お兄さんが暗夜へ行く 番外編

べったりとマークスの背中にカムイが張りついていた。

「カムイ重くなったな。」

「まだ軽いもん!」

ポカンとマークスの肩に小突いた。

「あらあらお兄様のおんぶしてもらっているのね。」

「カミラお姉ちゃんおんぶして。」

「うふふ。いいわよ。」

マークスから飛び降りるとカミラにもおんぶをさせてもらった。甘い香りが紫の髪からして落ち着いてくる。

「お姉ちゃんのおんぶ楽しい?」

「うん。お姉ちゃんハリがあっていい香りがして好き。どんな香水使ってるの?」

「カムイにおっしゃれに目覚めてくれたのね。お姉ちゃんが手取り足取り教えてあげるわ。香水は、フローラルでいいかしら」

「マークスお兄ちゃんにもかけていい。」

「女性用の香水を私にかけても顔つきまで柔らかくならないぞ。」

「えぇー。」

「カムイ様おやつの時間です。今日はプディングです。」

「ジュンいま行くよ。お兄ちゃん、お姉ちゃんもいこうよ。」


おやつを食べている間カムイがマークスに他愛のない話を聞いていた。

「マークスお兄ちゃん今朝ねなつかしい夢を見たんだ。北の城塞に暮らす前のことだよ。」

「どんな夢だった。」

「カミラお姉ちゃんとマークスお兄ちゃんと私でお日様の下でピクニックした夢だったよ。お兄ちゃん肩車して走り回っていたこと覚えてない。」

「カムイは、ご飯の時間になっても肩車飽きずにいたな。」

「でもお兄ちゃんどうして髪切っちゃったの?懐かしくなって久しぶり抱っこしてみたけど物足りなかったよ。」

まただ。カムイは、時々白夜にいた頃のことを夢として見ることがある。

「お兄様はね髪が邪魔になってきたのよ。癖毛がひどくてよくうねりやすくて大変だったから思い切り切ったのよ。」

「そういえば夢でお兄ちゃんの髪の硬かったかな。結構絡みついてたような」

「それでカムイは、私のまとわりついた髪をもがこうと暴れてその拍子に髪が千切れたぞ。」

「うっ。ごめん。」

「外へ出られたらまたピクニックに行こう。その時は、カムイの手作りを食べさせてほしい。」

「うん!お腹いっぱいになるくらい作ってあげる!」

ジュン(リョウマ)から見た暗夜の兄姉とカムイは、本当に兄妹のように見える。カムイの見た夢のことならジュン(リョウマ)も知っている。

「小さい頃俺がヒノカとカムイを連れて近くの山に行ったときだ」と声に出して言いたいけど飲み込んだ。

「ジュンおやつちょうだい。」

「あらあら食いしん坊ね。」

無邪気なカムイのおねだりに微笑むカミラ。



「ジュン」

「おわ!」

「ジュン驚かせるつもりなかったのに。」

後ろから声をかけられると不意討ちに似て驚く癖がリョウマにある。使用人に成り代わっても癖だけは、なくならないもの。

「聞いてもいい?ジュンにお願いがあるんだー。」

「それは、何でっておぃ後ろからまとわりつくじゃない。」

カムイがジュンの背中にべったりと張りついた。茶色の髪。背中まであるジュンのぬくもりに。安心感を得られた。

「ジュンの背中暖かくって落ち着く。それにお日様の匂いと同じくらい優しい感じがする。」

「カムイ様光栄です。」

「ねぇジュンこのままお散歩しよう。ギュンターに見つからないくらいに静かに歩いて。」

「かしこまりました。よーし出発!」

ジュンがゆっくり歩き。カムイは、ジュン(リョウマ)の髪に顔をこすりながら満喫した。


「それでカムイ様を夜中に連れて歩いていたのか。」

「すぅーすぅー。ジュン、マークスお兄ちゃんの馬を追い越しちゃえ。」

寝言を言いながらカムイは、眠っていた。

「夜更かししていませんセーフです。」

「何がセーフだ。カムイ様のお身体を冷す前にベットにおいれしろ。」

ベットに入れた身代わりのくまのぬいぐるみを抱き抱えたギュンターに睨まれカムイをベットに運んだ。

ジュン(リョウマ)が過去のカムイにおんぶがまた出来た。白夜のことをカムイが忘れても。白夜で過ごした感情だけは、残ってもいいとリョウマは、思った。








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お兄さんが暗夜へ行く3

