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ろまんちっく 続き

隆也の部屋を出た元希はこの家のリビングに向かう。
家族に挨拶をして帰ろうと思った。

廊下を声のする方に進む。
リビングに通じると思われるドアを開こうとしたら、先にドアの方が開いた。
パッと中から少年が現れる。

「…………」


元希の思考が、一瞬、現実に追いつかなかった。

シニアの隆也がいる。

そうとしか思えない。

あれ、オレ、いま、デカい隆也と話してたよな?

ジッと見つめたまま止まってしまう。

「あの、どうも…」

相手の方が困ったように会釈をしてきた。

声が微妙に違う。

初めて元希の頭は、この少年が隆也とは別人だと認識した。
それでもやはり、黙って見つめてしまう。

「…榛名さん、ですよね。あの、兄がお世話様でした…」

アニ?

……兄?

「あ、ああ……」

そういうことか。
これ、隆也の兄弟か。

「いや。たいしたことはしてないけど…」

一瞬、時を超えてしまったのかと感じたが、あらためて見ると、確かに少しづつ違うところがある。
しかし、全体的にはよく似た兄弟だ。

(アイツに兄弟いたとか、聞いたことなかった)

元希はしみじみ少年を眺める。
隆也はアクが強かったから、なんとなく一人っ子だと思い込んでいた。
あんな大変なヤツの兄弟やってるなんて、コイツ、すごいなとすら思ってしまう。

そんな元希の気持ちをよそに、相手はなんだか目を輝かせて遠慮がちに自分を見上げてくる。
なんだ、この表情。

「榛名さん、武蔵野のエースですよね。僕、試合、観てました」
「ああ、どうも」

キラキラと無邪気に輝く瞳、人懐こくて、どこか甘え上手な感じがする。
やっぱり、これは隆也とは別人だ。同じ遺伝子でもこうも違う人間が出来上がるのか。

「会えて嬉しいです。兄ちゃん、シニアの頃から榛名さんはスゴい、スゴいって言ってたけど。榛名さんが兄ちゃんと組んでた時があったなんて信じられないです」

スゴい、という言葉が耳に残ったが、それよりも反射的に隆也の腕の方に気持ちがいく。

「そうでもねーよ。隆也、かなりスゴい捕手だったと思うけど」
「そうですか? 武蔵野の捕手の人がものスゴいんじゃないんですか?」
「え? いや、アレはオレと呼吸があってるから上手くいってるだけで…」

元希の脳裏をのんきな眼鏡の幼なじみがよぎる。なんとなく苦笑い。

すると、そこへ母親が顔を出した。

「ああ、榛名君! 本当に今日はありがとうね−。ちょっとお茶でも飲んでいって。もしだったらお夕食、食べていく?」

「いや…それは…」

「うちの子のせいで遅くさせちゃって。もしもそちらのご両親が心配されていたら、私からもご挨拶させて」

*******
とりあえず、元希さんが無事に阿部家をあとにしたら、いったん、皇子パロに戻ろうかと思ってるんですが。
平行でやった方がいいかな。む…。
会社に行って参ります。

▼追記

ろまんちっく 続き

アパートの外からスズムシ?の鳴き声がする。ついに、秋か…。
昨日は会社の人たちと仕事終わってから花火大会に行ってきました…。
********

(元希さんが考えていた? 高校に入っても? オレのことを…?)

隆也の中でグルグルと思いがめぐる。
思わず元希から目をそらせた。
顔が、熱い。

言い切った元希の方は、いまの自分の言葉に満足しているのか、苦笑いを浮かべながらも目が輝いている。

「まあ、オレの経験したなかで、いっちばんクソ生意気な存在がお前ってことだけどな!」

隆也から反応がないので元希はそう付け加えた。
そうして隆也を見る。相手は露骨に目をそらせたままだ。

「……おい?」

あまり沈黙が続くので元希は声をかけた。

「疲れたか?」

すると隆也は小さく首をふって元希に背を向けるように寝返りをうった。

「じゃあ、オレ、そろそろ帰るな」

ドキン、と隆也の心臓が鳴った。
元希の声は穏やかだ。
少しの間、隆也の反応を待って、そうしてなにもないことを確認すると元希は立ち上がった。

「ちゃんと寝ろよ」

そういって彼が立ち上がったのがわかる。
ゆっくりと部屋のドアのところに行く。

なにか、言わなくちゃ。

隆也は思った。

でも、なんて?

元希さん…、そう声に出そうとして、自分の声が涙がかっているのがわかる。
隆也は唇を強く結んだ。
静かに涙が、幾粒もこぼれ落ちてくる。

「明かり、消すか?」

ドアから元希の声がした。
隆也は背を向けたまま、首だけコクリとうなずく。

パチリと音がして部屋が暗くなった。

「じゃあな」

静かにドアが閉まる。
足音が遠ざかるのを耳にしながら、隆也は目をきつくつぶり、涙とともに小さく声を漏らした。
▼追記

ろまんちっく 続き

(あー…なんか、頭ぼんやりするかも)

「なんか、寝る前に飲むか?」
「ん…大丈夫です」

枕に頭を沈めながら隆也が答える。

「元希さん…」
「なに?」
「本当に、お世話様でした」

元希から返事が返ってこないので、隆也は顔を動かしてベッドの横にいる元希を見る。
すると、不思議なくらい優しく笑っている彼の顔があった。

「な、なんですか?」

思わず尋ねる。

しかし元希はいっそう微笑ましそうに見下ろしてこう言った。

「こんなしおらしい隆也を見られるなんて、すげえ楽しい」
「はあ…!?」

体力のせいか、隆也の「はあ?」にはさほど力がない。

「オレだって、ちゃんと世話になったときは感謝くらいします」
「いやいや、お前だってちゃんとそーゆーところあるのはわかってたけどさ。オレに対してだけはきつかったろ、ずっと」
「え…?」

