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ジリジリと肌を焦がす太陽が空でうなりをあげている。
兵達の間を悠々と歩いていくハルナ皇子の影は、肩に乗せた側室のぶんも地面に伸び、そしてその側室のまとった美しい衣装は風に揺れて川の流れのような影を作った。
兵達が見上げるその視線の先に、青空を背にしてまぶしく微笑む側室の姿。
ことにゆったりと歩く皇子の様子から、この側室を惜しげもなく兵達にみせているのがわかる。
いままでこんなにも、貴族の姫君を身近に感じたことはなかった。
荒涼とした砂の大地に咲いた、美しい姫君。
この日、常に戦場と隣り合わせの戦士達が目にした光景は、一縷の希望の香りがするものであった。
彼らはこの記憶を決して忘れなかった。
それからしばらくたって、この姫君が実は他国の少年兵だったとわかる日がきても。
蜂の巣を突いたような騒ぎが過ぎて落ち着いた後も、彼らは心の底で、この日の側室の美しかった姿をけなしたりはしなかった。
2014-2-15 16:06