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人里離れた山中では買い物も出来ないし、何より学園内に居るのと大差無くなってしまう。


どんなに考えを巡らせても解決策が見当たらない乱子は、仕方なく昆奈門へそれを問い掛けることにした。


「2人っきりになれる場所、ねぇ」

「はい、この忍術学園の外で‥どこかありませんか?」


彼女の問い掛けに、昆奈門はうーん、と唸りながら虚空を見つめる。


「周囲の目を気にせずとなれば、出会い茶屋が妥当だと思うけど」


“出会い茶屋”


その単語を聞き、乱子の顔がボンッと赤くなった。




※出会い茶屋とは、江戸時代などに実在した男女密会の宿。


現代のHホテル、ラブホテルのこと。


派生によっては男娼が男客の相手をする陰間茶屋。


客の食事の世話と夜の相手もする飯盛り女がいた宿場女郎など、風俗営業を行う様々な店を引っくるめて出会い茶屋と称されていた。






以前、くのいちはそういう場所で女の色を利用して情報を得る事もある、と授業で習った。


その為、出会い茶屋がどういう目的で、何をする場所なのか知識では分かっているつもりでいた。


それでも異性の、それも昆奈門の口から聞けば嫌でも“その事”を意識してしまい、乱子の心臓は早鐘を打つ。


「なななに急に言い出すんですかっ!?」

「私の包帯だらけの顔じゃ、町を散策なんて出来ないだろうからね。
部屋の中なら人に見られることもないし、時間を気にする必要もないだろ?」


まるで天気の話でもするかのようにサラリと言ってのける昆奈門とは対照的に、乱子はパニックで口元を震わせる。


「た、確かにそうかもしれませんけど‥で、出会い茶屋なんてっ。
私達まだ付き合いだして1ヶ月くらいですし、‥キ、キスも…まだですし」


段々と声が小さくなり、恥ずかしさから俯いてしまう乱子。


それを見兼ねた昆奈門は、優しく言い聞かせるように言葉を向けた。


「何もその目的だけで言っている訳ではないよ。
他の人の目が気になるなら‥という意味で、部屋の中なら本当に心配はないんだし」


彼女の頭を撫で、落ち着いたのを見計らうと再び昆奈門は口を開く。


「‥勿論、私は乱子ちゃんが良いと言うまではそういう事はしない。
その代わり、デートでも口吸いでも、乱子ちゃんが望むことは出来うる限り応えるつもりでいるよ」


どこまでも深い深い彼の瞳が乱子を見つめる。




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