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*雪光(小話/裏表現有り注意)

※以前語った雷光記憶喪失ネタです。




















もう、自分の知っている彼は戻ってこないのだろうか。

室内が闇に包まれてからもう暫く経つ。
今夜は満月だろうか、カーテンを閉めていても月明かりが室内を少し明るく照らしていたから、何も見えないという不自由はなかったし、目もとっくに慣れてしまった。
そんな薄暗い室内に響くのは、蜜のように甘い声と欲を掻き立てるような水音。白いシーツの上、桃色の髪の青年を雪見は組敷いていた。

「はぁ…あ…っ」

与えられる快感に体を仰け反らせ、青年は淫らに声をあげる。
快感に歪む表情。白い肌はほんのり桜色に染まり、少し触れただけで敏感に快楽を伝えた。
この体を、表情を、声を、雪見は何度も見ている。知っている。知っているはずなのに、まるで別の知らない誰かを抱いている感覚だった。

「あ…っ雪見、さん…っ!」

青年が自分の名を読んだ。ちくりと、胸が痛んだ。
これは彼だ。彼だということに間違いはないのだ。
だってこの青年の体に残る幾つかの傷跡は、自分が彼につけてしまったものなのだから。
なのに、彼はもう自分のことを心から「雪見先輩」とは呼んでくれない。
否、呼べないのだ。
彼は何も知らないのだから。

「……雷光…」

確かめるように名を呼んだ。快楽で意識が朦朧としているのか、青年、雷光は雪見の方をゆっくりと見た。
緋の瞳。こいつの好きな花と同じ色だ、と思った。だが、雷光はもう自分がその花を好きだったということすら覚えていないのだろう。

半年程前、雷光は森羅万象を巡る戦いの最中に倒れた。誰もが彼は死んだと思っていた。自分もそう思っていた。数週間前に、あの場所で彼を見つけるまでは。
あの時発動しかけた森羅万象のお陰なのか、雷光が受けた傷は跡は残っていたものの完治していた。
しかし、雷光は記憶を失くしていた。
己の名前も、あれだけ大切に想っていた妹や親友のことも。
自分のことも。
彼はすべての記憶を、何処かに置き去りにして来てしまったのだ。或いは、森羅万象によって持っていかれてしまったのだろうか。

何も覚えていない雷光を自分の部屋に連れてきて、今に至る。
もう数週間は経つが彼が何かを思い出す気配は全く無い。
姿、声、ちょっとした仕草は彼そのものなのに。彼は自分のことを「雪見さん」と呼んだ。知らないのだから当たり前だ。雷光にとって自分のことはただの初対面の人間に過ぎないのだ。
「恋人同士」だったはずなのに。
目の前にいる雷光は雷光なのに、雷光ではない。
それがどうしても、受け入れ難かったのだ。

「…っあ、だめ、そこは…っ!」

秘部に指が触れた瞬間、雷光が戸惑った表情で制止を訴えてきた。
そうだ、今の雷光にとってはこの行為自体が初めてなのだ。体はもう快楽を知り尽くしてしまっているくせに。
雷光の制止など気にもせず、そのまま指を進めれば秘部はあっさり指を飲み込んだ。
前戯のお陰か、中はもう十分過ぎるほどに熱く蕩けていた。数回指で中を探れば、卑猥な水音と共に雷光の表情が快楽で歪む。

「ふぁ、あ…ゆきみ、さん…っどうして、こんな…ぁっ」

「……っ」

苛立つ。どうして忘れてしまったんだ。どこに置き去りにして来たんだ。
「俺達は恋人同士だったんだ」と伝えたら、今の彼はどういう反応をするだろうか。悲しそうに俯いて「すみません」と、覚えていないということに対して謝るのだろうか。
挿れていた指を引き抜いて、代わりにすっかり昂ってしまった自身を宛がう。
雷光が怯えたような表情をした気がした。

「っあぁ…っ!」

一気に腰を押し進めれば、彼は難なく雪見を最奥まで迎え入れた。
初めての感覚に戸惑っているのか、怯えたように両の目は見開き、体は小刻みに震えている。
感覚こそ慣れたものなのに、いつもとは違う反応。それは彼と初めて繋がった時の反応だ。もうどれだけ前のことだろうか。そこまで考えを巡らせたが、すぐにやめた。
もう、昔の雷光はいないのだ。

「ん…っあ、あぁ…っ!」

腰を強く打ち付けて中を掻き乱す。卑猥な水音と嬌声が響き、更に情欲を掻き立てる。
もともと行為自体に慣れている身体はもう痛くはないらしい。押し寄せる快感の波に飲まれ、雷光は更なる快楽を求めるように腰を揺らしていた。
もう彼の身体は全部知り尽くしていた。どこが弱いのか、どこがイイのかも。

「あぁっ!や、そこ…っ」

「お前は、ここが一番感じるんだよな」

「なん、で…そんなの…あっ!」

記憶がなくとも、体は雷光そのものだ。弱いところを突けば、以前と全く同じ反応が返ってきた。
雷光じゃない。何度もそう割り切っていたのに、時折見せる雷光の体の記憶が、また雪見を迷わせる。
どうしたらいい。どうしたらいいのだろう。

