ピンポーン
ピンポン
ピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポン ピポピポピポピポ…
「はいはいはい、わかってますって!!!」
ガチャッ!!
「ったく。……お帰りなさい、元希さん」
「おせーよ。もう電車降りたって連絡入れたろうが」
「だからってアンタ帰ってくるまで玄関でジッと待ってろっていうんですか?」
「つーかむしろ、玄関から表にでてソワソワ旦那の帰りを待っているとか…」
「はいはい、すみませんねえ! 無精もんで。こんな寒い季節、そこまでやりたくなかったんですよ」
「なんだよ、ホント可愛げがねえなあ。これでも新婚だってのに」
「こんだけ付き合い長かったら、新婚もなにもありませんよ。…けど、一応、元希さんを迎える準備はしてありますから。はい、鞄貸して。それからスーツ脱いでください。ハンガーにかけますから」
「お、サンキュ」
ガチャン
「ふー。久しぶりの我が家って感じだな!」
「機嫌良さそうですね。その調子だとうまくいったんでしょ?」
「おお! よくやったっていわれちった。ああ、それからお前が行き帰りの交通調べてくれてたから、スムーズだったぜ」
「そうですか、それはよかった」
「おう。オレもいい嫁さんもらったもんだな」
「は!? なにいってんですか。っとに、誰が嫁だ…」
「だってそんなようなもんじゃん」
「でもっ …とにかくもうゆっくりしてください。疲れたでしょう」
「ああ、まーな」
「ねえ、元希さん」
「ん?」
「ご飯にします? お風呂にします? それとも…」
「タカヤ!!!」
「は?」
「隆也! 風呂! 飯!」
「え、あの」
「あ! 風呂と隆也、隆也、飯、でもいいな」
「いや、だから、なんの話し?」
「バッカ、こういうことは新婚のお約束だろ?」
「はい!?」
「あーいいよ、お前はべつにそんなこと知らなくっても」
「え? でも、オレ、関係することなんですよね?」
「って、なに目ぇパチパチさせてんだよ。お前、煽ってんのか?」
「は? なにが」
「っせーなー、もういいからこい」
ヒョイ!
「わわっ ……なんですかいきなり持ち上げたりして」
「いーからそうやって大人しくしてろよ」
「大人しくって、こんな…抱きかかえられて…」
「お姫様抱っこってヤツだよ。いいだろ? ラクチンで」
「や、やですよ。降ろして!」
「やなこった。数日間も家空けて、お前が不足してんだ。これくらいサービスしろよ」
「そんな…」
「つーか、お前、食事と風呂も用意してくれてたのか?」
「……うん」
「そっか。えらいえらい。隆也、頑張ったな」
「こ、これくらいなんでもありませんよ」
「ふーん。なに作ってくれたの?」
「ハンバーグとサラダ…。元希さん、好きだから」
「お、すげー。じゃあ、やっぱ先に飯にしちゃおうかな」
「あ、じゃあ、オレ、よそいます! …だから、降ろして」
「えー?」
「だって…。 ね、元希さん」
「んー、じゃあ、よそってくれたら、膝に乗れよ」
「はあ? なんで」
「隆也が不足してるっていってんじゃんよ」
「でも…」
「いいから。ほら、もう、オレもよそうの手伝っちまうから」
「あ! いいですよ、もうっ」
「いっただきまーす!!」
「いただきます……」
「ほれ、隆也、アーンvV」
「いや、い、いいですから」
「ダメだ! 喰えっ」
「そんなっ…」
「ほら、アーン!」
「……アー……」
ムグムグムグ…
「うまい?」
「ふぉいひいです……って、オレが作ったんです!」
「オレが食わせてやったらうまさが百倍増しになるんだよ。知ってんだろ?」
「なにを勝手なことを…」
「…隆也が食わせてくれたら千倍うまくなるんだぜ?」
「えっ」
「食わせて…くれるだろ?」
「う……」
「アーーン」
