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永遠の詩(5) 石垣りん

戦争、家庭、ジェンダーからなにから、とにかく触れたものなんでもを吸収し、それを恥じらいなく曝け出すところに、彼女の強さを感じた。
風刺的で比喩的にまとめられた詩、ひとつをとっても彼女自身が、人生が見える。



話題:本の感想

中野重治詩集

氏は共産主義者であり、マルクス主義の影響が詩集にも多分に現れている。
なるほどメディアや社会に対して攻撃的な表現をしている。
しかし同時にそれは抒情的であり、純粋で美しい。
哀愁やノスタルジーすら感じる。そこにアナーキストの破壊はみえない。

「夜明けの前のさよなら」

僕らは仕事をせねばならぬ
そのために相談をせねばならぬ
しかるに僕らが相談をすると
おまわりが来て眼や鼻をたたく
そこで僕らは二階をかえた
路地や抜け裏を考慮して

ここに六人の青年が眠つている
下にはひと組の夫婦と一人の赤ん坊とが眠つている
僕は六人の青年の経歴を知らぬ
彼らが僕と仲間であることだけを知つている
僕は下の夫婦の名まえを知らぬ
ただ彼らが二階を喜んで貸してくれたことだけを知つている

夜明けは間もない

僕らはまた引つ越すだろう
かばんをかかえて
僕らは綿密な打合せをするだろう
着々と仕事を運ぶだろう
あすの夜僕らは別の貸ぶとんに眠るだろう

夜明けは間もない

この四畳半よ
コードに吊るされたおしめよ
すすけた裸の電球よ
セルロイドのおもちやよ
貸ぶとんよ
蚤よ
僕は君らにさよならをいう
花を咲かせるために
僕らの花
下の夫婦の花
下の赤ん坊の花
それらの花を一時にはげしく咲かせるために


私が読んだのは新潮社のものですが、なかったのでコチラ(内容も違うようです)

話題:本の感想
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