シュールレアリスムに影響を与えたドストエフスキーの、1864年の中編。

シュールレアリストが、"シュールレアリスム"と"革命"の共通分母として認めた<ある怒りの状態>が、地下室の住人にもある。

では、地下室の住人は、シュールレアリストなのか。

住人は、なにに対して怒りの状態にあるのか。

《すべての美にして崇高なるもの》にだろう。
つまり、理性だ。

その《すべての美にして崇高なるもの》を崇拝する近代的人間に、どうして欺瞞が生じるのか。

それは「理性の勝利がもたらされる、と〜わざと狂人になってでも、理性を振り捨て、自我を押し通す」からである。

なぜなら「人間があれほど破壊と混沌を愛するのは〜目的を達し、自分たちが創っている建物を完成するのを、自身、本能的に恐れている」からであり、
「自分が食べたいと思うときに、満腹です、などと言うつもりはない」からである。

住人は嘘がつけないのだ。

それ故に、彼は地下室で孤独に40年間も生きることになる。

地下室の住人は、世間が崇拝する《すべての美にして崇高なるもの》に対して、なにかを発見した。
しかし、彼はこれを孤独の状態でしか叫べなかった。
後に、シュールレアリストがドストエフスキーをシュールレアリスムの先駆けとし、地下室の住人が発見したものを再発見する。
そして、シュールレアリストはそれを武器に革命の準備をする。

シュールレアリスム理解の手助けになる中編だと思う。
構成もおもしろく、感動的でもあった。


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