このお話はシノノメがカンナ♂♀の双子と対面するお話です。秘境にいた頃の捏造話があります。

星界と異なる世界秘境。そこは、カムイ率いる王国軍から産まれた赤ちゃんを戦乱から避けるために預ける所。星界は、時間の流れが速かったりゆっくりだったり異なっている。

その秘境でリョウマは、お腹を大きくした妻カムイの手を繋ぎながら歩いていた。

「シノノメに会えるのが楽しみです。シノノメ私のことを覚えてくれているのでしょか。」

「すぐに打ち解けるさ。カムイお腹大丈夫か。」

「えぇ。少し重たいけどリョウマさんが支えてくれるから百パーセント大丈夫です。」

「そうか。着いたらシノノメにも兄になるのだと言いにいくからな。なるだけ身体を無理するなよ。あと困ったときは、この笛を吹けサイゾウとカゲロウを呼べるようにした。」

「はいリョウマさん。あれ?」

カムイが見ている目線を向けば子供がこちらに向かって走ってきた。

「父さん。帰ってきてくれたのか。」

「久しぶりだなシノノメ。」

カムイ譲りの髪色に。リョウマに似た顔つきをした子供が出迎えてくれた。

「シノノメ大きくなりましたね。」

カムイがシノノメを抱きしめる。

「わわ。‥‥苦しい。というか誰だあんた?」

カムイがショックを受けた。第一声がそれだから。

「‥‥」

「おーぃ。あれ?おーぃ。」

立ったまま気絶したカムイの顔を手をかざすも反応が返ってこなかった。

世話係のいる屋敷にリョウマとカムイを入れると宴会を開いた。父リョウマからカムイがシノノメの産みの母親だと教えてくれた。シノノメからすれば母親と対面するのが初めてだった。カムイは、気品がある美しさと可愛さを兼ね備えた美貌の持ち主。その上に心優しい。すぐに打ち解けてカムイと遊んだ。野原で出掛けて花を見つけるとシノノメが摘んでカムイに渡した。

「母さん来てくれてありがとな。」

「母」と呼ぶだけでカムイは、喜んだ。

「あれ色違いの花もありますね。」

「白い花は母さんで。黄色の花はお腹にいる子供にだ。」

「シノノメありがとう。」

カムイがシノノメを抱きしめる。なんだか照れ臭い。

「なぁ母さんは父さんの妹なんだよな。」

「えぇ。夫婦になる前は。」

「まわりは兄と妹の結婚に反対はなかったのか。兄妹同士の結婚で産まれる子供がかわいそうだとか」

「ありませんね。リョウマさんが私が自信に白‥‥血縁がないことを教えてくれたのです。」

「そうなのか。」

「はい。問題もありません。うっ。」

「母さん?」

カムイがお腹を押さえながら屈みこんだ。シノノメは母の近くに来ると足に水がかかった。

「母さん!どうしたんだ。どうしよう?どうしたら?」

屋敷からもどるにも距離がある。カムイを運ぶにもシノノメには、運ぶこともできない。

「シノノメこの笛を‥‥ふいてください。」

言われた通りにシノノメは笛を腹のそこからピーと吹いた。

「カゲロウ推参いたした。」

「同じくサイゾウ。」

忍が二人現れた。何処からか担架を取り出すとカムイを乗せる。サイゾウは、シノノメを背中にオブさせしがみついてろと声をかけた。忍の速さは風のように早い。あっという間に屋敷につくとカムイに授産師にみせた。

「安定しました。」

「よかった。今カムイに会えるか」

「父さん俺もいってもいいか。」

「いいだろう。」

カムイの部屋に入るとカムイは、脂汗まみれでいた。

「リョウマ兄さん。シノノメ」

「カムイどこかいたいか。大丈夫か。」

「えぇ。シノノメが呼んでくれたから大事にいたりませんでした。」

リョウマがタオルでカムイの顔を拭く。

「シノノメありがとう笛を代わりに吹いてくれて」

「びっくりしたぜ。なぁ赤ちゃんできるとお腹が大きくなるのか?」

「うーん。最初からそうではないですよ。赤ちゃんは仲のいい夫婦の奥さんのもとへ来るものです。赤ちゃんができるまで時間をかけてお腹の中で育つものです。」

「じゃ先の水が出るのは?」

「もうすぐ産まれるサインです。でも今はまだお腹の中でそだつことになりますね。」

「まだ弟か妹に会えないのか。」

「まだまだです。」

少しがっかりした。シノノメは、弟か妹になる赤ちゃんが見たかった。

「おぃ。シノノメガッカリするな。」

「また母さん苦しくなるんだろう。だったら赤ちゃん産まれたら楽になるだろう。」

「まだお腹の中にいてほしいな。」

「どうして?また苦しくなるんだろう。」

「お腹の赤ちゃんにシノノメという兄がいることを教えたかったからです。」

「え?なんだそれ?お腹にいるあいだそんなことできるのか?」

「妊娠しているあいだ適度の運動も大事なことなのです。赤ちゃんに情緒教育になります。」

「胎教というものだ。カムイは、本当は安静するべきなのだがどうしてもシノノメに会いたくて来てくれたのだ。」

「へー。母さんお腹触っていいか?」

「どうぞ。」


膨らんだお腹を撫で回すと暖かい。この中にシノノメを兄にさせる弟か妹がいると思うとその子に会いたいと思ってしまう。

リョウマの意向でシノノメのいる秘境でカムイは双子を出産した。可愛い母親に似た男の子と女の子だ。

「シノノメ見てみろ弟と妹が同時に産まれたぞ。」

「しわくちゃだ。」

弟が紅葉の小さな手がシノノメの指を掴んだ。リョウマの髪をくいくいと妹が掴む。

「二人とも涙で顔がくちゃくちゃですよー。」

「カムイも無事に赤ん坊が産まれてくれた。これが嬉し涙を流さずにいられない。」

「そうだぜ母さん。これが感動して涙を流さずにいられないぜ。」

「白夜王族は涙もろいのですね。」

「へっ?王族?」

「俺の出身国だ。そこの白夜王国の人間は感情の起伏が激しいだ。むろん俺が仕えている王族も。」

「ひっく。ひっく。あら私もほっとしたら涙が」

カムイの援護もありシノノメからはぐらかすことに成功した。あとでカムイはリョウマから怒られそうだな。シノノメから白夜王族であることを悟られていけないと釘刺されているのに口を滑らせてしまったから。

暖かい春の日にシノノメは双子の兄となった。模範的な父と感情が珍しくシンクロした日となった。