お久しぶりです。前々から人気あるのは知ってた某作品(ドラマではない)を、うっかり覗いてドボンと沼にはまっていたりしていました…。向こうの公式はファンを喜ばせるのが上手いというか、ファンの人達も楽しそうで、おっさんずラブの荒れっぷりとは大違いすぎて居心地良すぎた…。しかしそちら関係に触れたことでふっとあることに気付き、おっさんずラブの脚本の特徴にも「なるほどそういうことか…!」と気付けたりもして、非常に大きい収穫でした。

18年版おっさんずラブで私が苦しんだ現象を図解にしてみました。何で私には多くの人達とは違うのか、自分でも図解にしてみてようやく分かりましたわ…。人によっては乗り物酔いのような症状を感じる方もいらっしゃるかもしれないので、あまり深く考えずにさらっとだけ知ってもらえたらと思います。

長年2次元ヲタで声優ファンでもありますし、図解の@→Aの部分ってボイスドラマを聴く時の状態に近いですね。ブックレットにイラストはあっても、ストーリー部分はマンガなど載ってるわけじゃなくて、基本的に視覚情報ゼロでセリフ(+BGM・効果音)だけを耳で聴いてる状態ですし。ドラマやアニメって映像で状況が視覚化されているので、視聴者が自分で判断してイメージする必要が無いんですよね。ボイスドラマをよく聴いてるとリスニング力が自然と鍛えられてる?俳優ファンの方はお芝居している姿を目で見るのが好きだと思うから(細かい部分のお芝居や表情とかもすごく見てらっしゃるコメントもよく見かけますね)、声だけで物語を聴くっていうのはあんまり無いでしょうか?18年版おっさんずラブは聴覚寄り・言語寄りの人には相性悪い作りですよ。『耳から入ってくる情報と目から入ってくる情報が食い違っているが、補足説明は無い』ので、「さっき聴いた話と違うよね?」ってなって耳で聴いて理解できるように作られていないんですよ。公式の設定読んだりしても、「なんか違うよなあ?」ってなったりで、他の作品とは言葉の表現が妙に違うんですよね。

この現象で分かりやすいのは3話、
@4月の歓迎会で使った居酒屋で待ってるお
A一般的な居酒屋の内装をイメージ
Bあの店どう見ても居酒屋って呼び方じゃねえだろ!?
…って所とか。@から『4月に歓迎会を居酒屋で行った』という過去の話と、『今夜居酒屋で待ってる』という未来の話の両方が分かるわけです。そしてその両方は同じ店です。それだけならまだ過去・未来どちらも実際にそういうシーンとしての映像は存在していませんので、情報だけを得ている状態です。ただし『居酒屋の視覚的具体例』としてわんだほうがあって、この回の最初の方ではわんだほうでお疲れ会をやっているシーンがあるんですよ。つまり『4月の歓迎会』という過去の話をこのシーンのような感じでイメージできるんですね。…どういう風に見てるかなんてこうやって具体的に説明するの初めてだけど、結構良くできてるなこれ。普通に映像も見ながらこういうのがパッと。
で、『居酒屋の視覚的具体例』としてわんだほうが示されているので、今夜待ってる居酒屋もわんだほう的な内装の店をイメージしてたら映像に映るのは全く印象が違う超オシャレな店内なんですよ。「えっ、これ居酒屋って呼ぶの!?レストランでしょ!?」って思ったらロケ場所の店名にはカフェって付いてるし…。やめてこのコンボ絶対狙ってるだろ…。田舎にあんなオシャレなカフェ無いよ…。もはや『カフェとは何か』という別の問題が始められるレベル。ここまで上手く嵌められると笑えてくるわ。ある意味とんでもない作り込みですね。
で、ここのシーンは言葉のイメージと映像が全く繋がらない。おじさん世代には『居酒屋』で一括りという世代間の言葉のギャップを表してるんだろうとは思うんだけど…。

