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外出先なので携帯から書いてみました。
花火は儚い。
いつの頃からか、そう思っていた。
だから、花火をみたくない年もあった。
あっというまに空に咲いて消えるのが、早すぎて息がつまる時があった。
でもいま、オレは手を引かれて茂みをかきわけながら、山道を進んでいる。
オレの手を握っているのは元希さん。
「ねえ、どこに行くんですか?」
しっかり握られた手から伝わる熱を感じながら、オレは困惑の言葉を発する。
「もう少しだって」
「だいぶ来ましたよ」
「五年前に来たことあっから、たぶん、平気だよ」
「記憶、あやふやなんじゃないんですか」
「お前はどうしてそう、思いやりのない発言が多いんだよ。もっと彼氏に優しくしようって気持ちはねーの?」
「気持ち悪いこというなよ!」
「じゃあ、オレってお前のなに?」
「知らねーよ。知りたくもねえ!!」
「……昨日の夜は、あんなに可愛かったのに」
「それこそ知らねーよっ」
「ヒデーな。じゃあ、もっともっとすごいことしたら素直になんのかな」
「どこから覚えてくるんだ、そういうのっ。アンタ、最近、変なこと口走るの多いけど、ろくでもないものみてんでしょ」
「……あーあ、ムードのねえヤツ。せっかく秘密の花火スポットに案内してやるのに」
「虫除けスプレーをガンガンに塗って、ヤブをかきわけて…。むしろ小学生の肝試しみたいです。草と木しかねえけど」
「へー。じゃあ人魂くらいでてくんじゃねえの?」
「ちょっと、やめてください」
「なに?ビビったの?」
「違いますっ」
それでも元希さんの手はオレの腕をつかんだままだ。
2013-7-30 09:53