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超短編小説:太陽と月

「君は月みたいだね」

俺は黒斑眼鏡で、髪が肩まで伸びている青年に言った。
アッシュといつも隣りにいる大親友。

「いきなりですね」

眼鏡をかけなおしながらアッシュが遊んでいる方向を見て言った。その時口許と瞳が優しく微笑んでいた。

アッシュと出会ってからまだ一週間の月日が経っていない。

俺は面倒臭いことは大嫌い。なのに毎日こいつらがいる公園に足を運ばせる。
鈍色の空が広がっていて白いぼたん雪がしんしん降っている。
道路は分厚い白い雪布団。
足は、ツンと冷たくなっていき最後には痛くなるのは分かっているのに。

何故わざわざ寒い外を歩いてこいつらのいる公園に行くのか分からない。

俺もアッシュの方向を向く。
アッシュは笑って他の子ども達と雪合戦していた。
アッシュの大親友はずっと微笑んで俺の答えを待っている。

でも時々寂しそうな暗い笑顔をする。


何故だか知らないけど。


俺は、この人を見た時何処かで会ったことがあると思った。だけど思い出そうとしても思い出さない。

日に日にどうでもよくなってきた。

「アッシュはほら太陽みたいに暑苦しいだから」

「ハハハハ暑苦しいんですか?クスッ。確かに暖かいですよね。アッシュは北大陸には珍しいタイプの子です。」

「っていうか北大陸人で雪合戦しようっていう奴なんていないでしょ。…って思ってたけど」

「アッシュの周りに不思議と集まってくるでしょう?」

白い息で眼鏡が曇っていく。
「だから太陽なんですよね。」

「…。」

まるで雪を溶かす笑顔のように。

北大陸では太陽があまり出ないから。
だから珍しいんだ。

「そういえば。」

「ん?なんですか?」

「あんたの名前なんだったけ?」

俺は今度はちゃんと顔を見る。



「ああ。【ジャシュ】ですよ。初めて名前を聞いてくれましたね」

「…ジャシュね」

「名前なんでしたっけ?」

「俺の言葉便乗しないでよ。」

「お互い様ですよ」

「…。そうだね。」


鈍色な分厚い雲を俺は見上げた。雪はいつの間にか止んでいた。


「トゥールシャだよ。」


子ども達が笑っている方向を俺はまた見る。





【太陽】は笑っていた。
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