人によっては全く理解できないだろう部分は1話、
「牧君は入社3年目で豊洲地区の再開発を手掛けた我が社のエースだ」
ってセリフですね。耳で聴いた印象そのまま文章にすると↓
「牧君は、入社3年目で、豊洲地区の再開発を手掛けた、我が社のエースだ」
と聴こえるんです。
『今入社3年目で、これまでに豊洲地区の再開発を』って意味ですから、全然難しいセリフじゃないんですよ。ところが公式サイトのキャラクター紹介って6話放送後に書き換わったものなんですけど、そこで初めて『入社4年目』ってワードが出てきたと記憶してます(Twitterまではチェックしきれてないので、あくまで公式サイトのキャラクター紹介ページでの話)。正確な文章までは覚えてないですが、それ以前のものには『入社3年目』ってワードがありましたからね。6話ラストで1年飛ぶからキャラクター紹介も1年後のものに更新された…と思いきや、年齢設定は1話開始時のまま。これを理解するのにとても苦労したのですが、要するに
「牧君は今入社4年目で、入社3年目の時に豊洲地区の再開発を手掛けた、我が社のエースだ」
って意味でOK?伝わるわけねえわあの言い方で。『入社3年目で、』って読点入って聴こえるから。二次小説読んでても私と同じ解釈してて入社3年目って書いちゃってる作品結構見かけましたし、うん、無理ですよねあのセリフ…。
「入社3年目で豊洲地区の再開発を手掛けた」までを一息で言ってくれるか、ストレートに
「牧君は入社4年目で、これまでに豊洲地区の再開発を手掛けた、我が社のエースだ」
で伝わりやすくなると思うんですけどね。同じ文章でも読点の位置や有無で意味が変わるケースもあるから、小説の読み書きをする方なら読点の重要さは分かるはず…。だからあのセリフは二次小説書いてる人達には意味を理解しづらい人もいたと思うし、そもそもドラマ見た人全てが公式サイトや関連本を見てるわけじゃないから、耳で聴いた印象そのまま受け取ってる人も多いでしょうね多分。おそらくわざとああいう喋り方をしてもらってるんだろうとは思うのですが、役者さんに「セリフもまともに喋れないのか」って悪評付くおそれもあるから、紛らわしいセリフって良くないと思いますけどね。
このドラマ何か変だなっていうのは3話では思ってたけど、6話後のその件で「まともなドラマじゃないな」とは思った。ちなみに例を挙げたら部長が続いたけど、部長はほとんど問題無いんですよ。部長に関する話は『見てれば分かるからわざわざ頭使わなくていい』ので。

要するにこういう、耳で聴いた情報をそのままイメージするとその後のシーンでは違う映像や設定が出てきて、かなり細かい部分も含めて複数ヶ所あるんですよ。1〜2ヶ所なら首傾げるだけで流すけど、そんな数じゃない。視覚情報もよく分からない部分ありますね。ちずちゃんが傘を広げるから雨が降ってるんだなっていうのははっきり分かるんだけど、本当に降ってるのかよく見えない。ネギ切ったり卵割ったりははっきり分かるんだけど、お餅と色が同化しちゃってほとんど見えない。この2ヶ所は視聴者に高い視力や視聴画質を要求してて、映像作品でこんなこと初めて経験したかな。ゲーム業界だったら高い環境必要なら先にゲーム機やパソコンのスペックとか要求してくるよ…。ちずちゃんの傘は本当に分からないんだけど、心理学的に何かを表してる…とか?

『役者さん達のお芝居と音楽はとても良かった』のは文句無いのですが、表現がとにかく分かりにくくて困って、TVドラマを見慣れてない人間からしたら、「役者さん達は何も気にしないのか?」ってことがまず不可解ですからね。『下手な脚本と不親切な作り』って感じたのに、脚本や監督への高い評価もある。自分の物の理解の仕方を次々に否定されつつ補足説明はしてくれないからどう理解したらいいのか分からないのに、世の中の多くの人達はあっさり理解してしまって、『シンプルで分かりやすい』っていう感想まで多くありましたね。私には複雑で分かりにくいものを世の中の多くの人達はあっさり理解してしまうという劣等感植え付けられて、追い付こうと頑張ったんだよ…。私が言うことはだいたい通じなくてぽかーんとされたりもするし。何で自分にはこんなことが起きるのかも分からなかったし、俳優ファンと声優ファンによる視覚と聴覚のバランスの違いが大きいだろうってことに気付くのさえ2年かかりましたからね。

ボイスドラマを聴き慣れてると図解の@→A部分が自然と鍛えられてたのか、私は『Bより先にAが見える』シーンも多かったから、おっさんずラブの作りには違和感持ちつつストレス溜まるんじゃないだろうか。私達視聴者の目に公開されてる情報はBです。Aっていうのは@の人が言ってることを言葉通りそのままイメージしたものです。それでAとBが一致せず、また、Bの状況を見たまま言葉で表現して@にならないんですね。Bを言葉で表現するとCになり、公式設定とは違うことを言う人がいるのは、程度の強弱はあるでしょうけどこんな状態だと思っていただけたらだいたい合っていそうな気がします。
耳から入ってきた情報からの予測→視覚情報のズレって、まさしく映像酔いの原因と言われている1つのようで…。ゲーマーだけど映像酔いしやすい体質なので、苦手なジャンルはちょっと見れば分かるから手を出さないんですけど、これはそういうカメラワークなんて全く無いから分からず深入りしちゃったんですよね…。二次創作のために設定やストーリーをちゃんと知っておきたいっていうのがそもそも考察始めたきっかけなので、余計にね…。二次創作やるつもりの無い作品ならこんなに深く考えないよ。

