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昆奈門と乱子がくっつくように話をしているのを鋭い視線が2つ、睨み付けていた。
1人は目の下に酷い隈を浮かべている、随分と老け顔な青年
1人は三白眼の為に目付きが悪く見えるが、優しさも伺える青年。
同じ緑色の忍装束を纏う2人が憎らしげに恨めしそうに昆奈門へと視線を注いでいた。
「文次郎、留三郎‥もう止めなよ、こういう事」
ガサリッと音がして2人の後ろから現れたのは、優しそうな、見方を変えれば頼りげのなさそうな同年代の青年だった。
ふわりと柔らかな茶髪を揺らし、伊作は困ったような表情で口を開く。
「学園中が公認してて、互いに好き同士の2人にあんな事して‥。
昆奈門さんは良い人だし、乱子ちゃんを大切にしてくれると思うんだけど」
明らかに昆奈門を敵視している2人へ、説得するように伊作は言葉を発した。
仲睦まじい昆奈門と乱子の邪魔を、これ以上して欲しくないのが彼の本音。
しかし、文次郎と留三郎の2人は伊作の言葉を聞いた途端
「「曲者に可愛い後輩を取られて堪るかっ!!」」
と声を合わせてそう言い放った。
いつもは犬猿と言われる2人が、こういう時ばかり息が合う。
そんな友人達に今回も駄目か、と伊作は諦めたように溜息をついた。
先輩達の刺さるような視線を感じながら、乱子は1人考えに耽っていた。
この学園内では文次郎や留三郎だけではなく、他の生徒や先生方からも色々な意味で注目の的にされている昆奈門と乱子。
本当の意味で2人っきりになったことはなく、誰彼からの視線が必ず向けられているのが現状だ。
思春期を迎え始めた乱子からすれば、短くても構わないから2人っきりの時間を過ごしたい。
しかし、着物で体の包帯は隠せても顔の殆どを覆う包帯までは隠すことが出来ない。
町や里で友人達と同じ様に他愛のない雑談をしながら歩いたり、一緒に買い物をしたり、茶屋で団子や饅頭を食べたり‥
そういったデートをしたいと思っても、昆奈門が顔を隠すのは不自然で一目を集めてしまうだろう。
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