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甘い雰囲気で、乱子がそういうおねだりをする時は決まって邪魔が入る。


すっかり毎度のことになってしまっているが、こうも邪魔され続けてしまうと彼女の怒りも我慢ならないものだろう。


「昆奈門さんに当たって怪我でもしたらどうするんですかっ!!」


明らかに狙ったであろうそれらは、命中すれば怪我だけでは済まされない。


愛しい人へ攻撃すること自体も、彼女が怒る原因だ。


「私は乱子ちゃんが怪我する方が心配なんだけど」

「それでも私は昆奈門に怪我して欲しくはありません!」


彼の呟きにも乱子は必死に訴える。


忍組頭である昆奈門が、上級生とはいえ忍たま相手に傷を負うなど有り得ないことだ。


それでも愛しい人が怪我をすると思うと堪えられない。


怒りの矛先を茂みに向けるが、既に相手もとい先輩方は去った後なのか、気配を感じられず


余計に乱子の怒りは留まる一方だった。


そんな、己の事で真剣に怒ってくれる愛しい人の姿が可愛らしく感じてしまった昆奈門は、つい乱子の頭を撫でてしまう。


「もぅ、昆奈門さんたらっ!
今はこんな事してる場合じゃないでしょっ、先輩達に狙われたんですよ!」

「分かっているよ。でも、あれ位じゃ私を討ち取るなんて難しいんじゃないかな」

「それでも万が一という事もあります!
何かあってからじゃ遅いんですからねっ!!」


のんびりとした口調の昆奈門に、乱子は怒っているのか心配しているのか分からない声で怒鳴った。


必死の形相でそこまで言われてしまうと、昆奈門にとって最早狙われたことなどどうでも良くなってくる。


愛してやまない彼女にそこまで心配され、想われていると分かっただけでそれ以上のことは考えられなくなってしまう。


「ちゃんと聞いてますか!?」

「はいはい、ちゃんと聞いてるよ」






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