「ちょ、やめてくださいよ」
「アーーーー」
「………っとに…しかたない、ですね」
パクッ
「うん。うまい。隆也、うまいよ」
「あー、はいはい」
「隆也、もっかい」
「ええ!?」
「アーーーー、パク!」
「こら、指まで食べんな!!」
パシャパシャ…チャプン
「ハア〜。やっぱうまいもん食べたあとには風呂だよな〜」
「そうですか…?」
「そーに決まってんだろ。オレがいま最高に気持ちいいって思うんだから、そうなんだよ」
「ああ、そうですか」
「オメーは気持ちよくないのかよ?」
「いい…けど」
「じゃ、やっぱそうじゃん」
(……なんか元希さんには口じゃ敵わないんだよな。頭は確実にオレより軽いのに…)
「お前、なんかいま、ロクデモねーこと考えてんじゃないか?」
(ドキ)「そ、そんなことないですけど」
「あ〜それにしても極楽だよな〜。出張中はホテルのちっさな風呂でさ〜。お前もいないし、仕事はうまくいくかなって、終わるまで緊張がとけねーし。まったく大変だったぜ」
「うん…。元希さんのことだから、きっと頑張ってるんだと思ってました」
「…そ、そう?」
「だって、なんだかんだいったって、手が抜けない人じゃないですか」
「……まあ、な」
「だから、帰ってきたらうんとリラックスしてもらおうって思ってたんだ」
「ふうん。お前って気のいいヤツだね」
「気がいいっていうんですか? こういうのって」
「いや…まあ、よくわかんねえけど。……とにかく仕事も無事に終わったし。また次の活力にするために、今日はしっかり隆也を頂く」
「あの、でもそこに結びつけなくても…」
「んだよ。お前はつらくなかったの? オレがいなくて…?」
「べっ、べつにっ」
「じゃあ、この三日間、どうしてたんだよ…?」
「どうも…して…ません」
「んー? なんか顔、赤くなってねえ?」
「違います!! 元希さんがいないから、夜はゆったりぐっすり眠れて調子もバッチリでした」
「へえ…じゃあ、自分でしてなかったの?」
「してま…せん」
「一回も?」
「やっ……そんなに顔、近づけんな!!!」
「なんでそんなに逃げようとするんだよ」
「逃げてない! アンタが変なこと聞いてくるからだ」
「べつに変なことでもねえじゃん。夫婦なんだから」
「ふっ夫婦でも、プライバシーは侵害できません」
「プライバシーって……じゃあ、お前、なにでヌいたの?」
「はあっ!?」
「誰のこと考えてしたんだよ…?」
「だ、だから…してねえって…」
「隆也」
「……んっ バカッ どこさわって…!」
「オレのこと、考えてくれなかったの?」
「んう……やあっ…」
「なあ、ちょっとは考えただろ?」
「放してっ…」
「やだよ。お前、留守中に浮気したっぽいから、もう一度、ここに教えてやる」
「ちがっ…してない! 元希さんのことしか、考えてないっ」
「本当に?」
「ほ、ほんとっ…ああっ」
「んじゃあ、想像と本物と、どっちのオレがいい?」
「本物の…元希…さん…」
「オレも、生身のお前じゃないと、ダメだ」
「んんっ…もっ」
「だからってそんなに暴れんじゃねえよ。せっかちなヤツだな」
「だって…身体が…勝手に…」
「隆也は身体のほうが素直だからなー。朝までしっかり愛してやるから、安心しろよ」
「んあっ」
「も、でような。身体、拭いてやっから」
ザパアッ…
「ほれ」
トサッ
「うう……」
「バスタオルで拭かれたくらいでそんなになんなよ。隆也君は敏感ですねー」
「もっ…元希さん…がっ」
「いいから早く布団にこもれよ。お前が用意してくれたやつだろ? それから隆也…」
「なに…?」
「ちゃんと覚悟しとけよ? 本番はこれからなんだからな」
******
元希さんだけ、フルコースになってしまった。
やっぱり後悔はしていないが精神力と体力が…(略)