暗い山林から降りて、飛蔵の家へ着いた一行。




すぐにでも考えをまとめる為に話し合いたいという昆奈門に、飛蔵は自宅の提供を申し出てくれた。


「本当に何から何まで申し訳ない」


深々と頭を下げる昆奈門に、飛蔵からは「とんでもねぇ」と声が返ってくる。


「俺らは俺らで出来る事をしているだけでさ。
何でも言って下せぇ、どんな事でも協力させてもらいやすよ」


どこまでも気さくに人の良い彼の言葉に、昆奈門は再度「かたじけない」と頭を下げる。


再び頭を上げた時には、既に領主としての表情に切り替わっており


それを目にした山本達に緊張が走る。


特に尊奈門はどの様な指示が下されるのか想像もつかず、余計に強張った顔になっていた。


「まずは人妖の件だが、今の所被害が無いようなので様子見とする」

「宜しいのですか?」

「先程も言ったが、お乱殿は信用に足る方と私は考えている。
お前達が信用出来んと言うのであれば、お乱殿の様子を窺っても良いが‥」


言葉を濁す昆奈門に、部下達からは苦笑が漏れる。


「何を言っておられるのですか。
昆奈門様が信用すると申されるのならば、我々はそれに従うまでです」


山本がキッパリと言葉にし、高坂と尊奈門もそれに続いて頷いてみせた。


それ程に部下から厚く信頼されているのだと実感出来、昆奈門からは満足げな笑みが零れる。


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