「仕事が終わったら公国内で遊ぼうな」

ガロン王率いる暗夜軍が襲来がなけでば父が生きていた。カムイもガロンに連れ去られることもなかった。

「助けて!リョウマおにいちゃん!ヒノカお姉ちゃん!」

カムイの元へ行こうと立ち上がるも生き残った護衛がリョウマを抱き抱え阻止した。大人と子供では、力の方が大人の方が強い。カムイを助けたいのに。

「行ってはなりません!リョウマ様危険です!」

離してくれ!生臭い血の臭いがリョウマの鼻腔に刺激される。それがますますカムイを助けなければと焦るばっかり。

「!夢」

窓の外を見ると外は、暗い夜。もう何度も見る昔の夢。リョウマにとって忘れることがない過去。そんな彼は、何故なのか過去?に来ていた。幼い頃のカムイの使用人になっている。暗夜王国にも白夜の王族に似た顔をした人がいることには、リョウマ自身が驚いている。それよりもカムイは、自分の不幸だった出来事を簡単に忘れられるものだろうか。スメラギを殺したガロン王をカムイは、「お父様」と呼んでいるところを見ると違和感が拭えない。

「ふん!ふん!ふん!」

眠れないので木刀の素振りをした。

「マークスお兄ちゃんそこにいるの?」

ランプを持ってカムイがリョウマの元へ来た。リョウマの姿を確認すると少し驚いた顔になった。

「マークスお兄ちゃんがいたような気がしたのに。」

「カムイ様起こしてしまわれて申し訳ありません。すぐにやめます。」

「ジュン素振りをやめないで。もう少し私に見せて」

言われた通り素振りをする。カムイは、じーと見る。

「ジュンは、いつから剣術習うようになったの?」

「八歳です。」

「ジュンって良いところのお坊っちゃまだったっけ」

「父は、とある人に仕える強い剣士でした。よく時間を見つけては、俺に稽古してくれました。」

「うん。ジュンの素振りの音は、マークスお兄ちゃんよりも落ち着いているからよっほど鍛錬しただよね。」

「カムイ様見事な洞察力です。剣術の師匠今は、亡くなっていますが今でも俺の尊敬するお人でした。」

「会ってみたかったな。」

「カムイ様ならその人に会ったことあります。覚えていないのですか。」

カムイは、首を傾げた。

「知らないや。ねぇジュン私にも剣術教えてよ。」

「私と稽古して欲しいとは、光栄です。その代わり約束してほしいことが1つあります。」

「なぁに?」

「マークス様以外に訓練したことを周りに知らせないことです。マークス様が知ったら何を言われるか。」

「わかったよ。」

「では、カムイ様は、私の木刀を打ち込んでください。」

「はーいジュン先生。」

ジュン否リョウマの目の前に幼いカムイが木刀で打ち込み始めた。

幼いカムイと稽古を初めて出来たことにリョウマは、感動を覚えた。目に幼いカムイの姿を焼き付けようと思えた。

続く。







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お兄さんが暗夜へ行く2

朝がくるまえに雑用をこなすことが使用人の一日の始まり。ジョーカーは、うたた寝をしつつもカムイの朝食を作った。ギュンターは、訓練用の武器と防具を磨いた。新人使用人ジュンーに成り代わったリョウマも使用人の仕事をこなした。武士としていかなるときも万全なリョウマには、使用人の仕事は、さほど苦にもならかった。朝の時間になるとメイドの双子でカムイを起こした。

「朝ですよーカムイ様。」

うなりながらカムイが起きた。暗夜にいても起こされると機嫌が悪い顔になることは、変わっていなかった。

「まだ眠い。」

そして双子のメイドが氷の部族の冷気を出して眠気を飛ばした。使用人に成り代わったことでカムイの生活でわかったことと言えば、ガロン王から放任されている。その代わり暗夜の兄弟姉妹が北の城塞へ毎日のように来ては、優しくも厳しくもカムイを本当の家族のように過ごしている。

余暇の時間。休憩中にフェリシアがそわそわとリョウマを見つめた。リョウマが視線をフェリシアに向けるとさっと目をそらした。しばらくするとフェリシアがリョウマに近づいた。