「雷光…っ」

「はぁ…っあ…!」

ただ闇雲に抱いているだけでは、何の解決にもならないことくらいわかっている。
それでも、自分は雷光が好きなのだ。好きなのに、雷光はそれを知らない。覚えていない。

「やっ…あぁっ、だめ、雪見さ…激し…っ」

考えれば考えるほど苛立って、後はただ、本能のままに彼を犯した。
卑猥な水音がまともな思考を遮る。体だけでなく心もこうして自分のものにできたら、なんて身勝手なことを思う。
元は自分のものだったのに、今の雷光にそれは関係ない。

「好きだ」

「…っん……!」

耳元で想いを伝えたら、雷光の体がぴくりと跳ねた。雷光の表情が戸惑ったような表情に変わったのを見て、困らせてしまったのだと雪見は思った。
今の雷光にとって、愛だの何だのといった言葉はきっと重い。
好きだとか、愛してるだとか、そんなものはもう自分の中だけで勝手に空回りしてる感情なのだ。

「……悪い、何でもねえ」

「雪見さん…?」

潤んだ目で雷光が見つめてくる。自分はどんな表情をしているのだろう。雷光がこんなに不安げな表情で見ているのだから、きっと酷い顔に違いない。
安心させるように頭を撫でてから口付けた。思えば、今の雷光にキスをするのは初めてだと思った。
離れれば、彼は何とも悲しそうな表情をしていた。何を思っただろう。拒まなかったのは何故なのだろう。
雷光が何かを言いかけたが、聴きたくなくてもう一度唇を塞いだ。そのまま行為を再開させて、何も言えなくしてやる。

「あっ!あっ…!や、待っ…」

「煩ぇ、黙ってろ」

激しい動きに最早喘ぐことしかできなくなった雷光の甘い声が性欲を煽った。
今までの雷光と何一つ変わりない声、表情、身体、仕草。違うのは、そんな彼が自分に対して紡ぐ言葉。
ただ一言だけ。

「…はぁっ…あっ、あぁっ!ゆきみさ…私、もう…っ」

「くっ…雷光……っ」

「はぁっ、あ…っやあああぁっ!」

一際高い声を上げて、雷光は絶頂を迎えた。
続けて訪れた激しい締め付けに耐えきれず、雪見も雷光の中に欲を吐き出した。




「不思議ですね」

雪見の隣で眠っていたと思っていた雷光がぽつりと呟いた。
先程の情事の余韻なのか、表情が少し色っぽく感じる。普段は穏やかに笑顔を浮かべているだけなのに、こんな顔もできるのか、と最初少し驚いた覚えがある。

「何がだ?」

「雪見さんと一緒にいると、何だか落ち着くんです」

雪見さんとはつい最近会ったばかりなのに、と笑って雷光は目を閉じた。
こっちからしてみればもう5年も前から知っているというのに。
何も言わずに雷光を抱き寄せれば、雷光は驚いたようにこちらを見た。

「初めて会った時も、雪見さんは私を抱き締めましたよね」

「……」

「さっき、訊こうとして訊けなかったことを、訊かせてください」

訊けなかったこと。きっと、遮るようにキスをした時のことだ。
何を聞かれるのかはなんとなく予想がつく。だからこそ、聞くのが怖いと感じた。
それを訊かれたら、こうして自分のものにしたと思っていた彼はすぐに何処かへすり抜けてしまいそうで。


「…私は、貴方の、何だったんですか…?」


自分のものにしたのは体だけで、心はまだ自分を見てくれていないのだから。

記憶喪失の雷光を見つけてから、雷光には自分の名前と雷光自身の名前しか教えていない。全てを忘れてしまった雷光に、自分との関係性を伝えるのは酷だと思ったからだ。
いつかもう一度、心から愛し合えることがあれば伝えても良いだろうか。

「ただの先輩と後輩だよ」

おやすみ、と頭を撫でれば、雷光はゆっくりと目を閉じた。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
以前かのこさんと絵茶で語った記憶喪失ネタで雪光。
アニメの方で死んでしまったと思われていた雷光が、記憶喪失になって戻ってきましたっていう雪光前提で。
雪見は何だかんだいって雷光のことすごく好きだったりして、他の人は勿論自分のことさえも何もかも忘れてしまってて色々とやりきれない思いだったりしたらいいさ!
そんで前の雷光だったら「雪見先輩」って呼んでくれてたのも今じゃ「雪見さん」になってしまって、目の前にいるのは雷光で間違いないはずなのにその点がどうしても受け入れられなくて苛々してしまったりとか。
だからといって「雪見先輩って呼んで欲しい」なんて強制もしなそうだ雪見。
とにかく雪見は記憶喪失の雷光に色々負担はかけたくなくて昔のことはあまり教えてなかったりしたらいいなって思ったんだぜ。
でもそのうち少しずつ教えていってあげたりとか。そんなこんなやってるうちに記憶が戻ったりしたらいいじゃないか!という妄想。

それにしてもエロとか久々過ぎてどう書いたらいいかわからなくなった!
恥ずかしくてどうしようもなくなったらなったら下げます。つーか下げそう。
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