話題:突発的文章・物語・詩
☆一品目『三蔵法師に会いに』
空き地に三蔵法師らしき人物がいると云う噂を聞きつけ、一目見ようと行ってみた。
着くと、確かに其処には何者かが
いるようだった。しかし、それは常に空き地の中を高速で移動しているらしく、まるで実体を掴む事が出来ない。辛うじて捉えられるのは、移動する半透明の影像のみであった。
そう。それは三蔵法師の偽者…
“ざんぞう法師”(残像法師)
だったのだ。
☆二品目『海のように泣く』
泣いている人がいた。
瞳からは涙の代わりに海洋生物が流れ落ちていた。
海のような泣き方をする人だ、私は思った。
その人は、それほど“さめざめ”と泣いていた。
☆三品目『まわり道』
有給休暇を利用して訪れた観光先でレンタカーを借り、気ままなドライブへと出た。
見知らぬ土地を車で行くのは楽しい。映る風景の全てが新鮮だ。
好天にも背中を押され、私は気の赴くまま車を走らせ続けた。
ところが、そんな上々な気分に水を差すように、道は途中で【通行止め】となっていた。
私の借りたレンタカーにカーナビの装備はない。道路地図もない。おまけに土地勘もない。さあ、困った。
かと言って、このまま進む訳にも行かない。回り道を探さなければ。
判りやすい国道を離れて見知らぬ一般道に入る事に不安はあったが、背に腹は変えられない。仕方なく私は目に着いた横道へと車を向けたのだった。
それがドツボの始まりだった。
まさか、その回り道を選んだ事により人生がガラリと変わろうとは、その時の私には知る由もなかったのだ。
かくして私は今、川に舟を浮かべている。そして、鵜を使って鮎などの魚を捕って暮らしている。
道を迂回するつもりが、気づいたら…
“鵜飼い”になっていたのだ。
川に架かる鉄橋の線路をJR の列車が通り過ぎて行く。
私はそれを見上げながら、こう呟く…
「これが本当の…“JR と鵜飼い”(JR 東海)だ」と。
〜おしまひ〜。