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糧なき土地-ラス・ウルデス

シュールレアリストの映画監督ルイス・ブニュエルの三作目。
スペインの最貧地方の生活を描いたドキュメンタリー映画。
上映当初は、政情不安定であったフランコ政権により上映禁止となり、ブニュエルは指名手配までされることになる。

一見、貧困に苦しむ地方の実態を捉えて、その悲惨さを暴こうとする同情的な映画にみえる。
それは、監督としての処女作であるアンダルシアの犬とは全く違い、観客に目的を誘発させるように仕組まれているように映る。
しかし、アンダルシアの犬が夢の超現実性を示そうとしたのと同様に、この映画においても超現実的なものの記録であり、それの記録映像作品としてあるのではないだろうか。
それは医学写真が科学的な方法であり、印象によらず客観的に解釈する方法であるのと同じであり、ブニュエルはそれを映像で実践する。

ナレーションに従った映像が映し出されるのには、計算された構成や編集はみえるが、それは主情による超現実性を示す。これはブルトンのナジャにもみられる。

創造されたものよりも、ありのままのものに衝撃がある。なぜならそこに神話はなく、その無限の存在を認めるのには苦労が伴うからである。(シュールレアリスムの目的はこれの証明ではなかったか。)
そして、この映画を上映禁止にしたフランコ政権が、それの超現実性を実証する。

つまり、彼が示したかったのは悲劇というより、その悲劇の超現実性ではないだろうか。



話題:映画

LIFE!

トレイラーで、主人公が務める雑誌社の表紙が掛った社内廊下を主人公が駆け抜けるシーンが良くて期待していた映画。
原作は未読。

ロケーションが良く、迫力のあるシーンもあるので、異国に飛び出した!という感じが伝わってくる。
しかし、場所を転々とするせいか(前後の土地に繋がりがない。飛行機的な移動。)その異国情緒をじっくりとは味わえない。
原作の物語構成があるからなのだろう、ストーリー重視になっている。(主人公の空想癖もこの映画においてはいらないような気がするし、なくてもよいシーンも多かった。たぶん、原作においては重要なのだろうが。つまり詰め込みすぎ)
もっと、シンプルに長回しでの俯瞰があったり、ただロードムービーとして楽しめる映画を期待していたので少し残念だった。

ただ、好きなシーケンスもある。バーでの「トム少佐」や、火山噴火を撮影する冒険家のショーンの登場は感動する。

これは原作を読んでから観ると楽しめる映画なのかもしれない。

話題:映画

キック・アス ジャスティス・フォーエバー

正直なところ残念だった。
原作のコミックは未読なのでキック・アスそのものがどういったジャンルかはわからないが、映画では現実離れしないヒーロー物というのがひとつの魅力としてあるだろう。
一作目は、強烈なキャラクター設定(メインのキックアスはオタクでひょろひょろ、ヒットガールは童顔で華奢なのに何でも使いこなす最強女の子)が、現実性とファンタジーとの良い架け橋となっており超展開でも笑いで済ませれた。

しかし、今作では設定と王道とを縦横無尽に駆け巡れず、スクリーンのこっち側を気にしている。
というより、そうならざるを得なかったようにも思える。

王道でよくあるスーパーパワーのラスボスは登場させれないので、代わりに多くのヒーロー・悪役を登場させる。
しかし、どうしても各キャラクターにインパクトが欠け、多すぎるが故に存在も薄い。(スターズ・アンド・ストライプス大佐がジム・キャリーでなくてはいけなかった理由もよくわからない
さらに、現実離れしてはいけないのでアクションシーンは殴りあいで解決させる。それぞれの活躍が背景で終わってしまい、メインには結局いつもの二人・・・
しかし、あくまでヒーロー物なのでストーリーはヒーロー的解決をみせる。

一作目ではクールに映った暴力的なセリフも鮮血が飛散するシーンも今作では、アイアンマンがウェポンをぶっ放すような、スパイダーマンが糸でビル群移動するようなものでしかなくなっている。
展開にイライラした観客を宥めるものでしかない。
中途半端に設定を守り、中途半端に王道になっているように感じた。

話題:アクション映画

桐島、部活やめるってよ

公開当時に劇場で観て記事にしています。

当時の記事では、中心の不在により学園内のヒエラルヒーは揺らぎ、その虚像が暴かれる。そして、それは曖昧なままに大団円を迎える。絶対者(監督)による統一(映画化)というのを、逆説的に説明している。つまり中心があれば周りは安心し、なければ不安になる。みたいなまとめ方をしている。

改めて観てみて、やはりおもしろい。
今回思ったのは、桐島以外との関係。
例えば、先輩と後輩、彼氏と彼女、恋敵、友達。ところどころに、メインとは違ったフォーカスのシーンがある。
これには、そもそも中心とは何かを考えさせられる。うーん、うまくまとめれんので、

中森明夫氏による映画「桐島、部活やめるってよ」のレビューが素晴らしい件【ややネタバレ】

なるほど。



話題:邦画

サルバドール・ダリ

ダリが没する2年前の1987年にBBCの制作によるドキュメンタリー。

シュールレアリスムからみたダリは、運動参加から除名までのシュールレアリスム期の短い期間のみで、運動にダリが持ち込んだもののみが顧みられ、その後の言動はあまり語られない。
ここでは、ダリのドキュメンタリーということもあり、幼少期から晩年までのダリを大まかではあるが一括できる。

ダリへのインタビューで、ブルトンに除名された後を「私こそシュールレアリスムであった」と言っているのはおもしろい。
彼は、合理的なものや文化的なものの否定のみ表現し続け、シュールレアリスムに迎え入れられたのだが、ブルトンの信仰するスターリンをもそれで描いた結果、侮辱と捉えられ除名されてしまった。
インタビューでダリは「私は政党への参加はしない」と言っているように、政治的関与のないシュールレアリストであったと言えるかもしれない。(シュールレアリスムと政治は切り離せないが)

また、ダリの物質的で鮮明なイメージやガラ(妻)への信仰的な愛は、幼少期の印象が及ぼしていると見れフロイトの精神分析が思い出される。

なかなかの変人っぷりで、そこに見られる信念には恐れ入る。



話題:ドキュメンタリー
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