのだ。
そんな雪見の優しさが嬉しくて、でも、その優しさが痛い。

そんなことをされたら

「そんな、優しくされたら…余計に離れたくなくなるじゃないですか……」

もう、笑顔なんて作る余裕はなくなってしまった。
どうしてこう、彼は優しいのだろう。
急に泣き出してしまった自分を前に、雪見は一瞬驚いたような表情を見せてから呆れたように大きな溜息をついた。
それから抱き締めて、小さな子供をあやす様に背中を軽く叩いてくれる。子供は嫌いだなんて言ってるくせに、こういうところは本当に父親みたいだ、と思う。

「お前なあ……離れたくないなら最初からそう言えばいいじゃねえか。変な意地張りやがって」

そのまま泣き続ける自分の腕を引っ張って、先程ようやく決心をして出た部屋にまた戻されてしまった。
先程まで腰かけていたソファーにまた座らされて、暫くすると温かいレモネードが注がれたカップを渡された。
きょとんとした表情で彼を見上げれば、

「それでも飲んで落ち着け。今日は泊まっていけばいい」

そう言ってまたパソコンデスクに戻ってしまった雪見の背中を見ながら、雷光は小さく笑って温かいカップを両手で包む。
その温かさが、まるで雪見の優しさそのものだ、と感じた。

「ありがとうございます、先輩」





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雷光17〜18歳設定で。
一人暮らしを始めたばかりでまだ慣れなくて不安で不安で仕方ない頃。
こんなことがきっかけで、雷光は雪見に甘えまくるようになってたりしたらいいと思う(*´∀`)
今までもわりと我儘とか聴いてもらったりしてたけど、無茶なおねだりとかはあまりしなかったとか。
お互い両想いなはずなのにどこかすれ違っちゃってる雪光とか萌える!!


そして実はこの後エロにもっていきたかったとかいうのは内緒。

雪光

細い指が、黄金に光る液体を掬う。
とろりとしたそれはすぐに指から落ちそうになるが、素早く唇が受け止めた。

「ん」

人差し指を咥えて、雷光は幸せそうな表情で片手に持った小瓶を見つめた。
掌よりちょっと大きいその瓶の中には、黄金の液体が入っている。

「瓶抱えて蜂蜜食う奴、初めて見たぞ」

「先輩もどうですか?甘いですよ」

「……いや、いい」

にっこりと微笑む雷光に勧められたが、雪見はやんわりと断った。
というか、その蜂蜜は雪見の家にあったものの筈だが、雷光はちゃっかり自分の物のように瓶を抱えている。
彼が蜂蜜を好きだというのは知っていたが、まさかここまでとは。

「ったく、そんな蜂蜜ばっか食ってると虫歯になるぞ」

「大丈夫ですよ」

蜂蜜を掛けたフレンチトーストを一口かじりながら呟いた雪見に、雷光はいつもの笑顔で返す。
それからまた、小瓶の中の蜂蜜を掬っては口に運ぶ。指に付いた蜂蜜を舐め取って、ちゅ、と音を立てて指は唇から離れる。
ただそれだけの一連の動作に、雪見は何となく釘付けになってしまっていた。

「……あ」

視線を感じたのか、ふと顔を上げた雷光と目が合う。
だがそれを気にすることなく雷光は声を上げると、何かに気付いたように一点を見つめながら雪見に顔を近付けた。

「なん…」

訊ねる間もなく、唇の端に雷光の唇が触れていた。何かを舐め取った感触がした後、柔らかいそれはすぐに離れていく。

「蜂蜜、付いてましたよ」

何でもなかったかのようにさらりと言ってのけた雷光だが、こいつは今、自分が何をしたのか判っているんだろうか。
突然の雷光の大胆な行動に固まったままの雪見は、ようやく一言、言葉を絞り出した。

「…誘ってんのか?」

「……!」

言われてようやく自分のしでかしたことに気付いたのか、途端に雷光の顔が赤くなる。

「…あれは、その、両手が塞がってて……」

「それでキスか?」

「ち、違います!あれはだから…」

こうなった雷光をからかうのは面白い。
普段同じ様なものしか見られない彼の表情が、こうしてころころ変わるのはこんな時でもないとなかなかお目にかかれないのだ。
羞恥に赤くなりながら必死に言い訳を繰り返している雷光の今の姿は、自分の前でしか見せないし見られない。

自分しか知らない雷光がいる

そう考えると、何となく嬉しかった。

「雷光」

「っ先輩!調子に乗らないでください!」

「あだっ!!?」

このまま勢いに任せて襲ってしまおうか。
そう思って今度は此方からキスしてやろうと顔を近付けたら、雷光の容赦無い右ストレートを顔面でまともに受けてしまう。
昔はこんなにボコボコ殴ったりなんてしてこなかったのに、と溜め息を溢しつつ改めて雷光を見れば、先程まで大事に抱えていた蜂蜜の瓶を手放してフレンチトーストをかじっていた。
俯いていて彼がどんな表情をしているかは見えないが、きっとまだ耳まで真っ赤なのだろう。

「蜂蜜、もういらないのか?」

テーブルの真ん中に戻された蜂蜜の瓶を雷光の前に持っていく。
瓶を前にした雷光は一瞬動きを止めると、すぐに首を横に降った。

「蜂蜜はもういいです」

不貞腐れたような声が一言。
流石にあんなことがあれば、手を出したくなくなる気持ちも分からないでもない。が、あまりにあからさま過ぎて思わずニヤけてしまいそうになる顔を必死で堪えた。
今ニヤけたところを見られたら、間違いなくもう一発右ストレートが飛んでくるだろう。
そんなことを考えながら彼を見ていると、ふと悪戯心が芽生えてしまう。

「……雷光」

「はい?」

「ついてる」

「え、どこです…んっ」

慌てて口のまわりを指でなぞったりする雷光の頭を押さえて、口付けた。
先程雷光がしたように唇を軽く舐めてからすぐに離れて、まだ濡れている雷光の唇を指でなぞってやる。

「ここ。すげー蜂蜜の味だな」

「……っ!」

「お?どうした?顔真っ赤だぞ?」

指摘してその直後、「大嫌いです!」の罵声と共に右ストレートどころでなく左右両方の攻撃+蜂蜜の瓶を投げ付けられた雪見は、暫く目を覚まさなかった。




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蜂蜜が好きです。ネタとして。
最高の萌えアイテムだと思うよ!!
いつもは雷光が雪見を翻弄してるけど、たまには雷光が雪見に翻弄されてたりしたらいいじゃないかと思ったんだ!つーかたまには逆に雪見に虐められる雷光ってのもいいじゃないか!
この後暫く蜂蜜には手を出さなくなった雷光だけど、また暫くしたらけろっとして蜂蜜抱えて舐めてそうです。
雪見に指摘されても「何の話ですか?」とか言ってそうだな!

てなわけで乱文失礼しました。

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