元希が思い出に浸るようにしゃべる。

「なにしてやってもオレにはつっかかってくるし。物を渡したりもらったりするときも、お前、パッと取るじゃん。差し入れのジュースとか、プリントとか。ほかの先輩から物もらうときは、ちゃんと受け取るのにさ」

そんな細かいこと覚えていない。
隆也は自分の記憶を探ってみた。

「あ!」
「なに?」
「だって、アンタこそ、鞄とか道具とか荷物をオレに預けるとき、ドカッて投げつけるように渡してただろうが! あれ、本当に腹立たしかったんですよ! だからオレも負けないようにしようと思ったんです」

隆也の眉間に急に深いしわが寄る。

あんま、いい記憶スイッチ押さなかったな、と元希は後悔した。

「しかも、アンタこそ、一番辛くあたってたの、オレじゃないですか。それこそ、オレ、他の後輩がうらやましかったんですよ。だって、もう少し優しくしてもらってたもん。オレばっか…」
「あー、悪かった、悪かったよ。……荷物のこと? 最初の頃? あん時、オレ、お前になめられたくなかったから、最初にやりすぎちったんだよ」
「荷物、ドカって渡して、『ついてこい』だけですよ? 全部荷物持たせて、自分は先を歩いて。まあ、野球部ってそういうところありますよ。でも、アンタ、他の後輩にはもう少し優しくしてた」
「わかったよ、なんかやたらそこ気にしてっけど…オレ、そうだったっけ?」
「仲良かった」
「ああ、そう……。話しやすかったんじゃねえの。お前よりは」

ギリッと隆也の目がすさむ。

「ほらよ、具合悪いんだから、あんま興奮するなよ。謝るから。ホントはあんときから、ちょっとワリかったと思ってだんだよ」

その言葉で、隆也の表情が少し緩んだ。
それでもまだ、疑わしそうな色は残している。

「なにを、どう思ってたんですか」
「ああ? え? いや、どうって。なんだろう。……だから、お前にばっかきつくあたってんのは、自覚あったから、ワリーなーとは思ってたんだけど。ほら、お前の方も、オレを見ると睨んでくるから。特に最後のほうさ。オレ、お前のことどうしていいかわかんなくって。そういうときってやっば、話しやすいヤツの方にいくだろ。お前だって、オレのこと避けてたんだし。ただ…」

元希は一度、言いよどんだが、あらためて口を開いた。

「友達としてはうまくやれなかったけど、あのチームの中で一番好きだったのはお前だけどな」


自分の顔に熱が集まってくるのを隆也は感じた。
元希はまだ気づかない。

「お前の、あの試合に勝とうとする力は一番だった。オレ…そんなお前にこたえられないで、お前のことまともに見れないこともあったし。お前のこと、監督よりよっぽど怖いと思ってたよ。オレの力量見透かされそうで嫌だったんだ。だから、高校入っても練習、さすがにしんどいと思うときに限ってお前のこと思い出すんだよ。ここで、手え抜くかどうか、隆也が見てるみたいでさ。そんでいつも最後までやっちまうの」

*******
どうしよう。予想外に元希さんがしゃべってる。しゃべりすぎ?
とにかく出社してきます(毎日、毎日;)
▼追記

ろまんちっく 続き

自分の家の寝床というのは、どうしてこうも心地いいのだろう。

強がっていたものの、気を張っていただけのようだ。

自分の部屋で横になった途端に、身体中が重くなって少し痺れているような気がした。

「隆也、大丈夫か?」

横になるまで世話をしてくれた元希が、まだ心配そうな声をかけてくる。

「ん…大丈夫です」

(着替えまで手伝わなくてもいいと思うけど…)

母親が用意してくれた薄緑のパジャマを見たとき、なんだか気恥ずかしかったが、さらにそれを着るのに元希が手をだしてきたのには焦った。

だが、もともと強引なこの先輩は、もたつく隆也の動きを制してトレーナーと下着をはぎ取ってしまった。
そして、汗をかいてないか確認すると、スルリとパジャマの上を着せたのだ。

「ズボンは自分で着替えますから!」

隆也が抵抗できたのはここだけだった。


*******
会社行ってきます。
▼追記

ろまんちっく 続き

すみません、ここのところ仕事でゴタゴタしてました(汗)

********
「それにしても、すみません、うちの子が」
「いえ。偶然、居合わせてよかったです」

二人の会話の間、隆也は気まずそうに視線を泳がせていたが、母が自分の方を見たので、それに目を合わせた。

「タクシーで送ってもらったから、代金返したいんだ」
「ええ? そこまでお世話になっちゃったの?」
「だってオレ、金持ってかなかったんだもん」
「もう、すみません、元希くん。なにからなにまで」
「い、いえ。ただ一緒に帰ってきただけですって!」

恐縮した隆也母に頭をさげられると、居心地悪そうに元希はあわてる。
母は顔をあげた。

「せっかくここまで来てもらったんだし、お時間大丈夫なら、中にはいらない?」
「あ、じゃあ、ちょっとだけお邪魔します。あの、隆也、今、こんな感じですけどホント、具合悪そうだったんですよ。だから、早く横にさせてやりたいんです」
「えっ? オレ、もう大丈夫だって!」

声を出す隆也を気にせず、元希は母親の顔を見つめる。

「わかったわ」

母はそれに応じて、玄関に二人を入れると、隆也、元希の順に家の中へ入っていった。
▼追記
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