本物のピアノを弾く手ほど、骨ばっていて太い指なのだろうか…
夜中の静かな部屋で、流れるテレビからのピアノの音でふと目が覚めた。
映っていたのは、そんな手だった。
客観的に見れば、決して美しいとは言い難いその指先。
使い込まれた、職人の手。
爪の形が変わり、相応の筋肉がついた指。
その指先が動く。
其処から導かれるように流れている音には、紛れも無く人間の感情が宿っていた。
繊細に…そして力強く、思いを伝えるように自由に、鍵盤の上で踊っていた。
その手がそれを奏でているのだ。
釘付けになる。
使い込まれた物が、
見る人によって、場合と場所によって美しいように、その手がその上を踊ることが酷く美しく感じた。