話題:懐メロ

思いも寄らない時に思いも寄らない事実がつ突きつけられる事がある。

先日、懐メロの番組を観ていると「林檎殺人事件」のPVが流れ始めた。郷ひろみ&樹木希林の異色ユニットによる1978年のヒット曲だ。懐かしい。(懐メロ特集なので懐かしくて当然と言えば当然ではある)。それにしても久しぶりに聴く。画面下部に流れる歌詞のテロップを何とはなしに目で追ってゆく。

♪殺人事件に林檎が落ちていた。

(ああ、そうそう)

♪がぶりとかじった歯形がついていた。

(こういう歌い出しだったな)

♪捜査一課の腕利きたちも

(いや、二人とも若い)

♪鑑識課員も頭をひねってた。

(……えっ?)

ハッ!それまでの懐かしさが瞬時に吹き飛ぶ。テロップの中に思わぬ言葉を見たからである。

どの部分か?

♪鑑識課員も頭をひねってた。

ここである。記憶の中の歌詞と違う。私が覚えていたのはこうだ。

『♪アインシュタインも頭をひねってた』

カンシキカイン→アインシュタイン

微妙である。似ていると言えば似ている。似ていないと言えば似ていない。冷静に考えればその前の部分で「♪捜査一課の腕利きたちも」と言っているのだから、その後に来るのは普通に考えれば鑑識とか監察医とか沢口靖子だろう。アインシュタインの出る幕はない。

恥ずかしい間違い。

が、言い訳をさせて貰えれば、郷ひろみさんの声がかなり鼻にかかっているので歌詞の細かい部分が聞き取りにくいし、すぐ横で変な格好をした樹木希林さんが踊っており、そちらに気を取られてしまうのだ。更にその後の歌詞の「パイプくわえて探偵登場」。これがまたいけない。パイプの探偵と言われれば、シャーロック・ホームズを想像してしまうからだ。ホームズが出るならアインシュタインが出ても良いだろう。つまり、「アインシュタインみたいな天才さえも悩ませる怪事件」だという阿久悠先生(作詞者)の主張なんである。

それをシャーロック・ホームズが現場を一目見ただけで「男と女の愛のもつれ」が原因だと看破する。それも根拠はまるでなく単なるヤマ勘で断言してしまうのだから、これはもうさすがは阿久悠大先生だとシャッポを脱ぐしかない。

……と自分の勝手な勘違いを阿久悠と郷ひろみと樹木希林(以上、敬略)のせいにする。

それにしても驚くべきは、「その勘違いが46年間も訂正される機会を持たなかった」という点だ。オリンピックに換算すれば11連覇となる。まったく恐ろしい話だ。少なくともこの46年間カラオケで一度も林檎殺人事件を歌った事がないという事実は証明された。もし歌っていればモニターで歌詞の間違いに気づいたハズだからだ。

何はともあれ間違いが正されたのは良かった。もっとも、正されたからと言って得する事は何も無いのだが。逆に間違って覚えていて損した事も無いのでそこは引き分けだろう。

ちなみに、この「林檎殺人事件」はドラマ「ムー一族(むーいちぞく)」の挿入歌で、このユニットでは「お化けのロック」に続く2曲目となっている。気になる方は調べてみては如何だろうか。


〜おしまひ〜。


更にちなみに、郷ひろみさんの曲の中で一番のお気に入りは「ハリウッド・スキャンダル」である。そして、間違いが訂正された今も「アインシュタインの方が良いのではないか」と心の中で秘かに思っている。