「ほら、お待たせ」
そういって阿部は、手早く具をトッピングした冷やし中華を両手に持って三橋のところにやってきた。
トッピングしているあいだ、三橋に頼んでテーブルの上はきれいにしてもらっている。
目の前に、おお盛りの冷やし中華が置かれ、三橋は目を輝かせた。
「いっぱい だね」
「あー、お前、食べるほうだから、三人前をゆでて二人でわけたんだ」
エプロンを外しながら阿部が答える。
それから、彼はふと思いだしたようにグラスに入れた水と、二人分の箸をとってきてから、スッと三橋のそばに腰を下ろした。
「はい、どうぞ」
コトン、とコップを三橋の前に出し、箸はひょいと手渡してくる。
「ありがとう」
三橋が微笑んだ。
「カラシは使う?」
「うんん」
三橋は首を横に振る。
箸と一緒に手に持っていたのか、阿部はそれを聞くと自分の分にだけ、カラシを少しのせた。
二人は、小振りの背の低いテーブル、床に座ったりあぐらをかいたりするテーブルについた。
「うまそおっ」
「おう」
「阿部君、すごいっ」
「いや、それほどでもねえけど」
「うまそおだよっ」
キラキラっと三橋の瞳が阿部に向き、それかふいにだらしなくゆるんだ。
「…どした?」
「これ、オレの ため」
「は!?」
「阿部君 オレのこと 想ってくれて」
「お前、急になに調子に乗っちゃってんの?」
阿部はギュッと眉をしかめてから、視線をそらす。
「べつに、 そんなわけでもねえし」
そういいながらも阿部の顔はみるみる赤くなっていく。
それをみて、三橋がボワッと嬉しそうに笑った。
「…いいからっ、おい、食べるぞ!」
阿部が三橋をにらんでから、パンッと手を合わせる。
「いただきます!!」
「いただきます」
ふたりの遅めの夕食が始まった。
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フルーツポンチはまだ秘密です。冷蔵庫の中で冷やされてます。
2013-9-25 02:58