「あのあのっ‥‥」

「なんだ?」


「あの記憶がなくなったのは本当なのですか?私が誰かわかりますか?」

「フェリシア」

「頭痛には、なってませんか?」

「いいや。健康だ。」

フェリシアが黙った。

「もし白夜の王子リョウマと同じかおをした人間が三人もいる。本物のリョウマが暗夜の使用人として入れ替わったらどうする。」

「見せしめ処刑になりますね。リョウマさんと言えば「白夜の虎」と呼ばれる程に強い侍ですし。」

「そうか。フェリシアこの間のことは、気にするな。使用人となる前のことはひとつも覚えてない、もう気にしていない。今ある時間で思い出になることを作ればいい。」

リョウマは、微笑み言う。フェリシアがほっとしたのか

「では、また一から使用人としての心構えをジュンさんにおしえていきますよー!最初は、カムイ様と王族の方に「様」づけをさせるところからです!」

握りこぶしを作りふんっと鼻をならした。

「そんなに様をつけなかったか。」

「そうですよ!ジュンさん王族の方々に様をつけ忘れてますー。ジュンさんに記憶喪失になるほどに大怪我を負わせたことには、私のせいです。王族の方に様をつけないで呼ぶことは、恐れがおおいですよ!」

フェリシアが人差し指をさしてジュンに指摘する。

本物の使用人のジュンは、フェリシアのドジで掃除中のジュンを見晴台に落としたらしい。

フェリシアの目の前にいるのは、時間の軸の違う白夜王子リョウマ。だけど誰一人も気づかない。本物の使用人のジュンは、現代のリョウマと顔がよく似ていたのかもしれない。もしジュンがフェリシアのドジで死なずにいたらどんな顔になっていたのだろうか。老けた自分の顔を見ることを想像したらリョウマは、複雑になった。




























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お兄さんが暗夜へ行く。

ここは何処だ??洋式のシャンデリアが目についた。少なくともここは星界でもない。

「ジュン気がついた。」

目の前に幼いカムイがリョウマを見下ろしている。

「カムイ!カムイなのか!俺が誰だかわかるか!」

「カムイ「様」とつけろ!」

カムイの後ろにギュンターが拳骨した。

「ジュン自分の名前言える?」

「リョウマだ。カムイ何故子供に戻っているのだここは?どこだ。」

「ここは、暗夜王国の北の城塞。あなたは、新しくきた使用人のジュンだよ。思い出せない。覚えてない高い所を掃除中で足を滑らせて落ちたんだよ。」

身に覚えがなさすぎる。ひとつわかったことがリョウマは、カムイの使用人になっていること。わからないのは、何故に暗夜王国の北の城塞にいるカムイの子供時代に来てしまったのか。

「すまない鏡あるか?」

カムイが鏡を差し出す。鏡に映ったのは、何時もの精悍なリョウマの顔。自慢の後ろ髪。違いがあるとすれば服装が洋風の使用人らしい服だけだ。

「カムイ様掃除が終わりました。」

ジョーカーらしい少年が入ってきた。

「ジュン生きていたのか?」

「ジョーカーも子供になってる。」

「ハァン?おいおいお前は、俺よりも年上だろうが。頭でも打ちすぎたか。なら今衝撃でも与えて元に戻してやるよ。」

ハンマーをジョーカーが取り出すとリョウマ目掛けて振り下ろそうとした。

「ジョーカーやめて!ジュン!自分の名前も忘れたの?」

「あぁ。今は、どうなっているのか。カムイが何故に暗夜王国にいるのかさっぱり」

「様をつけろ!馬鹿になったかジュン!カムイ様は、暗夜王国の王女様だから暗夜王国に住んでいるのは、当たり前だろが。いって!ジジイなにしやがる」

「やかましいぞ。ジュン今日は、カムイ様と話し相手になれ。後のことは、ジョーカーにさせよう」

「おいジジイ!腕を引っ張るなはーなーせー!」

ギュンターがジョーカーの手を引き部屋を出た。残ったのは、子供のカムイとリョウマだけ。

「カムイ俺が誰だか分かるか。」

「ジュンだよ。」

「カムイは、いつから暗夜王国にいる?」

「覚えてない。」

「お父さんとお母さんは、誰だか分かるか。」

「暗夜王ガロン。お母様は、分かんない。カミラお姉ちゃんのような綺麗な人かな。来週には、お姉ちゃん北の城塞に来てくれるよ。飛竜に乗ってジュンの頭を治してもらおうよ。」

「カムイ‥カムイ様お心遣いありがとうごさいます。ただ髪の方は直さないで大丈夫です。」

「本当?」

「はい。ジュンは、カムイ様と話しているうちに記憶が戻っております。」

「よかった。」

子供のカムイがリョウマに抱きついた。


続くかも。













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