「マークス。マクベスから聞いているぞ。裏切り者の城塞で赤ん坊を育ってているそうだな。」
「はい。父上。」
すぅすぅ寝息をたてるジークベルトを抱き抱えながらマークスは答えた。
「その子の親は探したのか?」
「探しました。ただ北の城塞に雇われていた使用人も警備員もジークベルトのことを知らないと。」
「マークス様のお子ではないのですか?てっきりマークス様がカムイ王女を孕ませたのだと。」
「根拠のないことを並べるなマクベス。」
その話が本当ならカムイが白夜王国に寝返ることにとくになっていないと心のなかで毒づいた。
「マークス」
「はい。」
「わしに赤ん坊を抱かせろ。」
へっ?顔に出そうになることを必死に抑えた。ガロンが拍子抜けのことを言うからだ。
「玉座まで赤ん坊を連れて行け。」
「では失礼します。」
父の近くに来るまでマークスは冷や汗をかいていた。ジークベルドは眠っていた。
三段に登るとガロンは立ち上がった。高齢であるもののまっすぐな背筋。国王としての威厳も残してある父王の雰囲気をマークスはひしひし感じていた。
「ジークベルドお祖父様だ」
そぅーとガロンの腕にジークベルドを渡した。
「赤ん坊の頃のパパにそっくりな顔していまちゅね。」
「!?」
「マークス。少し後ろに下がれ孫の顔に影がかかって見えぬ。はやく下がれ」
ガロンがジークベルドに赤ちゃん言葉を言ったことに驚ろいていると睨まれた。
今ガロンが「パパにそっくりでちゅね」と言ったよな。「パパ」って誰のこと?
続く。