図解にしてようやく分かりましたけど、もしかしてAって無い方も多いものなのでしょうか…?私はAを経由してから公式の映像や設定としてBが出てくる順が多かったから、@とBがはっきり違うって分かったりしますけど、Bだけが見えている方にはあんまり気にならないのかな…?もしかしてAの瞬発力が高過ぎて1つ段階多くて(次の放送まで1週間ずつ間隔もありましたし)、それで情報量多くて複雑で分かりにくいんですかね…。弟が「絵や映像が無いとイメージしづらいから小説は苦手」って言ってたことがあって、そういった人はAとCは無い感じでしょうか?2話のケンカのシーンで部長の様子が『語彙力無くすオタクのようだ』と言われて好まれていたようですが、語彙力無くしてないオタクが見るおっさんずラブってこれほど複雑なものなんですよ…。だから細かいこと言っちゃうんですよ…。

それにしても何か私とは全く違う物の認識の仕方をしてる人達がいらっしゃるのは何でなんだろうとずっと悩んできましたが、ようやく原因に辿り着きました。うちだけ違うものが放送されていたんじゃないかと本気で思ったりもしたけど、まさしく『私とは明確に違う状態の映像』を見ていらっしゃった人達が多かったんですね。
Twitterにシーン画像上げる人達って『字幕を出している』状態が多いじゃないですか。B→Cって、その状況や行動を言葉で表現したものです。@のシーンとBのシーンには必ずタイムラグがあり、Bのシーンには字幕でBのセリフが表示されているわけですから、これは全く気付かないでしょうね。お婆さんに道案内するシーンでは蝶子さんが言う「お人好し」が表示されて、まさしく字幕通りなんですよね。「方向音痴」とは違うって気付きにくいでしょうし、他のいくつかの部分も同じく。『耳からの情報と目からの情報のズレ』に苦しんでいましたが、それがほとんど存在しなかったらしい人達がいたのか…。こういう仕掛けか…。
もちろんご自身や身近に耳の不自由な方がいらっしゃる場合には、字幕は大きなサポートになると思います。幸い私はそういった人は身近にはいないので、日本語のドラマに日本語字幕を出すという発想自体持ってなかったから完全に盲点でした。おっさんずラブに来る前は2.5次元見たりしてましたけど、舞台も字幕は無い世界ですし。Twitterの人達がよくする行為を利用して、私から見てこっち側の視聴者の初動を完全に抑え込んでいたようですね。『このドラマの特徴的な作りに気付きにくい人達の声』がまずTwitterで一気に広まるから(世界トレンド1位だそうで)、気付かない人と気付く人の分断が進められたわけか。『耳の不自由な人とも一緒に楽しめる優しい世界』が、耳や言葉での理解が強いタイプのファンを苦しめる世界を作ってて、それはお互い話も通じないわけだ。説明した上でやるなら興味深いとも思うけど無告知ですからね。知らされれば何も知らなかった人達も傷付けられることになるでしょうよ…。

そもそもこの作品、私もここがちゃんと理解できてなかった所ですが、『同性同士の恋愛物に馴染みがあるか』という点において視聴者の間にはものすごく差があると思います。元々異性愛者として生きてきた春田さんが同性の牧君を相手に踏み出すというのはとても大きな1歩で、こういった作品を見慣れていない人にとっても「こういう恋愛もあっていいよね」という大きな1歩に感じたかもしれません。ところが世の中にはいわゆる『腐女子』という、男性同士の恋愛作品を大変好む人種もいるもので…(私もそうです)。「こういう恋愛もあっていいよね」という第1段階は遥か昔にクリアしているため、物語の表層的な部分よりもっと深い部分に目が行くんでしょうね。
『元々異性愛者として生きてきた人が同性と恋愛・結婚する場合』の春田さん側。
『同性愛者が元々そうではなかった人と恋愛・結婚する場合』の牧君側。
という両サイドということ?何も説明無いから公式の言動って理解不能だったりクソみたいに理不尽だったりするけど、公式や役者さん達の言動だのファンの声だの全部遮断して『作品』としてドラマ全7話をよーーーく見ていくと(図解として分解していってみると)、これ明らかに牧君側やるよね?今頃気付いてビックリしたこととかもあるんだけど、長くなってきたのでまた別の日に…。

この記事だって3週間くらいかかってるかな…?話が通じなすぎておっさんずラブに出会って2年以上高ストレス状態が続いていて(前々からブログ読んでくださってる方なら、私が持ってるドラマラストの解釈がいかにヤバイものか…)、正直心身はだいぶしんどかった…。人気あるのは知ってた某ラップバトルをうっかり聴いて沼。声が良くて歌の上手い声優集めてるから耳が気持ちいい!頭が疲れない!酔わない!ファンの人達のコメントも考察がすごかったり、微妙なニュアンスの違いも的確に言葉で表現したり物の例え方が上手かったりで、ファンのコメント読んでるだけでメチャクチャ分かりやすいから楽しい。言葉が意味を見失う世界で苦しんで、言葉が力になるという真逆の世界観の作品に出会って、ちょっと元気出た。

15日と、遅くなりましたが8/14に拍手1件ありがとうございました!